artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

仏教伝来の道──平山郁夫と文化財保護

会期:2011/01/18~2011/03/06

東京国立博物館[東京都]

第1部では、インド・パキスタンのマトゥラーやガンダーラから、アフガニスタンのバーミヤン、中国西域、敦煌、西安、そしてカンボジアのアンコールワットまで、平山が取材旅行で歩いた地の仏像や装飾品、壁画の断片などを自作とともに展示。これらの品々はおそらく彼自身が現地で買い集めたのだろう、大半が平山郁夫シルクロード美術館の所蔵になっている。文化財保護を謳いながら日本に持って帰って自分の美術館にコレクションするというのもどうなんだろう。それはおいといて、注目したいのはバーミヤン大石仏が破壊される前と破壊後の姿を描いた2点の対作品。まるで使用前・使用後の比較広告みたいだが、じつは破壊前の姿も2001年3月のタリバーンによる破壊後、春の院展に間に合わせるため急いで描いたものだというから、ジャーナリスティック精神の旺盛な日本画家だったことがうかがえる。第2部では、インドから中国に仏典をもたらした三蔵法師の道行きを描いた全37メートルにおよぶ《大唐西域壁画》を公開。これは平山が奈良・薬師寺のために20年以上を費やしたライフワークともいうべき大作で、お得意の荒涼とした土色のシルクロード風景や、青い空と白い雪の対比も鮮やかなヒラヤマならぬヒマラヤの山岳風景が並ぶ大胆な構成だ。いつも感じていたことだが、今回これを見て確信したのは、平山の絵は大きかろうが小さかろうが絵葉書にしか見えないということ。要するに陳腐なのだ。だから人気があるんだろうけど。

2011/03/02(木)(村田真)

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時松はるな「ライツ、カメラ、アクション!」

会期:2011/02/28~2011/03/12

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

おかっぱ頭と体操服の少女たちの群像を描く、時松はるなの新作展。前回に引き続き女子ならではの集団心理を巧みに描き出していたが、今回はこれまであまり見られなかった色彩を取り入れることに挑戦した。モノクロームの画面に淡い色合いがよく映えて美しい。控えめな色彩は、描かれた少女たちの喜びや楽しみを倍増させる一方、見えない暗部を逆照する装置としても機能していたようだ。前者を描き出すことは容易である。けれども、カラフルな装いによって、その下に隠れるドロドロとした嫉妬や羨望などをありありと浮き彫りにすることは、なかなか難しい。それをひょいと軽やかにやって見せるところに、時松の真骨頂がある。

2011/03/01(火)(福住廉)

永原トミヒロ展

会期:2011/02/21~2011/03/05

コバヤシ画廊企画室[東京都]

青白い街並みを描く永原トミヒロの新作展。人影が一切見られない夢幻的な光景は以前と変わらないが、今回発表された平面作品には以前にも増して「郊外」の雰囲気が強く立ち込めていた。田畑の向こうに立ち並ぶ建売住宅。現在の日本のどこでも見ることができる凡庸な風景だ。けれども、それらがひとたび青白い色合いを幾重にも塗り重ねたマチエールによって見せられると、たちまち現実的でありながら非現実的な世界に見えてくる。陽光なのか月光なのか、地面に降り注ぐ光の影が必ずしも一定の方向を向いているわけではないところが、そうした空想性をよりいっそう際立たせているのかもしれない。窓のない家屋が立ち並ぶ茫漠とした風景は、おのずと寂寥感をかきたて、死の世界を連想させるが、この物寂しくも空ろな感覚は、中央と地方を問わず、現在の都市生活の核心にあることを思えば、永原の絵画はたんなる空想画というより、むしろ現実の本質を増幅させたうえで見せるという点で、リアリズム絵画というべきだろう。

2011/03/01(火)(福住廉)

ヴィジェ・ルブラン展

会期:2011/03/01~2011/05/08

三菱一号館美術館[東京都]

ヴィジェ・ルブランといっても「だれそれ?」だが、フランス革命で首をチョン斬られたマリー・アントワネット妃に仕えた女性画家、といえばイメージが膨らむはず。歴史的にも、ロマンとしても、フェミニズムの視点からも興味深い素材だが、なぜか本国フランスでも展覧会は開かれたことがないという。それが日本で見られるのだから貴重な機会だ。でも順路に沿って見ていくと同時代の女性画家の作品ばかりで、なかなかルブランが出てこない。途中、マリー・レクジンスカという王妃が中国の風俗を描いた装飾画があったり、上野の西洋美術館が所蔵するマリー・ガブリエル・カペの美しい自画像に出会ったりして、あれ?だれの展覧会だっけ?と忘れたころにルブランが登場する仕掛け。結局ルブラン作品は83点中23点。なかでも注目はやはり、画家と同い年ということもあって気を許したといわれるマリー・アントワネットの肖像と、3点の自画像だ。当時、王妃の肖像はだれでも描けるものではなかったので、この肖像画がのちに何百回もコピーされ、アントワネットのイメージを決定づけたのだ。もっともこの肖像画もオリジナルではなく、自身によるレプリカらしいが。3点の自画像はそれぞれ36歳、39歳、45歳のときのもの。美貌で知られた画家だけにどれも美しいが、不思議なことにどれも20代にしか見えない。女性画家ならではのマジック!

2011/02/28(月)(村田真)

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橋本雅也 殻のない種から

会期:2011/02/05~2011/03/13

主水書房[大阪府]

鹿の骨を削ってつくられた花や植物のオブジェが、会場に点在していた。どれも驚くべき繊細さで、思わずため息がこぼれる。技術的にもハイレベルで、独学でマスターしたとは到底思えない。素材の鹿の骨は、以前は山で拾っていたが、今回は彼自身が狩猟に随伴し、制作のために1頭を仕留めたとのこと。解体と下処理も自分で行ない、その過程で残った肉や出汁は食事用にストックしているそうだ。今まではアクセサリーをつくっており、彫刻はこれが初制作。個展も今回が初めてだという。いやはや、凄い人が埋もれていたものだ。

2011/02/27(日)(小吹隆文)