artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

ラム・カツィール展─抹茶ノ中ノ嵐─

会期:2009/07/10~2009/07/26

京都芸術センター[京都府]

展示室の床には8枚の畳が敷かれ、傍らにドウダンツツジが生けられている。壁面にはスクリーンがあり、映像が投影されている。映像は茶席の風景から始まる(展示室のインスタレーションは茶室の写し)。静けさ漂うその世界を切り裂くように庭園を新幹線が横切ると、画面は一転して高速の車窓風景へ。田園地帯を走りぬけた新幹線は大都会東京に到着する。見慣れた高層ビル群も、外国人の目を通して映像化されるとどこか仮想空間のようだ。映像は徐々に速度と音量を増し、混雑した通勤電車の車窓風景が幾つもコラージュされた状態でピークを迎え、再び冒頭の茶席へとループする。カツィールは、日本人に流れる二つの時間(伝統とモダン)をテーマにしたようだ。それ自体は外国人から見た現代日本の典型で新味は感じられなかったが、音と光と速度が高密度化していくクライマックスはそれなりに見応えがあった。

2009/07/12(日)(小吹隆文)

片野まん展 “The modern a.k.a. god”

会期:2009/07/11~2009/08/09

MORI YU GALLERY KYOTO[京都府]

無数のモチーフが散りばめられ、混沌としたパワーが渦巻く絵画作品。個々のモチーフは線画で描かれており、画面がブロック状に分割されている。これらは漫画からの影響だろうか。そう言えば画中に頻出する文字も多分に漫画っぽい。ともかく密度が濃い上に点数も多いとあって、作品を「見る」というよりは「浴びる」感覚に近い。いつの間にか作品の世界にずっぽりはまって、ゆるゆると漂流している自分に気が付いた。

2009/07/12(日)(小吹隆文)

半熟目玉『どうくつ』

会期:2009.07.11~2009.07.12

立体ギャラリー射手座[京都府]

川崎歩による演出、振付けのダンス上演。いでたちも動きもまったく異なるふたりの男が出口のない洞窟で空腹になってしまうという表現。小銭が詰まった靴下を両手に持つ男が、交互にチャリン、チャリンと床を打ちながら登場する最初の場面からインパクト大。ダンスには馴染みがないので、二人の動作から、物語やそれらが象徴するものを連想するのは難しい気がしていたが、小銭が途中でばらまかれて靴下がからっぽになってしまったり、ふたりのまったく異なる「空腹」の動作を見ていると、蠕動する胃腸と洞窟のイメージが同時に浮かんできて、いつのまにか「空腹」と「洞窟」が頭の中でリンクしていた。普段は絵画や立体、映像作品などが発表されているギャラリー空間だが、こんな夏休みの特別企画(?)もまた新鮮。8月30日(日)にも第二回目の公演が予定されている。記憶の回廊を踊りながら辿り、映像的に記憶の再生を試みるという『回廊』。振付け、演出、出演は川崎歩。ぜひまた見たい。

2009/07/11(土)(酒井千穂)

山添潤 展

会期:2009.06.30~2009.07.12

アートスペース虹[京都府]

作家のコメントには「石を彫ることで生まれるある気配を求めている」と記されていたが、以前見た作品にも今回の新作にも、その静かな迫力は充分に表われていた。大きな石の塊には素材に向き合う作家の愚直な時間の集積と、せめぎ合いの痕跡が刻まれた作品。静謐で重量感たっぷりの存在感と観る者に媚びない美しさを放っている。まるで作家自身かあるいはその身体のように見えてくるから不思議だ。

2009/07/11(土)(酒井千穂)

野村仁「変化する相──時・場・身体」

会期:2009.05.27~2009.07.27

国立新美術館[東京都]

国立新美術館のこぎれいなホワイトキューブの空間に展示すると、どんな前衛芸術も標本ぽく見えてしまうが、とりわけ野村仁の“理科系”作品にはそれが当てはまる。ただしそれは欠点としてではなく、むしろ長所としてだ。だとすれば、いちど美術館ではなく博物館や科学技術館で発表したらどうだろう。はまりすぎか。

2009/07/11(土)(村田真)

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