artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
石内都+飯沢耕太郎「石内都 Infinity ∞ 身体のゆくえ」開催記念対談

会期:2009/05/09
群馬県立近代美術館 2F講堂[群馬県]
昨年以来大きな展覧会が相次ぎ、毎日芸術賞も受賞した石内都。群馬県高崎市の群馬県立近代美術館で開催された「石内都 Infinity ∞ 身体のゆくえ」展の記念対談のお相手をして感じたのは、以前に比べて言動が柔らかになり、自信がみなぎっていることだ。かつてはいら立ちが前面に出るような時があって、正直怖かった。もちろん今でも舌鋒の鋭さに変わりはないのだが、他者や世界を受容する姿勢がより強くなってきているのではないだろうか。
それは作品にもよくあらわれていて、「1・9・4・7」「SCARS」「INNOCENCE」「mother's」そして「ひろしま」と作品を年代順にたどっていくうちに、少しずつ受容性、順応性が際立ってくるように感じる。「mother's」の途中で、母親の遺品の口紅の赤を撮るため、モノクロームからカラーにフィルムを変えたのも大きかったのではないか。「より日常性の強い」カラーの表現が、これまでは強引にねじ伏せる対象だった現実世界との「和解」のきっかけになっているようにも思える。
「ひろしま」の軽やかに宙を舞うような写真の雰囲気には、これまで撮影されてきた重苦しい「HIROSHIMA」あるいは「ヒロシマ」のイメージを覆す、しなやかな勁さがある。次はこの作品を持って、「アメリカに仇討ちに行きたい」とのこと。このいい方は、いかにも「戦う写真家」石内都らしかった。なお、群馬県桐生市の大川美術館でも、彼女が生まれ故郷の桐生で撮影した写真を中心に「上州の風にのって 1976/2008」(2009年4月4日~6月28日)が開催されている。
2009/05/09(土)(飯沢耕太郎)
たむらあおい「かみさまあそび」

会期:2009/05/02~2009/05/17
arton art gallery[京都府]
時間が止まった世界のように平坦な色面の構成。しかしモデルの動作と植物の描写がしなやかで、深い奥行きとどこまでも続くようなリズムが感じられる音楽のような絵画だと思う。黒い背景と仮面のモチーフなど、絶望の雰囲気も漂っているが、シンメトリックな画面や、よく見ると笑いを誘うユーモラスな人物の表情に、心の機微が込められているようで、やっぱり美しい。
2009/05/09(土)(酒井千穂)
ツェ・スーメイ

会期:2009/02/07~2009/05/10
水戸芸術館現代美術センター[茨城県]
ルクセンブルク出身の新進気鋭のアーティスト、ツェ・スーメイの個展。広くは音楽と美術をテーマにしているらしいが、全体的には一発ネタをコンセプチュアルに装ったような作品が多く、その細かいネタが立て続けに連続するから、飽き飽きしてくる。ただし、群青色のインクを循環させる噴水の作品だけはそれなりに見応えがあった。
2009/05/09(土)(福住廉)
佐藤貢 展

会期:2009/05/09~2009/05/31
PANTALOON[大阪府]
和歌山の海岸に流れ着いた廃品で詩的なオブジェを作り出す佐藤貢。作品の方向性はこれまでと変わらないが、本展では点数を少なめにして作品単体よりも空間全体をどう見せるかに意識が向いていた。漁網を多用したのも今回の特徴で、吹き抜け空間に吊り下げるなどして、複数の作品をつなぐ役割を果たしていた。
2009/05/09(土)(小吹隆文)
よりみち・プロジェクト いつものドアをあける

会期:2009/05/09~2009/05/24
岐阜駅周辺から玉宮町界隈に点在する5ヵ所[岐阜県]
街中で美術展を同時多発的に行なうアートイベントは今や珍しくないが、このプロジェクトの特徴はコンパクトさ。各会場の距離が徒歩10分以内なので、ゆっくり歩いても2時間弱で回り切れる。背伸びせずDIY感覚で各会場(画廊、雑貨店、神社、カフェ等)と街の魅力をアピールしており、その力みの無さに好感を覚えた。なかでも、藤本由紀夫がディレクションしたpand(雑貨店)での展示、GALL ERY CAPTIONでの画廊とpandと河田政樹のコラボ、後藤譲が八幡神社で行なったさりげないインスタレーションは秀逸だった。
2009/05/09(土)(小吹隆文)


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