artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
ホンマタカシ「TRAILS」

会期:2009/05/08~2009/05/30
GALLERY 360°[東京都]
ホンマタカシはこの新作で、雪の上に点々と残る動物の血──狩猟の痕跡(TRAILS)を撮影している。ホンマはこのところ、都市から自然へとテーマ系を移行させつつあるが、それは別に彼の気まぐれではなく、時代の奥に潜む自然の生命力、感応力を希求する志向を鋭敏に察知しているからだろう。この「TRAILS」にも、人知を超えた魔術的な力に迫ろうとする意欲が感じられる。
ただ、雪山に実際に踏み入り、狩人のように獲物の血の痕を追っているときに彼が感じたであろう、ほとんど性的なエクスタシーに近いはずの昂揚感が、写真にきちんとあらわれているかといえば、そうでもない。ホンマの作品を見る時いつも思うのは、彼が みとった何か大きなものが、作品化のプロセスにおいて弱々しく、小綺麗にまとまってしまうということだ。今回の展示でも、透明プラスチックのケースに、わざわざ写真を2枚にずらしておさめるような微妙な操作が、あまりうまく機能していないのではないか。なお、マッチアンドカンパニーから同名の写真集も刊行されている。
2009/05/15(金)(飯沢耕太郎)
豆腐と油揚げ「中村裕太」
会期:2009/05/12~2009/05/24
Neutron[京都府]
作品はギャラリーの床面いっぱいに敷き詰められている白いタイル。最初はただそれだけの空間のように見えるが、よく見ると一枚一枚に焼き付けられている文字がかすかに確認でき、全体がテキストになっていることが解る。実際にそこに記された文字を追って、何が書かれているのかを読みとるというよりも、目で確認できるものとできないもの、意味のあるテキスト(信号的なもの)と意味のない文字(記号的なもの)の間を、鑑賞者が行ったり来たりしながら見る、という状況自体が面白い。ちょっとしたいたずらのような遊び心にセンスを感じる作品だった。
2009/05/15(金)(酒井千穂)
西野達「バレたらどうする」
会期:2009/05/09~2009/06/13
ARATANIURANO[東京都]
アーティスト、西野達の個展。ギャラリーの天井がずり落ちてきたようなインスタレーションのほか、画廊内の壁を貫通した街灯、家具や日常用品を頭上に垂直に積み上げて街を歩く姿を撮影した写真作品を発表した。「日常風景の異化」というフレーズが陳腐に思えるほど、徹底してやり尽す潔さが気持ちいい。
2009/05/14(木)(福住廉)
東京アンデパンダン展
会期:2009/04/21~2009/05/17
gallery COEXIST/are space COEXIST[東京都]
横浜とほぼ同時期に開催された東京のアンデパンダン展。横浜では団体展系の作品ばかりで占められていたが、東京では美大生系の作品ばかりだった。ただたんに年齢層のちがいなのか、それとも文化的なトライブのちがいなのか、極端に偏っているのがなぜなのかわからない。せめて双方が同一会場で合流していれば、予定調和的な「アンデパンダン」を払拭できていたのではないだろうか。
2009/05/14(木)(福住廉)
荒木由香里 展 Waltz

会期:2009/05/13~2009/06/13
studio J[大阪府]
ハイヒール、額縁、カメラなどに造花やガラス片を貼り付けたオブジェ、鳥の羽で覆われたメトロノーム、頭部が花に置き換えられた人形などのオブジェを出品。シュルレアリスムの影響というよりも、携帯電話やネイルに顕著なデコ文化に近い感じで、最初こそ不気味だったが、見慣れるうちに可愛らしいと感じるようになった。細部まで手抜きのない仕上げの美しさにも感心した。
2009/05/14(木)(小吹隆文)


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