artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

宮永亮「ウォンジナ」

会期:2009/07/18~2009/08/29

児玉画廊[京都府]

今年と昨年に京都市立芸術大学の制作展に出品された作品《ウォンジナ》(2009年)と《Rainy Letter》(2008年)が展示された。機材や環境が学内展示より大幅に向上しているためか、作品のグレードがワンランク上がった気がする。特に、水面や空、太陽、絵具のしたたりなどの映像を天地左右反転させたりスピードを変えながら巧みに組み合わせ、オリジナルの音楽が付けられた《ウォンジナ》は、黙示録的な荘厳さすら感じられる秀作だ。それにしても、もっと早くに見ておくべきだった。自分の腰の重さに大いに反省。

2009/08/18(火)(小吹隆文)

前衛のみやぎ─昭和期芸術の変革に挑んだ表現者たち─

会期:2009/06/20~2009/08/16

宮城県美術館[宮城県]

戦後の宮城県にゆかりのある「前衛」の作家を振り返る展覧会。吉野辰海、升沢金平、針生鎮郎、菅野聖子、新国誠一など、15人による作品およそ150点が展示された。シュルレアリスムからダダ、抽象美術、象徴詩、身体パフォーマンスなど、前衛の現われ方がさまざまな形式に及んでいることが一望できる展示になっている。なかでも圧倒的だったのが、ダダカンこと糸井貫二。50年代の版画から貼絵、パフォーマンスを記録した写真など、これまで発表されることのなかったものも含めて、30点あまりが一挙に公開された。コーデュロイ生地の上にバッジやらアップリケやら花札やらを縫い合わせた《ダダカンベスト》は、いかにもキッチュな見た目とは裏腹に、山伏の衣裳のような凄みを感じさせる。息子とともに制作した貼絵は、色とりどりのビニールテープを切り貼りして魚などを描いた単純な作品だが、よく見てみると、一本のテープで一切のたるみもなく滑らかな曲線を描くなど、思いのほか丁寧に仕上げられている。これらの作品は、今後のダダカン研究にとって貴重な礎となるにちがいない。惜しむらくは、これほど密度の濃い展示でありながら、図録が作成されていないこと。「宮城の前衛史」を読める日を心して待ちたい。

2009/08/15(土)(福住廉)

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津田直 果てのレラ

会期:2009/07/11~2009/08/16

一宮市三岸節子記念美術館[愛知県]

北海道の礼文島と沖縄の波照間島を取材した新作「果てのレラ」を中心に、「七曜」「彼方の星」「盥(たらい)星図」などを組み合わせて構成された。日本の最北端と最南端を結ぶことで自身の座標軸を確認しようとする彼の態度は、近代以前の宇宙観をテーマにした「七曜」や、線香で穴をあけた和紙で星空を表現した「彼方の星」と「盥星図」と共鳴し、思索する写真ともいうべき津田独特の作品世界を濃厚に形作っていた。コンパクトながら過不足なくまとめられており、見終わった後に残る清涼な余韻も心地よい。

2009/08/15(土)(小吹隆文)

五味彬 写真展

会期:2009/08/04~2009/08/22

ときの忘れもの[東京都]

もうだいぶ前の話なので忘れている人も多いと思うが、1991年に五味彬の写真集『Yellows』が、マガジンハウスから刊行直前に裁断・廃棄されるという事件があった。五味は1989年頃から「世紀末の日本人の体型がどうだったのかという記録として」、若い女性モデルのヌードを撮影してきた。『Brutus』誌などにも掲載されたそのシリーズを出版しようとしたところ、いわゆる「ヘア」が写っているということで、上層部の判断で出版中止に追い込まれたのだ。「へア・ヌード解禁」直前の混乱ぶりがよくあらわれているエピソードといえるだろう。
昨年、その幻の『Yellows』のプリントをコラージュして、屏風仕立てで展示したのに続いて、今回は『月刊PLAYBOY』の掲載作品、写真集『nude of J』(朝日出版社、1991)のためのポラロイド作品などを中心に出品している(着衣の作品もあり)。写真を見てまず感じる「懐かしさ」は、ヌードというジャンルの「記録」性をよく示している。モデルの体型や髪型、さらにたとえば眉毛や体毛の処理にあらわれている微妙な違和感、さらに彼女たちを取り巻いている空気感としかいいようのないものの違いが、1990年前後(もう20年も前だ!)という時代のイコンとなっているのだ。当時この作品を見た時に感じた生々しさがきれいに削ぎ落とされ、西欧社会とは異質の慎ましやかさ、きめ細かさを持つ「日本人(Yellows)の裸」というもっと抽象的な概念が浮かび上がってきているのが興味深かった。

2009/08/14(金)(飯沢耕太郎)

浜田涼展「Note」

会期:2009/08/10~2009/08/22

藍画廊[東京都]

大きなボケ写真と小さなボケ写真。略して大ボケ小ボケ。ぼくは小ボケのほうが好きだ。

2009/08/13(木)(村田真)