artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
てんとう虫プロジェクト「未来への素振り」展

会期:2010/03/05~2010/03/28
京都芸術センター[京都府]
京都芸術センターのボランティア・スタッフが中心となって企画を運営する「てんとう虫プロジェクト」。今回は出品作家の小山田徹と伊達伸明を迎え、何度もミーティングを重ねながら企画を練り上げたという。ギャラリー南には小山田が中心となってミニアートセンターを設置して連日ゲストを招いたトークショウを開催し、ギャラリー北では伊達がコーディネイトしながら「記憶」をテーマとしたインスタレーションを制作した。とくに印象深かったのが、後者。暗室の中をペンライトのわずかな明かりを頼りに進んでいくと、壁のいたるところに「蛍」や「星空」、「落書き」、「友」といったテーマに即した言葉が描かれており、見る者の脳裏に焼きついた原風景がいやおうなく喚起されたが、さらに所々に仕掛けられた針金細工の影が夢幻的な光景を効果的に演出していた。とりわけ大掛かりではないものの、必要最低限の装置によって「記憶」というテーマを最大限に引き出すことに成功していたと思う。
2010/03/26(金)(福住廉)
シュウゾウ・アヅチ・ガリバー EX-SIGN展

会期:2010/02/27~2010/04/11
滋賀県立近代美術館[滋賀県]
「ガリバー」こと、安土修三の大規模な回顧展。高校在学中に発表されたハプニング《草地》のイメージ・ドローイングからフーテンの名士としてマスコミをにぎわせた60年代末に製作された個人映画、自分の死後の肉体を80分割にして80人にそれぞれの部位を保管させる契約を結ぶ《Body Contract》、自分の体重と同じ重さのステンレススチールの球体《重量(人間ボール)》、そして「立つ」「座る」「寝る」というそれぞれの姿勢にあわせて密閉された箱のなかで240時間を過ごす《De-Story》など、ガリバーのこれまでの制作活動を一挙に振り返る構成になっている。一見して明らかなのは、現在のアートの傾向を先取りした先駆性はもちろん、みずからの肉体への並々ならぬ関心である。そこに一貫しているのは、おそらく「わたし」の根拠としての肉体を凝視するナルシスティックな視線というより、むしろ自分の肉体を物体として徹底的に客観視することによって逆説的に「わたし」を浮き彫りにする方法的な手続きである。本来、土に返るはずの肉体を焼却や腐敗から免れる反自然的な物体として保存させる《Body Contract》は、そのことによって「ガリバー」という「わたし」を自然の摂理から切り離すかたちで浮上させるが、その「わたし」はまるで時空を超越して価値を発揮する芸術作品のようだ。芸術作品を作り出すアーティストとしての「ガリバー」にとどまらず、「ガリバー」そのものを芸術作品としてしまう、きわめて野心的かつコンセプチュアルな作品である。
2010/03/26(金)(福住廉)
伊藤義彦「時のなか」

会期:2010/02/18~2010/03/31
フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]
伊藤義彦は1980年代から、緻密な観察に基づいた、思索的な作品を作り続けてきた写真家。フィルム一本分を撮影したコンタクトプリントの全体が、あるパターンとして見えてくるシリーズで知られていたが、2000年代から新たな試みを開始した。印画紙を手で引き裂き、その切断面を薄く削ぐようにして別な場面と繋いでいく。フォト・コラージュの手法のヴァリエーションではあるが、そのイメージがずれながら継ぎ合わされていく細やかな手触り感には独特の魅力がある。
今回の展覧会の中心となるのは「ハシビロコウと影」(2008年)のシリーズ。嘴の広いコウノトリの一種が、壁に影を落としてじっと立ちつくしている写真を繋ぎ合わせている。鳥がそこにいる、というだけの写真の集積には違いないのだが、そこにはどこか不吉だが懐かしくもある実在感が備わっている。それはまた、このような光景を以前どこかで(夢の中で?)見たことがあるという既視感を呼び起こすものでもある。このような実在と夢想との間に宙吊りになるような感覚こそ、伊藤がこのフォト・コラージュの手法を使って定着しようと試みているものだろう。展覧会にあわせて刊行されたリーフレット(「P.G.I Letter 226」)にこんなことを書いている。
「時間と空間の切り目の無い世界のなかで、様々なものを観察しながら過ごしている。変わってゆくものと変わらないもの。変わりつつあるけれど気がつかないこと。このようなことを思っていると、空想が頭の中で増殖する。[中略]このような空想や幻想、妄想を抱え、想像しながら創作の入口を探すことにしている」。
創作者の探求の筋道とは、まさにこのようなことなのだろう。この文章を読んでから作品を見直すと、それが伊藤の観察と空想との見事な結合体であることにあらためて気づかされた。
2010/03/26(金)(飯沢耕太郎)
シティセンターのアーティストと建築家

会期:2009/09~2010/04
Bellagio Gallery Of Fine Art[ラスベガス]
しかしラスベガスの建築はコピーばかりではない。最近お目見えしたのが、コンドミニアムや商業施設の入った巨大なシティセンターだ。外見はフランク・ゲーリー、内部はダニエル・リベスキンドみたいなショッピングモール、2棟のビルが寄り添うように傾いてるヘルムート・ヤーン設計のヴィーアタワーなど、イミテーションではないけれどキワモノには違いない建築が建ち並んでいる。そのシティセンターの建築と、内外に配されたアートワークを紹介する展覧会。アートワークはおなじみのオルデンバーグから、ジェニー・ホルツァー、トニー・クラッグ、アントニー・ゴームリー、そして約30年前に弱冠21歳でベトナム戦没者記念碑のコンペを勝ちとったマヤ・リンまで、ドローイングやマケットを並べている。翌日、実物を見に行ったが、金のかけ方が半端ではない。やはりアメリカはすごい。
2010/03/26(金)(村田真)
マダム・タッソー
会期:2010/03/23~2010/04/04
[ラスベガス]
いきなりラスベガスです。この街にはピラミッドも中世のお城もエッフェル塔もニューヨークの摩天楼もある。もちろん縮小コピーだけど、これがホテルとして機能しているのだから驚く。コピーは建物だけではない。マダム・タッソーの蝋人形館では人間のコピーも100体ほどある。ロンドンのマダム・タッソーと異なるのは、こちらはアメリカの芸能人かスポーツマンばかりということ。つまりノーテンキということですな。
2010/03/25(木)(村田真)


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