artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

徳田恭子 展

会期:2010/06/21~2010/06/26

ギャラリーなつか[東京都]

岡山の染色家の個展。でも染色家より「まちづくりおばちゃん」として有名で、ぼくもそっち方面の顔しか知らず、作品を見るのは初めて。ろうけつ染めという手法で、花を思わせる有機的抽象形態に染色しているのだが、赤や青など発色がじつにきれい。その布を丸めて並べた作品もあるけど、多くは額に入れて絵のように展示している。これじゃあ絵の後追いしているようで潔くない。タオルみたいにバーに引っかけておくとか、バナーのように垂らすとか、ろうけつ染めならではの見せ方を工夫してもいいと思う。

2010/06/22(火)(村田真)

暗がりのあかり──チェコ写真の現在展

会期:2010/06/19~2010/08/08

資生堂ギャラリー[東京都]

80年代以降のチェコで注目される10人の写真展。冷戦下の東欧から社会主義体制が崩壊する80~90年代は、時代を反映してモノクロームの暗い写真が多く、いかにもチェコ的(もちろん偏見)だが、21世紀に入ると西欧と変わらない明るく乾いた作品が増えていく。そうなると、先端を行く隣国ドイツの現代写真にいかに追いつき、いかに差異化を図るかが問題になってくる。たとえば、さまざまなシチュエーションでセルフポートレートを撮るディタ・ペペなどは、ありがちな写真として見過ごされてしまうが、双子を撮ったテレザ・ヴルチュコヴァは、ダイアン・アーバス的モチーフにロレッタ・ラックス的技巧を加えることで突出を試みる、といったように。

2010/06/22(火)(村田真)

「プラド美術館と模写作家たち──野田みち子氏」絵画展

会期:2010/06/15~2010/06/23

スペイン大使館展示室[東京都]

初めてスペイン大使館のなかに入った。最近改装されたのだろうか、地下は広々としたギャラリーになっている。展示されているのは、プラド美術館認定の模写画家、野田みち子によるエル・グレコを中心とする模写。はっきりいって、プラド美術館が認定したわりにデッサンがヘタ。エル・グレコの絵はもともとプロポーションが歪んでるのであまり違和感がないが、1点あったティツィアーノは「どこがティツィアーノ?」って感じ。しかしそんな技術的問題などものともせず、ひたすら模写に打ち込む情熱とエル・グレコへの愛情はひしひしと感じられた。

2010/06/22(火)(村田真)

渡辺信明 展「古墳マド」

会期:2010/06/15~2010/06/27

ギャラリーすずき[京都府]

自宅は全長200メートルの巨大な前方後円墳のすぐ近くなのだそうで、その存在が今展での発表作品にもつながっているようだ。時間の積み重ね、生命の猛々しさやたくましさを想起させる圧倒的な色彩のインパクトとさまざまな表情を一緒くたに見せる筆力に感動。絵画って素晴らしいと改めて感じる展覧会だった。

2010/06/20(日)(酒井千穂)

プレビュー:森村泰昌モリエンナーレ/まねぶ美術史

会期:2010/07/17~2010/09/05

高松市美術館[香川県]

20世紀の人物をテーマにした個展「なにものかへのレクイエム」が全国を巡回中の森村泰昌が、「瀬戸内国際芸術祭」で盛り上がっている(はずの)香川・高松で新たな個展を開催する。彼がデビューする以前に描いた秘蔵作品を紹介するもので、タイトルの一節「まねぶ」からもうかがえる通り、美術史上の巨匠を真似た作品が開陳されるのだ。作品は、高校生の頃に描いたカンディンスキー風の作品や、70年代のデューラー風、岡本太郎風の作品などレアものが中心。いわば一美術家の等身大の美術史であり、大々的に開催される国際美術展に対するささやかな抵抗と見ることもできるだろう。また、高松市美が所蔵する田中敦子作《電気服》にオマージュをささげた新作が披露されるのも見どころだ。

画像:《電気と熱を描く人(田中敦子と金山明のために)》2010年

2010/06/20(日)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00009747.json s 1215984