artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

笹岡由梨子「イカロスの花嫁」

会期:2016/07/09~2016/07/30

ギャラリー・ジン・プロジェクツ[東京都]

今年の岡本太郎現代芸術大賞展で特別賞を受賞した悪夢のような映像インスタレーションが、いまだ脳裏にこびりついている。今回の「イカロスの花嫁」もその延長線上の新作で、大きく引き延ばされた花嫁の目や口、ノスタルジックな音楽がクセになりそう。瀬戸内国際芸術祭でも異なる映像インスタレーションとして同時公開されるという。

2016/07/29(金)(村田真)

オル太 カルタナティブスペース

会期:2016/06/24~2016/07/30

nap gallery[東京都]

オル太がTOLTAの協力を得てカルタを制作したって。

2016/07/29(金)(村田真)

久村卓「家内制スカルプチャー」

会期:2016/07/23~2016/07/31

アイコワダギャラリー[東京都]

久村は数年前にケガして以来、体力を要する彫刻制作を控え、家のなかでもできる彫刻を模索してきた。これが「家内制スカルプチャー」だ。どんなものかといえば、ブランド物のシャツの胸に刺繍されたロゴマーク(動物が多い)の下に台座を縫いつけ、ロゴの動物を彫刻のように見せかけるとか、椅子やベンチにシャツをぴっちり着せるとか、高級ブランド物の生地に空いた穴に安いファストファッションの生地をツギハギするとか。家内制スカルプチャーというより手芸であり、彫刻制作から概念操作への移行というべきかもしれない。おもしろい展開が期待できそうだ。

2016/07/29(金)(村田真)

ポコラート全国公募展vol.6─作品は、どこから来たのか。作品は、どこへ行くのか。

会期:2016/07/16~2016/08/08

アーツ千代田3331メインギャラリー[東京都]

応募作品1632点のなかから選ばれた入選作品154点を展示している。倍率は10倍以上、日展より狭き門だ。ポコラートとは「障がいのある人、ない人、アーティストによる自由な表現」のことらしい。ここからいえることは、まず、障がいのある人にプライオリティがあること、それからアーティストは「障がいのある人」でも「ない人」でもない「第3の人」であること、そして合わせれば全人類に適用できることだ。すると、審査基準はアーティストでも障害のない人でもなく、「障がいのある人」に合わせているんだろうか。いまひとつわかりにくい。そのせいか、作品の落差もハンパない。A4程度の紙切れ1枚に色鉛筆でサラッと描いただけの頼りない絵もあれば(けっこうあった)、天井から床まで届く長い紙10枚に絵を描き、幅10メートルにわたって壁を占拠した猛者もいる。また、同じ「なぐり描き」でも、額装したものと、そのままピンで止めたようなものでは見え方がまるで違う。不思議なことにポコラートの場合、額装したものより、ペラ1枚そのままのほうがスゴミを感じさせるのだ。さて、勝手に村田真賞は、田村貴明の《好きな人の絵》と《私の願い》のセット。《好きな人の絵》のほうは大島優子、大久保悠、武田祐子、加藤綾子という4人のタレントの似顔絵を並べたものだが、恐ろしいことに4人とも同じ顔をしているのだ。《私の願い》のほうは「私の名前は田村貴明です」で始まり、「コンサート、見に、行きましょう。行けたらいいですね」で終わる、彼女たちに宛てた手紙形式の文章なのだが、彼女たちの名前以外はすべて同じ文面、同じ書体で書かれているのだ。これを本人たちに送ったりしたら犯罪になりかねないが、このように「ポコラート」として公開すれば、すごい、すごいといってホメるヤツもいるのだから世の中は楽しい。

2016/07/29(金)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00036273.json s 10126022

あの時みんな熱かった!アンフォルメルと日本の美術

会期:2016/07/29~2016/09/11

京都国立近代美術館[京都府]

1956(昭和31)年に来日した美術評論家ミシェル・タピエが伝え、日本で一大ブームを巻き起こした「アンフォルメル」(未定形なるもの)。その軌跡を、油彩画、日本画、陶芸、漆芸、書など約100作品で検証したのが本展だ。当時のブームはすさまじく、ジャンルや世代の枠を超えて多くの作家がアンフォルメルに傾倒した。本展ではその理由を、日本人の感性とアンフォルメルの親和性(例えばアクションペインティングと書、物質感と陶芸など)、戦中から占領下に海外の情報が閉ざされてきた反動などに求めている。なるほど日本人とアンフォルメルの相性は良かったようだが、ブーム後期になると作品はドロドロとした土俗性を帯び、タピエが唱えた国際性とは別の方向へと進化していく。このあたりは、舶来品を独自の味付けへとアレンジする日本人の特性が感じられて興味深かった。現代はあらゆる分野で細分化が進み、ジャンルや世代を超えたブームが起こりにくいと言われる。本展を見て、アンフォルメルに燃えた当時の人々を少し羨ましく思った。

2016/07/28(木)(小吹隆文)

artscapeレビュー /relation/e_00036341.json s 10126755