artscapeレビュー

ロバート・プラット“TALES FROM THE LIMEN”

2010年03月01日号

会期:2010/02/05~2010/02/28

eN arts[京都府]

ロバート・プラットは森と狩人を軸に、自然と文明の対比や、見つめる側と見つめられる側の関係などを織り込んだ絵画作品を発表している。まるで織物のような細かなテクスチャーが特徴で、そのなかにデジタル画像のバグを思わせるスペクトルのような色帯も混入されている。近年は壁面にヨーロッパ中世の古書から引用した挿絵の一部を描くようになり、作品の構造が一層複雑化しているようだ。私はまだ彼の作品をつかめたとは言い難い状態なのだが、その多面性はやはり魅力的で、何とか自分流の解釈を見つけたいと思っていた。ところが、彼は留学先の京都市立芸大で無事博士号を取得できたため、春には英国に戻るという。じっくり付き合いたい作家だったのでとても残念。帰国しても機会を作って、日本での発表を続けてほしいものだ。

2010/02/05(金)(小吹隆文)

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