artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
あいちトリエンナーレ2010プレイベント「放課後のはらっぱ──櫃田伸也とその教え子たち」

会期:2009/08/28~2009/10/25
愛知県立美術館[愛知県]
会期:2009/08/22~2009/10/18
名古屋市美術館[愛知県]
来年開催される「あいちトリエンナーレ2010」プレイベントの展覧会。画家の櫃田伸也の画業と、現在国内外で活躍するその教え子19名のアーティストの作品を紹介している。奈良美智、杉戸洋をはじめ、加藤美佳や村瀬恭子、額田宣彦、渡辺豪など、各作家の若い時代の作品が多く展示された会場は、その数自体も見応えのあるボリュームだが、なによりも親しみやすいというか、学生ならではのトンガリ具合や制作の苦悩も垣間見えるような、若さという魅力にも溢れて清々しく、疲れることなく楽しめる展示だった。また、この人もあの人も教え子なのか、と今展で知ることができたのも収穫。きっと素敵な先生なんだろうなと想像すると、自分の恩師の顔も浮かんできた。その後に訪れた名古屋市美術館は櫃田作品のみの展示。ここで愛知県立美術館で見た各アーティストが描いた「櫃田先生」の肖像があれこれ思い出されるのがまた良い。先生と学生の関係をそれぞれの会場で想像する楽しさがある展覧会で、貴重なものを見せてもらった気分。
http://aichitriennale.jp/hitsuda/
2009/10/04(日)(酒井千穂)
スカイアクアリウムIII

会期:2009/07/17~2009/10/4
東京シティビュー[東京都]
カットされた巨大なダイアモンドみたいなガラスの水槽に入れられ、次々と照明の色が変化していくクリスタル金魚(クリキン)。これでは魚もおちおち寝ていられない。時々水槽のなかにケータイみたいなものが入っていて、温度でも調節する機器類かと思ったら、ドコモの防水ケータイの宣伝だった。おいおいスポンサーだからってそんなもん水槽のなかに入れるなよお。迷惑顔のお魚さんであった。
2009/10/04(日)(村田真)
Calling 木藤純子 展

会期:2009/09/19~2009/10/18
木藤純子の個展。半年以上の期間をかけて現地へ通い滞在制作した作品を発表。白熱電球がぼんやりと灯る薄暗い展示室では、展示台の片隅でふわりと木の葉が舞い上がるインスタレーションや、円柱の中に入ると葉が舞い散る光景のような光の残像が浮かび上がる大型の作品、エントランスホールにはグラスの底に青空が見える小さな作品が隠れていた。まずどこに作品があるのか探さなければならないのだが、その存在だけでなく、密やかな変化があちこちにちりばめられた会場は、雑木林で鳥の鳴き声に耳をすましたり、生きものの気配を感じるときのような、気づく喜びをもたらすものだった。晩には特別にミュージアムのシンボルであるタワーに森の映像が投影され、敷地内の「まゆの家」で地域の伝統的な月見のしつらいとともに作品が展示された。グイっと気持ちを持っていかれたのは、訪れた人々が仲秋の名月を楽しむ「まゆの家」の庭の隅に月見草が植えられていたこと。鑑賞者それぞれがいろいろな風景を見つける観月会、今展のどれよりも彼女らしい作品に思えた。見に行けてよかった。
2009/10/03(土)(酒井千穂)
神戸ビエンナーレ招待作家展:LINK──しなやかな逸脱

会期:2009/10/03~2009/11/23
兵庫県立美術館[兵庫県]
神戸ビエンナーレの会場のひとつ、兵庫県立美術館。神戸や関西という独特の芸術環境に注目し、アートを巡るさまざまなつながりを見つめるというテーマで藤本由紀夫、國府理、笠木絵津子、島袋道浩、植松琢磨、山村幸則など、12名の招待作家の展覧会を開催。絵画、彫刻、インスタレーション、写真と、出展作家の世代も作品も幅広いが、展示数も多く思った以上に規模が大きい。特に見応えあるのは、児玉靖枝の《深韻》の連作、岸本吉弘の作品などが展示された絵画の空間。ぜひもう一度見に行きたい。
2009/10/02(金)(酒井千穂)
神戸ビエンナーレ2009
会期:2009/10/03~2009/11/23
メリケンパークなど神戸市内各所[兵庫県]
今回で2回目の「神戸ビエンナーレ」。メリケンパークでは輸送用コンテナを展示空間にしたコンペ受賞作品を展示。数あるそのなかでも、牛島光太郎のインスタレーション《window》は面白かった。コンテナの内部は、狭い路地にある“よその家”の玄関前の雰囲気。設置された玄関の扉、窓の向こうに灯る照明を背にして薄暗い通路で、タペストリーに刺繍された4つの長いストーリーを読むのだが、できればそっと足早に立ち去りたいイメージの空間では、どうにもそわそわする気分を禁じ得ない。しかし、この居心地の悪さがかえって作品の魅力だ。不思議なストーリー(でも面白い)とともにインパクトを引きずる。今回のビエンナーレはまた「海上アート展」がユニーク。メリケンパークと兵庫県立美術館のあるHAT神戸を結び運行する船に乗ると、航路の途中の防波堤や突堤に設置された塚脇淳、榎忠、植松圭二らの立体作品を船内から鑑賞できる。船の窓越しに突如現われるような作品に興奮するのだが、近づいたと思えば徐々に遠ざかっていくのがもどかしい。作品自体はゆっくり鑑賞というわけにはいかないのだが、しかし海辺の街や山の風景、風の感触などを同時に楽しめるのも神戸ならでは。あいにく雨だったのでできればもう一度乗りたい。
2009/10/02(金)(酒井千穂)


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