artscapeレビュー
特別展示 医家の風貌
2017年02月15日号
会期:2016/12/03
JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク[東京都]
東京駅前に「驚異の部屋」があるとは、なんと贅沢な! その一隅で、東大医学部附属病院から管理換となった肖像画と肖像彫刻の一部が展示されている。これらは病院内科講堂の大壁面に掛け継がれてきた歴代教授の肖像画で、医師でも医学者でもなく「医家」と称するところがイカにもイカめしい。作者に和田英作や中村研一らの名前も見えるなか、おや? っと首をひねってしまったのが黒田清輝作の《三浦謹之助》の肖像。ヘタというか、ハンパ感が尋常ではない。制作年を見ると1920年というから画家の晩年だ。近代洋画の父ともいわれる黒田だが、彼が日本美術史に残る作品を生み出したのは19世紀の最後の10年間だけで、以後は教授や審査員など多くの役職を担い多忙をきわめたため、制作がおろそかになっていく。特に1920年というと貴族院議員に当選した年であり、なんとか描き始めたものの続かず、未完成のまま放棄されたようだ。三浦教授も困ったに違いない。
2017/01/25(水)(村田真)