artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

コレクションの誕生、成長、変容

会期:2009/07/04~2009/08/16

東京藝術大学美術館[東京都]

藝大のコレクションは明治22年の開校に先立って始められたという。その収集活動の変遷をたどる展示。最近収蔵された藤田嗣治の在学中の作品も初公開されている。おもしろいのは昔の油絵の額縁。100年以上も変えてないんじゃないかみたいなボロボロの額縁や時代遅れの額縁もあって、それだけで藝大の歴史を感じさせたりもする。

2009/08/13(木)(村田真)

彫刻──労働と不意打ち

会期:2009/08/08~2009/08/23

東京藝術大学美術館陳列館[東京都]

奇妙なタイトルの彫刻展だが、「労働」とは彫り刻み肉づけする徒労にも似た作業のことで、そんな日々の労働のなかで一瞬ひらめく天啓のようなものが「不意打ち」だ。つまり持続的な「労働」と瞬間的な「不意打ち」が彫刻を生み出す源、ということらしい。してみると、芸術活動とふつうの労働との違いは、「不意打ち」が来るか来ないかの違いになる。なるほどそうだったのか。それはいいとして、作品は、マニエリスティックな技巧に走りがちな藝大勢もいいが、バロックともいうべき西尾康之が異彩を放つ。

2009/08/13(木)(村田真)

他人の顔

会期:2009/08/12~2009/08/18

ラピュタ阿佐ヶ谷[東京都]

1966年制作の勅使河原宏監督作品。「武満徹の映画音楽」というイベントで上映されたように、音楽は武満徹、原作・脚本が安部公房、美術に磯崎新と山崎正夫。しかも平幹二郎演じる精神科医の病院内には、三木富雄の「耳」が設置されている。顔面に大火傷を負った男が他人の顔の「仮面」を手に入れることで妻の愛を取り戻そうとする物語に一貫しているのは、身体のパーツにたいする偏執的な視線。アイデンティティと結びついた顔はもちろん、水槽に沈められる手首の模造、岸田今日子のつりあがった口角、京マチコのなまめかしい脚、右顔を隠した入江美樹の左顔、そして仲代達矢の恐ろしいほど澄んだ黒い眼! こうした分析的な視線が次第にエスカレートしていき、虚飾や建前、化粧といった「表面」を切り裂き、その下に隠されているどろどろした「内面」をゆっくりとえぐりだしていくサディスティックなプロセスこそ、この映画の醍醐味である。

2009/08/13(木)(福住廉)

CINDY SHERMAN at COMME des GARCONS AOYAMA

会期:2009/07/08

COMME des GARCONS AOYAMA[東京都]

コム・デ・ギャルソン青山店の店内に、いまシンディ・シャーマンの巨大な写真作品が展示されている。例によって奇怪なセルフ・ポートレイトだが、何よりも店内の空間を占有するほどの大きさに圧倒される。いつまで展示しているかは定かではないけれど、同店店内には東恩納裕一の蛍光灯によるシャンデリアも常設されているので、一見の価値あり。

2009/08/13(木)(福住廉)

元田久治

会期:2009/07/31~2009/08/30

Hpgrp GALLERY 東京[東京都]

荒廃した都市風景を版画で描き出す元田久治の個展。これまではモノクロームによって内側から朽ち果てる都市の病理を効果的に表現していたが、今回は単色カラーを大々的に導入した。モノクロによる迫真性を放棄した代わりに、ウォーホルのポスターのようなデザイン性を獲得したようだが、結果としてアニメチックに見えてしまっていた。それが狙いなのかどうかはわかりかねるが、別のステージを切り開きたいことだけは伝わってきた。

2009/08/13(木)(福住廉)