artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

「音キキの会」音メグリ・ワークショップ

会期:2009/08/29

京都芸術センター[京都府]

ピアニストであり、音環境アドバイザー小松正史氏のナビゲートによってセンター内のさまざまな音を拾い集め、音の地図(サウンドマップ)をつくるというワークショップ。少年少女科学クラブの展覧会の関連イベントとして開催された。グループごとに行動し、同じ場所でそれぞれが描いたサウンドマップを披露。音と空間の緊密な関係や、他人との感覚の違い、それを理解することの楽しさなど、さまざまな発見と遊びに溢れた時間だった。対象は小学生以上ということだったが、行ってみたら参加していたのが大人ばかりだったのがちょっと残念。

2009/08/29(土)(酒井千穂)

理科室の音楽、音楽室の理科 TUNE/LABORATORIUM

会期:2009/08/04~2009/08/30

京都芸術センター[京都府]

小学校・中学校の理科授業で学ぶ原理を取り入れ、光・音・電気などを発生させるインスタレーション作品を制作している少年少女科学クラブの展覧会。南北のギャラリーだけでなく、廊下や談話室となっている教室空間など、元小学校という会場の各所に、作品が展示されているのが面白い。不思議な音を発したり、発光する作品は、空想を楽しんだ懐かしい時代の感覚や、不思議な実験器具やホルマリン漬けの瓶が並ぶ理科室のワクワクする記憶を、鮮やかに蘇らせるタイムマシーンのようで心が躍る。

2009/08/29(土)(酒井千穂)

真夏の夢

会期:2009/08/16~2009/08/30

椿山荘[東京都]

東京随一の結婚式場として知られる「椿山荘」を舞台とした展覧会。館内の宴会場や屋外の庭園などに46人のアーティストによる作品が展示された。ホテルや商業施設、学校などで催される展覧会の多くがそうであるように、その場の空間の調和を乱すことのない、じつに穏当な作品が多く、心惹かれる作品はほとんど見受けられなかった。また展示されていない作品もあるなど、不満が残った。唯一、小笹彰子によるコインロッカーをモチーフとした映像作品だけは、宴会場の片隅にある収納庫で発表することによって、コインロッカーの暗闇と閉塞感を効果的に引き出していたように思う。

2009/08/28(金)(福住廉)

もうひとつの小沢剛 展

会期:2009/07/21~2009/08/29

Ota Fine Arts[東京都]

美術家・小沢剛の回顧展。「地蔵建立」シリーズや「なすび画廊」など、おもに90年代の制作活動を振り返る展示だった。詳細に記録された年表が貼り出されていたように、90年代を歴史化する作業が待望される。

2009/08/28(金)(福住廉)

写楽 幻の肉筆画

会期:2009/07/04~2009/09/06

江戸東京博物館[東京都]

ギリシア人のグレゴリオ・マノスによるコレクションを紹介する展覧会。近年発見された写楽による肉筆扇面画をはじめ、浮世絵や絵画などおよそ120点あまりが展示された。狩野派による仏画、山水画、花鳥画はもとより、美人画や役者絵などを丁寧に見ていくと、江戸時代の熟成した町人文化のありように改めて感服せざるをえない。とりわけ、歌川国貞による大判錦絵《戻橋綱逢変化》(1804-18)は、北野天満宮の屋根の上で鬼と武将が対峙するシーンを描いたものだが、画面全体に流れる漆黒のうねりが、あたかも鬼のおどろおどろしい魔力を表わしているかのようで、抜群の迫力をもたらしている。これほどの絵を見てしまうと、マンガだろうとアートだろうと、「描写」という面では、もはや江戸時代に到達点を迎えてしまったのではないかと思わずにはいられない。

2009/08/28(金)(福住廉)

artscapeレビュー /relation/e_00005249.json s 1209274