artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
森村泰昌「なにものかへのレクイエム──戦場の頂上の芸術」

会期:2010/03/11~2010/05/09
東京都写真美術館[東京都]
ひとつおもしろかったのは、舌を出すアインシュタインに扮した写真の横で見せていた“メイキング”ともいうべき映像。森村が舌をベロッと出し、そのまま数十秒間ポーズし続ける。おそらくアインシュタインはペロッと舌を出した瞬間を撮られてしまったのだろうが、その1枚の「決定的瞬間」を再現するため、長時間静止する森村を動画でとらえるというアイロニー。次第に引きつってくる顔に森村の素がのぞく。
2010/03/12(金)(村田真)
三嶽伊紗 微分する眼

会期:2010/03/06~2010/03/27
ギャラリーヤマグチクンストバウ[大阪府]
展示室の壁際に白いカーテンをかけ、向う側で灯る光がうっすらと透けて見える《カーテンの向こう/白いカーテン》、13年前に描いた絵画の表層を削り取り、同じ色で改めて塗り直した《アカイ絵》、雪の日に定点観測した映像を何層も重ねて投影しした《雪1》《雪2》などの作品を出品。いずれも、日々の生活で得られる微細な感興や、忘れていた記憶がうっすら甦って来る時の何とも言い難い感覚を造形化したらこうなるのか、という感じの作品。言語化される以前の感覚を捉える鋭敏な感覚はこの人ならではのものだ。
2010/03/12(金)(小吹隆文)
第2回コレド・ウィメンズアートスタイル

会期:2010/03/05~2010/03/14
日本橋コレド[東京都]
コレドの吹き抜け空間を中心に、7人の女性アーティストが作品を展示している。人通りの多い公共空間だけにあまり思いきった冒険はできず、大半は別の場所でつくった作品を運び込んだもの。ネズミやウサギなどの小動物をグロテスクなまでに巨大化させた篠原奈美子の彫刻や、階段とカーテンをレリーフ状に彫ったトリッキーなちばふみ枝の作品などは、力作ながら、その場所に置かれる必然性に乏しい。そんななかで秘かに毒を盛っていたのが、口紅に見せかけた薬莢(その逆?)や、花柄レースの鉄の彫刻などを出品した佐々木かなえだ。こうしたうわべと中身のギャップを慎ましやかに表現する作品群は、ファッションビルという場所でこそ効力を発揮する。
2010/03/11(水)(村田真)
東京画廊+BTAPカタログ・アーカイブ展
会期:2010/02/25~2010/03/13
東京画廊[東京都]
開設60年を迎えた東京画廊。杉浦康平デザインのカタログが壁にズラッと並び、机に写真が展示されている。岡本太郎、白髪一雄、高松次郎、関根伸夫らなつかしいカタログ、なつかしい顔ぶれ。机では画廊のおにーさんが資料整理している。
2010/03/11(水)(村田真)
展示の展示 豊嶋秀樹の仕事について

会期:2010/03/09~2010/03/20
OZC GALLERY+CAFE[大阪府]
クリエイティブ・ユニット「graf」の設立メンバーであり、現在は「gm project」として活動している豊嶋が、珍しく本人名義の個展を開催。会場に入ってみると彼自身の作品らしきものはなく、過去の奈良美智との協同作業などを記録した映像が流れるのみ。ほかは会場とゆかりのある作家の作品が少々展示されているぐらいだ。頭の中を「?」が駆け巡る。「これは大コケの展覧会ではないか」と。しかし会場をよーく見ると、至る所に付箋が貼ってある。そこには豊嶋によるメモ書きの数々が。これこそが本展のキモ。豊嶋が作品をつくるのではなく、彼の仕事のドキュメントをするのでもなく、会場と作家による交感の過程そのものが展覧会として提示されているのだ。非常に珍しいタイプの展覧会だが、場と人の関係を見せる新たな方法論と成りうるのではないか。
2010/03/11(木)(小吹隆文)


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