artscapeレビュー
ヴィジェ・ルブラン展
2011年03月15日号
会期:2011/03/01~2011/05/08
三菱一号館美術館[東京都]
ヴィジェ・ルブランといっても「だれそれ?」だが、フランス革命で首をチョン斬られたマリー・アントワネット妃に仕えた女性画家、といえばイメージが膨らむはず。歴史的にも、ロマンとしても、フェミニズムの視点からも興味深い素材だが、なぜか本国フランスでも展覧会は開かれたことがないという。それが日本で見られるのだから貴重な機会だ。でも順路に沿って見ていくと同時代の女性画家の作品ばかりで、なかなかルブランが出てこない。途中、マリー・レクジンスカという王妃が中国の風俗を描いた装飾画があったり、上野の西洋美術館が所蔵するマリー・ガブリエル・カペの美しい自画像に出会ったりして、あれ?だれの展覧会だっけ?と忘れたころにルブランが登場する仕掛け。結局ルブラン作品は83点中23点。なかでも注目はやはり、画家と同い年ということもあって気を許したといわれるマリー・アントワネットの肖像と、3点の自画像だ。当時、王妃の肖像はだれでも描けるものではなかったので、この肖像画がのちに何百回もコピーされ、アントワネットのイメージを決定づけたのだ。もっともこの肖像画もオリジナルではなく、自身によるレプリカらしいが。3点の自画像はそれぞれ36歳、39歳、45歳のときのもの。美貌で知られた画家だけにどれも美しいが、不思議なことにどれも20代にしか見えない。女性画家ならではのマジック!
2011/02/28(月)(村田真)