artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
MIHO GRANDAMA Arte della Luce

会期:2010/03/13~2010/06/06
MIHO MUSEUM[滋賀県]
MIHO MUSEUMの創立者・小山美秀子(1910-2003)の生誕百年を記念するコレクション展。開館以降蒐集された作品も含め、日本美術を中心にした収蔵品90点を展示。展示替えがあるのだが、4月25日まで展示されている狩野芳崖の《悲母観音像》をもとにしたタピストリー《MIHO悲母観音像》は圧巻の見応え。川島織物によって1994年に制作された綴れ錦なのだが、忠実かつ完璧に原画を写し取ったもので、4,500種以上の色が用いられているそうだ。繊細で微妙な光の表現が素晴らしい。また、2009年に開催された「若冲ワンダーランド」展でも公開されているのだが、4月27日から展示される伊藤若冲の《象と鯨図屏風》も今展の見どころになる作品。奇抜なイメージや各箇所の筆致の表情を見る楽しさもさることながら、象のコロコロした胴体や筆先のようなシッポがなんともくすぐったい可愛らしさでどうにも可笑しい。遠くなければ何度でも見に行きたい。
2010/03/11(日)(酒井千穂)
TASTING ART EXHIBITION

会期:2010/03/03~2010/03/14
阪急百貨店メンズ館[大阪府]
百貨店とアートが手を組む試みはバブル期にしばしば見られたが、不況の昨今はとんと御無沙汰である。そんな状況下で珍しく開催されたのが本展。男性向けのショップが並ぶ阪急百貨店メンズ館の地下1階から地上4階までの各フロアに、約60作家、約100点の作品が展示された。展示方法は平面作品をイーゼルにかける形式が多く、正直取ってつけた感は否定できない。もし今後も継続するなら展示方法には改善の必要がある。そんななか、まるで最初からそこにあったかのごとくマッチしていたのが越中正人と岡本啓だ。2人の展示に同種のイベントの可能性を感じた。傍から見ても交渉事が多く大変そうな企画だが、今後も継続されることを望む。
2010/03/09(火)(小吹隆文)
かなもりゆうこ展 物語─トショモノ

会期:2010/03/08~2010/03/27
ギャラリーほそかわ[大阪府]
親密な友人たちとの交流を撮影し、ドキュメントとフィクションの中間的な映像作品をつくってきたかなもりだが、新作はやや映画よりで、ストーリー性のある物語が綴られていた。映像は壁面と見開いた書籍に投影されており、作品中に登場する衣装や書籍が展示室に配置されている。また、作品の一部が本展会場で撮影されていることもあり、映像空間と現実空間の境界が曖昧なのだ。これまでの作品がドキュメントとリアルの境界を彷徨っていたとしたら、本作はスクリーンの向こう側と手前側の往還がテーマである。かなもりはまたひとつ新たな彼女独自の文法を獲得した。
2010/03/08(月)(小吹隆文)
この世界とのつながりかた

会期:2009/10/24~2010/03/07
ボーダレスアートミュージアムNOMA[滋賀県]
会期が長いとつい油断してしまう。気がつけば最終日で慌てた。2会場で、秋葉シスイ、奥村雄樹、川内倫子、仲澄子、橋口浩幸、松尾吉人、松本寛庸、森田浩彰の8名の作品を展示。とくに、戦時下の自らの思い出や我が子の成長を記した仲澄子の味わい深い絵日記作品、家族との暮しを撮影した大量の写真をスライドショーで展開していた川内倫子の作品に揺さぶられる。ふたりの生活を追体験するような感覚で胸がいっぱいに。外に雪がちらついていたせいも大きいと思うが、感傷的な気分もしばらく引き摺った。ただ、あとで考えてみると、その眼差しや体温をまるごと享受するようなそれらの作品はどちらも、むしろ淡々と現実や過去を見つめる冷静な視線という印象だった。女性の作品ならではの魅力なのかもしれないなあ。
2010/03/07(日)(酒井千穂)
TETSUSON2010

会期:2010/03/04~2010/03/07
BankARTスタジオNYK[東京都]
全国の美術系学生有志による合同卒業制作展。今年は国内25校のほか、韓国からも12校が参加し、国際化しつつある。というと聞こえがいいが、出品作品は絵画が少なく、建築、プロダクト、ファッションなど多様化し、なにか拡散しつつある印象も否めない。どうせならこのまま中国、インド、欧米と拡張し続ければ、また別の意義が生まれてくるかも。
2010/03/06(土)(村田真)


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