artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

大畑公成 展

会期:2011/03/08~2011/03/13

ギャラリーモーニング[京都府]

ウィーン応用美術大学に留学していた大畑の帰国後初めての個展。光溢れる自然や動植物、人物などが描かれた絵画の、多様な色彩と透明感、それらの厚みは画面に時間的な奥行きも生み出していて、物語の続きへと想像を誘っていく趣きがある。今展では大小20点ほどの新作が発表されたが、個人的にはのびのびとした印象の軽やかな筆触のなかに遊び心が感じられた小さな作品が好きだった。今後の発表も楽しみにしている。

2011/03/13(日)(酒井千穂)

山田俊行 展──テンノカサナリ

会期:2011/03/08~2011/03/13

ギャラリーすずき[京都府]

タイトルのとおり無数の点が重なる絵画作品。一見、気分が悪くなりそうなほどの細かい点と色彩の集合は、よく見ているとリズミカルなパターンのように美しくも感じられて表情豊かだ。ただ、そんな視覚的な印象よりも、混沌のなかからいままさに図と地が形となって現われようとしている場のような空間的・時間的な広がりを想像させる画面と、そこに意識が誘い込まれていく感覚の体験が心地よく興味深い。

2011/03/13(日)(酒井千穂)

パウル・クレー展──おわらないアトリエ

会期:2011/03/12~2011/05/15

京都国立近代美術館[京都府]

ベルンのパウル・クレー・センターが所蔵する作品を中心に約170点で構成された本展には日本初公開の作品も数多く含まれている。ただ、今展はこれらの作品展示からクレー芸術の魅力を伝えるというものではなく、クレー自身が重視していた「制作プロセス」に焦点をあて、作品がどのようにしてつくられたのかを検証することをテーマにしている。作品を体験する観点をいかに多様化、多角化するのかを探るというそのコンセプトのもとにピックアップされた作品資料は、クレーのアトリエ写真に記録されているものや、自ら「特別クラス(Sonderklassse)」と名付けて手元に置いていた作品、そして制作上の具体的な技法を示すものなど。画面を切断したり反転したりして再構成された作例、「油彩転写」とその素描、絵画の表と裏の面を同時に見せる展示や小さなアトリエ空間の再現など、工夫された展示からは作家自身の物語も濃厚にうかがえる。クレー作品の色彩やタイトル、形態などについて興味がかき立てられると同時にその創作の源泉をたどるような楽しさもある内容で見応えのある展覧会だ。

2011/03/11(金)(酒井千穂)

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長沢芦雪──奇は新なり

会期:2011/03/12~2011/06/05

MIHO MUSEUM[滋賀県]

円山応挙(1733-1795)に学び、江戸時代後期に活躍した長沢芦雪の初期から晩年までの作品約110点を展示した大規模な展覧会。応挙の画風を踏襲したものから、徐々に奇抜で斬新な表現や技法を繰り広げていくそのバラエティ豊かな作品群の見応えもさることながら、なにより芦雪の尽きないチャレンジ精神、ものごとへの好奇心、弛まぬ創作意欲と遊び心が全体を通してあきれるほどに感じられるのが素晴らしい。代表作として知られる《虎図襖》(和歌山・無量寺蔵)、《白象黒牛図屏風》(エツコ&ジョウ・プライスコレクション)などをはじめとする動物のいきいきとした描写、ダイナミックな構図、そのインパクトとは裏腹の手の込んだ細やかさにも目を見張る。あまりにも多様な作風と自由奔放な雰囲気の表現から芦雪自身のパーソナリティにも興味が湧いてくる。会期中にぜひもう一度ゆっくり見たい。

2011/03/11(金)(酒井千穂)

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「ヨコハマトリエンナーレ2011」記者会見

会期:2011/03/11

外国特派員協会[東京都]

会見場へ行くため有楽町駅前を歩いていたとき、大地が揺れた。有楽町駅は老朽化した高架のため電車が落ちてきたら困るので、なるべく駅から離れようとするが、反対側の高層ビルからガラスの雨が降ってきても困るので、道の真ん中へんにいることに。久しぶりぶりだなあ身の危険を感じたのは。不謹慎ながら、こういうときってアドレナリンが噴出してパカッと覚醒し、生きてることを実感するんだよね。揺れが収まってビルの20階にある会見場に行こうとするが、エレベータが動かず、関係者とともにしばらく待機。この間に美術評論家の中原佑介死去の報が飛び交う。結局、記者発表は中止となり、資料をもらって六本木まで歩いて帰宅。家のなかは食器棚から皿やグラスが半分くらい飛び出して床に破片が散乱、自室は数千冊の雑誌やカタログ類が膝くらいの深さまで万遍なく床に降り積もってまるで本の海。本が液状化することを初めて知った。しかしこの時点ではまだこれほどの大災害になるとは思いも寄らなかった。ヨコトリのほうはといえば、海外のアーティストが参加を尻込みしているとか、8月開幕なのに冷房が使えそうにないから延期だとかいろいろウワサが飛び交ったが、いちおう予定どおりやるみたい。

2011/03/11(金)(村田真)