artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
寺島みどり 見えていた風景「コトバ」

会期:2009/04/28~2009/05/10
neutron-kyoto[京都府]
今年3月から大阪、東京、京都と立て続けに行なわれた寺島の個展。東京展は見られなかったが、大阪展での印象はまだ模索中という感じで、その混沌からどこまで挽回できるかが京都展の焦点だった。結論から言うと、大成功。彼女は自らに課したハードルを確実に乗り越えた。大小さまざまなストロークや点描が重なり合う画面は、たっぷり絵具が乗っているのに抜けが良く、ギトギトした厭らしさも感じさせない。彼女の身体感覚に合うスケールと、絶妙な余白使いが奏功しているのだろう。ギリギリのバランスで成立した作品特有のスリルや爽快感をたっぷり味わえた。
2009/04/29(水)(小吹隆文)
6+│アントワープ・ファッション展

会期:2009/04/11~2009/06/28
東京オペラシティアートギャラリー[東京都]
マルタン・マルジェラを筆頭に、アントワープシックスと呼ばれるデザイナーたち、さらにはその後の新世代までを含めて、アントワープ・ファッションの全貌に迫る野心的な企画。図録は写真資料とテキストともにたいへん充実しており、堅実な研究にもとづいていることがよくわかる。とくに言説分析の手法によって、当地の新聞記事からアントワープ・ファッションの変遷を丁寧に浮き彫りにするなど、すぐれた研究内容が反映されていたように思う。けれども、じっさいの展示は、まったくもって落第点。衣服、写真、解説パネル、映像などで構成していたが、空間の容量にたいして作品の点数が圧倒的に乏しいから、貧相で寒々しい展示になってしまっていた。ファッションショウを見せる映像も、壁に埋め込んだモニターを狭い通路にただ並べているだけだから、鑑賞しにくいことこの上ない。展覧会のプロフェッショナルが関与したとは到底思えない、じつに粗悪な展示だった。しかも、一部のデザイナーの日本語表記が一般的に流通している表記と異なっていた点も気になった。すでに「クリス・ヴァン・アッシュ」として定着している表記をわざわざ「クリス・ヴァン・アッス」と書き表わすことの意義がよくわからない。たえず微細な差異を捏造することで正統性を牛耳ろうとするアカデミズムのいちばん悪い部分が露呈してしまっていたのではないか。
2009/04/28(火)(福住廉)
見えていた風景「コトバ」寺島みどり

Neutron(京都)[京都府]
大阪、東京、京都の3会場で新作が発表された一連のシリーズ展。「見えていた風景」というタイトルに加え、大阪は「森」、東京は「空」、京都では「コトバ」というテーマがそれぞれ設定されていたが、最終会場(京都)の展示しか見ることができず心残りだ。展示は大きな作品が3点と、ドローイング作品が3点。これまでに見た、彼方を望むようなイメージの絵画とは印象がずいぶん違っていたので少し驚いた。育てている植物が主なモチーフなのだという。一見したときには、勢いのあるストロークから激しさも感じたが、至近距離でじっくりと見ると複雑な色層が確認できる。見れば見るほど、色が染み込んで画面の奥深くへと沈んでいくような印象に変わっていくから不思議。最近は目の前にある景色や日々の暮らしのなかで目にしているものにこそリアリティを感じるようになったと寺島は話してくれたが、穏やかに移り変わるイメージの作品にはその美しさと説得力が充分に表われていてこちらに響いてくるようだった。
来月には岡山県の奈義町現代美術館での個展も予定されている。6月21日(日)には館内のカフェにてアーティストトークも開催。旧作から最新作までを展観するというから見逃せない。
寺島みどり展「見えていた風景」
会期:6月21日(日)~7月26日(日)
会場:奈義町現代美術館
2009/04/28(火)(酒井千穂)
ノ・ジュン個展

会期:2009/04/27~2009/05/14
ギャラリー風[大阪府]
ドラえもんやサンリオのキャラをダサくした感じのオブジェと写真作品を展示。オブジェは樹脂製と木製があり、樹脂製はツルっと洗練されているのに、木製はゴツゴツした民芸調なのが意外だった。韓国のキャラクター事情は知らないが、この辺りに民族性の違いがでているのだろうか? オリジナル・キャラを世界各地に連れ出して撮影する写真作品も1点出品されていたが、こちらの方が今後展開しやすいように思えた。
2009/04/27(月)(小吹隆文)
横浜開港アンデパンダン展

会期:2009/04/21~2009/04/26
BankART Studio NYK[神奈川県]
横浜市内18区からプロ・アマを問わず、ジャンルも問わず、美術作品を公募した上で無審査で作品を展示するという展覧会。しかし、じっさいの展示はいかにも団体展系の作品のオンパレードで、アンデパンダン展の売りである「自由」がじつに一面的で薄っぺらいものになってしまっていた。そうしたなか、辛うじて異彩を放っていたのは、透明なグラスに入ったビールとウィスキーとバーボンを描き分けた、蕨岡省三の平面作品。三つの作品はそれぞれ構図もタッチも色彩もほとんど同じで、タイトルがなければアルコールの種別を見分けることは難しいが、酒を見つめる愚直な視線がほほえましくもあり、なにやら偏執的な匂いも感じさせた。
2009/04/26(日)(福住廉)


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