artscapeレビュー
上須元徳 展 “RE:Assemble”
2011年04月15日号
会期:2011/02/11~2011/02/13
YOD Gallery[大阪府]
上須元徳はこれまで一貫して、普段目にする町並みや建築など、撮影した風景の写真をもとにリアルに描いた作品を発表してきた。輪郭ではなく色面で構成されるその作品には、モチーフとなる複数の風景が部分的に組み合わされていたり、時間のズレを感じさせるものがまぎれていたりと、違和感を感じさせる特定のイメージが織り込まれ、現実に目にしている世界と人間それぞれの知覚、感覚の関係について考える作家の意図が比較的解りやすく示される場合が多かった。しかしモノトーンの作品ばかりが発表された今展の作品にはどれも、これまでの普遍的な風景のなかに描かれていた、例えば、固有名称が書かれた看板や自動車の車種など特定のイメージはない。無機質な大きなドーム型建築、ソテツの木、地面を被う落ち葉など、どれも物質的な普遍性や価値だけが画面に表わされている。違和感によって他者と自己の関係やアイデンティティについて考えるのではなく、普遍性からアイデンティティを探る新たな試みに見えた。今後どのように表現が展開するのか気になる。
2011/03/26(土)(酒井千穂)