artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ル・コルビュジエと国立西洋美術館

会期:2009/06/04~2009/08/30

国立西洋美術館[東京都]

開館50年を記念する小企画展。本館設計者ル・コルビュジエのスケッチや図面、写真、マケットなどで本館建築の秘密と西美の歴史をたどる。興味深いのは、コルビュジエはこの美術館が手狭になったら、四角い展示室の外側に一周二周と展示室を設けていって、どんどん拡大していく「無限成長美術館」というコンセプトをもっていたこと。これは敷地の問題で実現できなかったが、できていたら画期的な美術館になっていたと思う。コレクションの増加にともなうスペース不足は、どの美術館にとっても宿命的な課題なのだから。

2009/06/26(金)(村田真)

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ネオテニー・ジャパン

会期:2009/05/20~2009/07/15

上野の森美術館[東京都]

精神科医の高橋龍太郎氏のコレクション。奈良、村上をはじめ、会田誠、山口晃、加藤美佳、名和晃平……と、だいたいどこかで見たことあるような、ということは、ここ10年あまりの現代美術をダイジェストしたような作品が並ぶ。その意味では新しい発見はないけど、どの作品はどの画廊で買ったかとか、いくらで買って現在はいくらするとか、邪推の楽しみはある。ともあれ、日本の現代美術はこういう奇特な方に支えられているのだ。

2009/06/26(金)(村田真)

吉野辰海 展

会期:2009/06/15~2009/06/27

Gallery58[東京都]

美術家・吉野辰海の個展。近年はブロンズなどの硬質な素材によって捩れた犬などを表現していたが、今回の作品で作風が一転した。「SCREW」と名づけられた新作は、犬の頭部にはちがいないものの、正面はむしろ象の頭部で、両者が融合した特異な形態になっている。巨大な頭部を支えているのは少女のような華奢な裸体だが、これもわき腹や性器を見ると、少女というよりむしろ老婆のような印象すら覚える。そして何よりもこれまでの吉野の作品に見られなかった特徴が、けばけばしいほどの色彩だ。象=犬の頭部はピンクや青に塗られ、大きく開けられた犬の口は真っ赤に彩られている。円熟期を迎えてのポップへの転向宣言というべきか、あるいはモードこそちがえど、そもそも最初からポップだったというべきか。次回の展開が待ち遠しい。

2009/06/25(木)(福住廉)

風能奈々展「誰がその物語を知る」「草上の想像」

会期:2009/06/19~2009/07/25

小山登美夫ギャラリー京都、TKGエディションズ京都[京都府]

今年3月の「VOCA」展に出品した大作など16点からなる「誰がその物語を知る」と、20センチ角の小品108点の「草上の想像」。これだけの量の作品をわずか半年間で、しかも質を落とすことなく描き切ったことに恐れ入る。作品の世界は多分に彼女の内面(記憶や夢想)を反映したものだが、それだけに完成度が少しでも下がれば陳腐な独り遊びに堕してしまう。一貫してテンションを保ち続けたその精神力こそ、まずは称賛されるべきであろう。聞いたところによると、それこそ昼夜分かたず描き続けたので彼女自身も夢か現か判然とせぬ夢遊病的状態になったそうだが、そこまで自分を追い込んだことが作品のリアリティーにつながっているのかもしれない。

2009/06/24(水)(小吹隆文)

福島菜菜「庄太郎⇔鼻行類 と浮遊生物」

会期:2009/06/23~2009/07/05

neutron[京都府]

福島は、一貫して、読み込んだ夏目漱石の短編集「夢十夜」の1話ずつを個展のテーマにしている。ただ、「夢十夜」のストーリーそのままというのではなく、彼女の場合は、その中から言葉をピックアップして想像を拡げたり、物語からインスパイアされたイメージを展開したり、作品はもはや漱石の物語からは遠く離れたオリジナルの表現となって生まれ変わっている。今展では、不思議な生きもの「鼻行類」をモチーフにしたドローイングの展示が中心。前回見たときにも感じたが、ひとつの言葉を自分なりに解釈しようとする作家の相当熱心な姿勢がうかがえる。今展の作品自体は可愛らしいものが多い印象だったが、やはりその迫力はすごかった。

2009/06/24(水)(酒井千穂)