artscapeレビュー

平成22年度(第14回)文化庁メディア芸術祭

2011年03月01日号

会期:2011/02/02~2011/02/13

国立新美術館[東京都]

デジタル技術が映像文化を著しく成長させている一方、私たちの感性は依然としてアナクロニズムにとどまっているのではないだろうか。映像は日進月歩で進歩するが、それを映す眼球が追いつけないといってもいい。テクノロジーの進歩によって身体感覚を思いのままに拡張させることが容易になった反面、かえって肉体の物質性が際立ち、その不自由なリアリティの求心力が強まるという逆説。現在の映像表現が直面しているのは、このパラドクスにほかならない。今回のメディア芸術祭でいえば、Google earthやインターネットの情報セキュリティを主題とした作品がおもしろくないわけでないが、どうも理屈が先行している印象が否めず、眼で楽しむことができない。むしろ、素直に楽しめるのはサカナクションのミュージック・ビデオ《アルクアラウンド》。関和亮監督によるワンカメラ・ワンカットで撮影された映像は、CGを一切用いることない愚直なアナクロニズムに徹しているが、楽曲の進行にあわせて移動する画面に歌詞を視覚化したタイポグラフィーが次々と現れる仕掛けがたいへん小気味よい。ある一点によってはじめて文字が成立して見えるという点では、ジョルジュ・ルースを動画に発展させた作品といえるかもしれない。

2011/02/07(月)(福住廉)

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