artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

佐藤千重展

会期:2016/07/26~2016/07/31

LADS GALLERY[大阪府]

1990年代前半から個展や公募展で活動したものの、長期の活動休止期間があり、この度6年ぶりの個展を開催した佐藤千重。今回彼女が発表した作品は、動物、土偶、祭器などから着想したオブジェと、それらとは対照的にモダンデザインを思わせる流麗なフォルムのオブジェであった(少数ながら器もあり)。どの作品も造形のキレが素晴らしく、一目見た瞬間に「ただ者ではないぞ」と思わせる。釉薬や化粧土の扱いも見事だ。これだけの資質を持つ人が、なぜ長期間にわたり活動を休止したのか、そしてなぜ活動再開後にいきなりハイレベルな作品を作り得たのか。プライベートを詮索する気はないが、そのミステリアスな経歴も作家への興味をかき立てる。今後はコンスタントに活動を行なうとのこと。陶芸関係者の注目をあつめるのは間違いないだろう。

2016/07/29(金)(小吹隆文)

宇宙と芸術展

会期:2016/07/30~2017/01/09

森美術館[東京都]

タイミングがあったので、「宇宙と芸術展」@森美術館の内覧会へ。おそろしく混んでおり、とても鑑賞できる状態でない。これならば、普通の日に行けばよかった。現代美術はもちろんあるのだが、むしろ過去の宇宙観を示す絵や観測機器など、歴史の重みをもつ博物館的なコンテンツが結構多く、思っていたよりも面白い。グラッソやティルマンスは最近日本で紹介されたのと同じ作品だった。

2016/07/29(金)(五十嵐太郎)

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アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち

会期:2016/07/13~2016/10/10

国立新美術館[東京都]

アカデミア美術館のコレクションである。ベッリーニからティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノへと、静から動きを孕みながら、たたみかける前半の内容がいい。後半は肖像画やポスト・ルネサンスの展開だが、ややパンチ力に欠ける。同時開催のルノワール展の激混みとは好対照で、まばらな観客だったおかげで、とても見やすい。

2016/07/29(金)(五十嵐太郎)

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スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集

会期:2016/07/08~2016/09/10

TOTOギャラリー・間[東京都]

「スミルハン・ラディック展 BESTIARY:寓話集」@ギャラリー間へ。久しぶりに、美しい建築展と遭遇した。むろん、オブジェ的な模型は懐かしくもある。最近、卒計イベントでもプロジェクトの「正しさ」が求められる傾向が顕著だが、こういう文学性や芸術性の強度で勝負する詩的なタイプの建築表現がめっきり減っているのは寂しい。

2016/07/29(金)(五十嵐太郎)

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宇宙と芸術展

会期:2016/07/30~2017/01/09

森美術館[東京都]

これ以上ない大風呂敷を広げた展覧会。なにしろ「宇宙」だもん、あらゆる芸術を包含しかねない。展示は曼荼羅図に始まり、十二天像、キトラ古墳壁画の天文図(複製)、竹取物語絵巻、江戸時代の天文観測図と観測器、隕石でつくった《流星刀》、天体観測機器アストロラーベ、レオナルド・ダ・ヴィンチによる天文学のメモ(アトランティコ手稿)、ガリレオ・ガリレイの手稿、コペルニクスやケプラーによる天文学書の初版本、ツィオルコフスキーの天文学を巡る手稿、ユーリ・ガガーリンの写真、アポロ11号の資料、アンドレアス・グルスキー《カミオカンデ》、森万里子《エキピロティックス ストリングⅡ》、野村仁《ムーンスコア》、チームラボによる体験型の映像インスタレーションと続く。これを見ると、宗教、科学、芸術が未分化な前近代から、徐々に天文学が専門分化していく経過がわかり、最後に現代のアーティストがまたそれらを混ぜっ返そうとしているようにも見える。楽しみどころがたくさんあるし、よく集めたもんだと感心もするが、逆になんでこんなもんまで? と首をひねりたくなるようなものもある。例えばジア・アイリみたいな宇宙のイラストレーションを出すくらいなら、ジャクソン・ポロックのドリッピング絵画のほうがはるかに宇宙的だと思うのだが。

2016/07/29(金)(村田真)

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