artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

MONSTER Exhibition 2016

会期:2016/09/03~2016/09/07

渋谷ヒカリエ 8/COURT[東京都]

渋谷ヒカリエにて、公募の審査を担当した「MONSTER」展のオープニングに顔を出す。今年は「ポケモンGO」と『シン・ゴジラ』の登場によって、ハリウッド映画から日本に怪獣を取り戻す重要なモンスターイヤーだったが、出品作のレベルも向上している。個人的には片山美耶のカービングの技術によるお化けスイカの作品が、いかにもという怪獣ではなく、日常的なモノが不気味に変容しており、トラウマになりそうで印象に残る。

2016/09/02(金)(五十嵐太郎)

古都祝奈良 ─時空を超えたアートの祭典─

会期:2016/09/03~2016/10/23

東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、大安寺、西大寺、唐招提寺、薬師寺、ならまち、ほか[奈良県]

「古都祝奈良(ことほぐなら)」は、日本、中国、韓国の3カ国で、文化による発展を目指す都市を各国1都市選定し、さまざまな文化プログラムを通じて交流を深める国家プロジェクト。今回は日本の奈良市、中国の寧波市、韓国の済州特別自治道が選ばれた。イベントは美術部門、舞台芸術部門、食部門から成るが、筆者が取材したのは、美術部門のうち8つの社寺で行なわれた作品展と、ならまち会場の一部だ。8つの社寺とアーティストのラインアップは、東大寺/蔡國強(中国)、春日大社/紫舟+チームラボ(日本)、興福寺/サハンド・ヘサミヤン(イラン)、元興寺/キムスージャ(韓国)、大安寺/川俣正(日本)、西大寺/アイシャ・エルクメン(トルコ)、唐招提寺/ダイアナ・アルハディド(シリア)、薬師寺/シルパ・グプタ(インド)である。アーティストの国籍がアジアを横断しているが、その背景には、かつて平城京がシルクロードの東の終着点だった歴史があるのだろう。作品では、巨大な木製の塔を建てた川俣正、寺院にふさわしい哲学的なオブジェを発表したキムスージャ、インタラクティブな映像作品の紫舟+チームラボ、龍の伝説と中東起源のユニコーンをクロスさせたダイアナ・アルハディド(シリア)など力作が多く、非常に見応えがあった。また、電車、バス、徒歩で比較的容易に会場間を移動でき、一部社寺の拝観料以外は無料で観覧できるのも嬉しいところだ。このイベントは初期の広報が不親切で、事前の周知が十分とは言い難かった。もっと丁寧な広報を早期から心がけていれば、きっと大きな話題を集めたであろう。展示が素晴らしかっただけに、その点だけが残念だ。なお、美術部門のディレクションとアーティスト選定を担当したのは北川フラムである。

2016/09/02(金)(小吹隆文)

セレステ・ウレアガ/カクガワエイジ「doble mirada 2つの視点、そこから見える未来へ」

会期:2016/09/01~2016/09/04

ニューロ吉祥寺[東京都]

セレステ・ウレアガはアルゼンチン・ネウケン出身の写真家、ビジュアルアーティスト。ブエノスアイレスでスタジオ390を運営し、ロックミュージシャンのポートレートやオーディオビジュアル作品を中心に制作・発表している。彼女は2015年に来日し、東京・麹町のセルバンテス文化センターで写真展「アルゼンチンロックのポートレート」を開催した。そのとき、石黒健治の写真ワークショップ「真眼塾」を主催しているカクガワエイジと知り合い、意気投合したことが、1年後の二人展に結びついた。
吉祥寺・井之頭公園近くの会場には40点の写真が2列に並んでいた。上下2枚の写真のうちどちらかがウレアガかカクガワの写真だが、作者名は明記されていない。「愛、生、死」など漠然としたテーマ設定はあるが、写真の選択はかなり恣意的に見える。モノクロームあり、カラーあり。ウレアガのアルゼンチンの写真と、昨年の来日時に日本で撮影した写真が混じり合っており、カクガワも日本だけではなく、パリ、ロンドン、フィンランドなどでも撮影している。まさにカオス状態が出現しているのだが、それでも自ずとアルゼンチン人と日本人の写真を介したコミュニケーションのあり方の違いが浮かび上がってくるのが興味深かった。会場の最初のパートに展示された2枚の写真が象徴的だろう。「閉じたドア」(カクガワ)と「開いた目」(ウレアガ)である。それらはコミュニケーションの回路が内向きに閉じがちな日本と、底抜けに開放的なアルゼンチンの状況を明瞭に指し示している。
このような異文化交流は、継続していくことでさらなる実りを生むのではないだろうか。まったく正反対にかけ離れているからこそ、刺激的な出会いもありそうだ。次はぜひ「地球の裏側の国」アルゼンチンでも二人展を実現してほしい。

2016/09/01(木)(飯沢耕太郎)

日伊国交樹立150周年特別展 アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

会期:2016/07/13~2016/10/10

国立新美術館[東京都]

ヴェネツィアのアカデミア美術館所蔵作品を中心とする展示。アカデミア美術館にはビエンナーレに行くたびに訪れるが、ウフィツィやヴァチカンに比べれば質量ともにかなり見劣りする。ヴェネツィア絵画を代表するティツィアーノはプラドをはじめ各国に分散してるからもともと少ないし、ティントレットはあるけど代表作はサンロッコ同信会館に集中してるし、自慢できるのはジョヴァンニ・ベッリーニ、カルパッチョ、それにジョルジョーネの《嵐》とヴェロネーゼの《レヴィ家の饗宴》くらい。もちろん今回は《嵐》も《レヴィ家の饗宴》も来てないけど、ベッリーニとカルパッチョは小ぶりながら特徴を備えた佳品が1点ずつ出品されている。ティツィアーノは2点あるけど、大作《受胎告知》は美術館ではなくサン・サルヴァドール聖堂から拝借して来たもの。でもこれ借りちゃったら祭壇は空っぽ? 出品点数は計57点と控えめで、なんだかヴェネツィア的な華やぎに欠けるなあ。

2016/08/31(水)(村田真)

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「KOGEI かなざわ2016」記者発表

会期:2016/08/31

dining gallery 銀座の金沢[東京都]

金沢21世紀美術館の「工芸とデザインの境目」を中心に、秋に金沢市内で展開されるイベント「KOGEI かなざわ」の記者発表。冒頭で最新ニュースとして、東京国立近代美術館附属の工芸館が2020年までに金沢に移転することが決定したと発表。グッドタイミングですね。続いて、「KOGEI かなざわ」の核となる「工芸とデザインの境目」(2016年10月8日~2017年3月20日)について、同展監修のデザイナー、深澤直人から説明がある。工芸とデザインの違いはなにか? 工芸は職人が手でつくるけど、デザインは機械が大量生産するとか、工芸は古ければ古いほど価値が増すけど、デザインは新しければ新しいほど価値が高いとか。そんな両者の境目を提示していくという。これはおもしろそう。そのオープニングから3日間、金沢市内の工芸店やギャラリーを中心に「かなざわKOGEIフェスタ!」を開催。街全体で工芸に触れてもらおうという趣向だ。そのほか、「金沢21世紀工芸祭」(2016年10月13日~2017年2月26日)、「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ」(2017年1月21日~2017年2月11日)など、秋から来春にかけて工芸イベントが目白押し。こんなに工芸一色に染まっていいの?

2016/08/31(水)(村田真)