artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
Art Project Studies

会期:2009/06/27~2009/07/11
プロジェクトスペースKANDADA[東京都]
東京藝術大学の中村政人研究室の学生たちによるアートプロジェクトをテーマとした展覧会。全国各地で活動するアートプロジェクトの中心人物へのインタビュー映像や一覧表などを発表した。全体的に展覧会というより研究発表会という印象は拭えないものの、おもしろいのはその研究の方法。どれほど深くアートプロジェクトに参入したとしても、ほとんどの研究者は「研究者」という立場を最後の最後まで死守しがちだが、彼らは「アーティスト」「サポートスタッフ」「来場者」という立場から、それぞれアートプロジェクトにアプローチした。「研究者」という不自然な身分を無理して装うのではなく、あくまでも自分の関心をもとにアートプロジェクトの一側面を垣間見ようとする、良い意味でも悪い意味でも、素人性が、結果的にアートプロジェクトの多面性を浮き彫りにすることに貢献したようだ。ここで収集した豊富な資料をもとに、ぜひ客観的な研究に発展させてほしい。
2009/07/09(木)(福住廉)
松原健「果実の肖像」

会期:2009/06/20~2009/07/18
MA2 Gallery[東京都]
松原健は広告やファッション写真の仕事をしながら、緻密で端正な静物写真の作品を発表してきた。今回のMA2 Galleryでの個展では、これまでの彼のイメージを一新するような、意欲的なシリーズにチャレンジしている。
1Fに展示されているのは、ベトナムで撮影された10~18歳くらいの少年・少女の「脚」のシリーズ51点。脚は膝から下のあたりで断ち切られ、古く、崩れ落ちそうな石やコンクリートの壁を背景にして、あたかも天使が浮遊するように空中に浮かんで見える、そのか細いけれども、ゴツゴツとした勁さを備えた素足のたたずまいが、何ともなつかしい。かつて僕らの少年時代によく見た脚の形なのだが、いまの日本だとなかなかお目にかかれないだろう。
2Fには、ガラス瓶に貼り付けられたポートレートが並んでいる。モデルは1Fの「脚」のシリーズと同じ子どもたちである。目を閉じたその顔は仏像のようであり、見方によっては死者のようにも見えなくない。瓶の中にはホーチミン市のマーケットで手に入れたという古いスナップ写真(1960年代)が入れられている。写真は、やはりマーケットで束になって売っていた封筒や手紙とともに、壁にもピンナップされている。その皺になったり、色褪せたりした印画紙や封筒や便箋の眺めは、記憶を揺さぶり、想像力を押し広げる作用を及ぼす。当然ながらその連想の先には、あの苛烈なベトナム戦争の記憶があるのだろう。声高にその悲劇を告発しているわけではないが、今と過去とを繋ぎ、記憶の風化を押しとどめようとする意志を感じとることができる、いい展示だった。
2009/07/08(水)(飯沢耕太郎)
ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開

会期:2009/05/23~2009/07/20
原美術館[東京都]
美術評論家・松井みどりによるマイクロポップの第二弾。会場を水戸芸術館から原美術館に移し、参加作家も何人かを入れ換えた。海外への巡回を想定しているせいか、全体的に平面作品が多く、空間を作りこむインスタレーションはほとんど見受けられなかった。その平面作品もタブローではなくドローイングが中心で、それらの大半は内向的な世界を大切に維持する傾向にあり、まるでその場だけ時間が止まっているかのように錯覚したほどだ。外向的な暴走によってよどんだ現状を鮮やかに突破しているChim↑Pomですら、この時間を欠いた「温室」のなかでは空回りしているように見えた。この無時間性をもってして次の時代を牽引するという矛盾に満ちたラディカリズムを徹底するのであれば、まだわかる。だが、そのようなアイロニカルな未来像を描けないほど、同展の展示はただ延々と自転を繰り返すばかりで、ついにその「温室」への入り方がわからないまま、会場をあとにした。
2009/07/07(火)(福住廉)
川端朗子 展 Mixed colors

会期:2009/07/06~2009/07/18
信濃橋画廊 apron[大阪府]
絵具の塊を紙の上に何重にも盛り、紙を傾けるなどして垂らした川端朗子の絵画作品。こうした制作法は決して新奇ではないし、同様の作品を過去に見た記憶もある。なのに彼女の作品が鮮烈な印象を残すのは何故だろう。色遣いの上手さや余白の生かし方といった技術面もあるのだろうが、その外連味のなさが見る者の心を打つというのが案外正解かもしれない。アール・ブリュットの優品に初めて出合った時と同種の感動を受けた。
2009/07/06(月)(小吹隆文)
描かれた不思議な世界──ミヒャエル・ゾーヴァ展

会期:2009.06.18~2009.07.12
美術館えきKYOTO[京都府]
映画『アメリ』で一躍有名になった挿絵画家ミヒャエル・ゾーヴァの個展。絵本『ちいさなちいさな王様』『エスターハージー王子の冒険』といった代表作から最新作まで130点の原画を展示。4年前に開催された個展で展示されていた作品も多かったのだが、インタビュー映像によると、納得がいかないと完成した原画の上から何度も塗り直してしまうことがあり、いまとなっては原型をとどめていない原画も多いらしい。作品やタイトルから作家のひととなりや生き様を連想するのも楽しいが、逆もまたしかり。その毒っ気と鋭いユーモアは何層にも塗られた色に比例していくつも隠されているような気もした。
2009/07/04(土)(酒井千穂)


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