artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
英ゆう 個展「外を入れる」

会期:2010/05/25~2010/06/13
京都芸術センター大広間[京都府]
2007年から2009年のレジデンス期間中にバンコクで制作された作品。センター内の大広間に展示された。英がそこで日常的に見ていたモニュメントや大きな建物がモチーフになっているが、それらには、儀式の道具として使われる手のひらにおさまるほどの小さな花の輪がかけられている。大きさを逆転させたイメージの組み合わせがスケール感を狂わせて、画面に描かれているものが何なのか見ていると混乱するところが面白い。作品はバンコクの街の不思議な印象も重ねて表現しているのだそう。テーマもさることながら、個人的には大きな作品にもびっしりと描き込まれた模様のパターンやそのリズミカルな色彩が好きだ。これでもかと言うほどの迫力とインパクトながら見飽きない魅力を放っている。
2010/06/12(日)(酒井千穂)
塩賀史子 展「彼方の庭」

会期:2010/06/08~2010/06/20
neutron kyoto[京都府]
身近な森や植物など、日常的に訪れる場所や、日頃目にしている光景の一瞬をまるで写し取るかのように描きだす塩賀史子の個展。今年2月に東京で開催された同名の個展と同じコンセプトなのだが、今展で展示された作品はすべて新たに制作されたものだという。木々の隙間を通り抜ける木漏れ日のやわらかな表情と地面に揺れる影の濃淡、椿や蓮の葉に照りつける眩いほどの光など、その描写力にはやはり目が釘付けになってしまう。刻一刻と流れていく時間のなかで、絶えず流転し変化していく世界の果敢ない美しさを、空気や湿度の感触も含めてまるごととらえ、表現しようとする塩賀の制作の姿勢はまるで厳しい職人の修行のようにさえ思える。じっくり見ていると以前の作品の印象とも少し違うことに気がついた。ある風景の中の一場面というよりも、椿や蓮の葉などひとつの植物にクローズアップしたものが多かったせいだろうか。光の反射が強烈なありさまをじっと見ていたら、真夏の射すような暑さとジトッとした空気の匂いまで思い出した。
2010/06/12(土)(酒井千穂)
ピンホール・フォトフェスティバル2010 in 九州

会期:2010/06/01~2010/06/20
共星の里・黒川INN美術館[福岡県]
京都造形大学教授の鈴鹿芳康を中心に2007年に設立されたピンホール写真芸術学会。やや仰々しい名称だが、要するに写真の原点というべきピンホール(針穴)写真の愛好者が集まって、情報を交換しつつ楽しんでいこうという集まりである。その年一回の総会と展覧会を中心とする「ピンホール・フォトフェスティバル」が、廃校になった小学校の建物を利用してユニークな活動を展開している共星の里・黒川INN美術館(福岡県朝倉市、アート・ディレクターはアメリカから帰国した柳和暢)で開催された。
6月12日のシンポジウム「スローライフとピンホール写真」にパネラーとして参加したのだが、たしかにどんな明るい場所でも数秒から数10秒の露出時間がかかるピンホール写真は「スローライフ」ならぬ「スローフォト」の象徴といえるかもしれない。デジタル化の急速な進行の裏で、ピンホール写真芸術学会の会員もコンスタントに増えて、180名を超えたという。展覧会に出品された会員の作品も、風景あり、人物あり、静物ありとかなり幅広い被写体を扱っており、コラージュ的な画面構成を試みるなど、旺盛な実験意識が見られた。「日本一のホタルの里」という周囲の自然環境も、作品とぴったりシンクロしていたと思う。来年の「ピンホール・フォトフェスティバル」は横浜で開催される予定という。各地の地域密着型のアート・プログラムと連携していくことで、さらに大きな活動の広がりが期待できるのではないだろうか。
2010/06/12(土)(飯沢耕太郎)
白子勝之 個展 exhibition 1

会期:2010/06/04~2010/06/27
eN arts[京都府]
紙の上に鉛筆でグルグルと線を走らせたようなフォルムのオブジェが壁にかかっている。のびやかな曲線と、線が重なり合う部分の細やかな加工が美しい。部分的に塗られた漆も効果的だ。白子は美大で漆芸を専攻したが、敢えて漆を前面に出さない引きの美学の持ち主らしい。ほかには、五重塔の先端の「水煙」を思わせる造形や、写真作品が出品されていた。写真作品は自作の漆の小オブジェを野菜と合体させたもので、実物は敢えて展示していない。いずれも初個展とは思えないほど完成度が高く、今後の活躍に期待が持てる。
2010/06/12(土)(小吹隆文)
TKG Projects ♯1 桝本佳子

会期:2010/06/08~2010/06/23
TKGエディションズ京都[京都府]
装飾が本体を超えるほど肥大した壺や皿などの陶オブジェ(器?)で知られる桝本佳子が、久々に地元で個展を開催。新作では「圧縮」がテーマになっており、本来なら置物になるはずの馬や埴輪などが強引に壺の形に変形されていた。また、二つの壺がドッキングした新しいタイプの作品も。実用と装飾の関係を独自の視線で考察するユニークな作風に、ますます磨きがかかってきたようだ。
画像:《武人埴輪紋壷》2010, h.41x w.40xd.40 cm, ceramic
©Keiko Masumoto
Courtesy of Tomio Koyama Gallery
2010/06/12(土)(小吹隆文)


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