artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
笹岡敬展 TIMES2016
会期:2016/03/12~2016/03/26
CAS[大阪府]
笹岡敬の作品といえば、光を駆使したインスタレーションが思い浮かぶ。しかし本展の作品は映像だ。疾走する自動車から撮影した風景がパノラマサイズで上映され、景色が次々に移り変わっていく。上映には2台の映写機が用いられていたが、それは画面が極端に横長なためだろうと勝手に思い込んでいた。あとで本人に、「じつは同一映像を時間差をつけて横並びで流している」と聞き、とても驚いた。あらためて作品を見直すと、確かに同じ映像だ。そこには二つのずれた時間があり、我々が普段感じているのとは違う時間認識が顔を覗かせていた。笹岡は2015年に「timelake─時間の湖─」という企画展に参加し、時間を一直線の流れではなく、過去と未来を行きつ戻りつして認識するものと思うようになった。本作はその考えに基づくものである。習作的なラフさもあるが、今後の展開次第では笹岡の新たな起点と見なされるかもしれない。
2016/03/16(水)(小吹隆文)
エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ
会期:2016/01/16~2016/03/21
国立国際美術館[大阪府]
国立国際美術館の「エッケ・ホモ 現代の人間像を見よ」展は、所蔵作品を中心に第二次世界大戦後の人間を描いた作品が集結する。通して見ると、やはりアンディ・ウォーホルやフランシス・ベーコンの作品は強力だった。ほかに印象に残ったのは、小谷元彦の映像作品に、片山真里が登場していたこと。またブライス・ボーネンの顔が不気味にぶれる写真は、後のJホラーのセンスに先駆けるものがあった。
2016/03/15(火)(五十嵐太郎)
浜田涼展
会期:2016/03/14~2016/03/19
藍画廊[東京都]
昔よりボケたなあ、いや作品の話。ボケてよくなったと思う。目がボケたのかな、いや頭がボケたかも。
2016/03/15(火)(村田真)
MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事
会期:2016/03/16~2016/06/13
国立新美術館[東京都]
内覧会の前に安藤忠雄、ジャック・ラングらそうそうたる来賓のあいさつが続き、ようやく終わったと思ったら、招待客が多すぎて入るまで20分くらいかかった。美術展には珍しいことで、一生さんの人気と底力を見せつけられる。ちなみに女性の招待客はやはりプリーツ姿が目立ち、華やか。でもね、入ったらわかるけど、展示品と見比べられちゃいますよ。さて、最初のギャラリーはランウェイを思わせる細長い空間で、段ボール製のマネキンに初期の70年代の実験的な(いつも実験的だが)ドレスやジャンプスーツなどが一列に並べられている。次のギャラリーでは、アクリル製のマネキンに80年代のプラスチックボディやワイヤーボディが展示され、ぐるっと回ると仕切りのない広大なギャラリーに出る構成。ここではさまざまなパターンの「プリーツ」シリーズをはじめ、「一枚の布」から発想された「A-POC」シリーズ、折り畳まれた布から服が立ち上がる「132 5. ISSEY MIYAKE」シリーズなどが紹介されている。会場の一画にプレス機を持ち込んで、グラフィックデザイナー田中一光とコラボしたプリーツの製作過程も見られる仕掛け。三宅一生の根本的な問いは、「三次元である身体を二次元の布でいかにして包むか」というもの。これは「三次元の世界を二次元の平面にいかにして表わすか」という絵画の根本問題にも通じ、ここから「一枚の布」というコンセプトが導き出される。そこに(身体の)動き=時間を加えることで、一生ならではのユニークな服が展開されていくのだ。服を「一枚の布」に還元し、服の概念を問い直し続けるという意味で、三宅一生の服は最良のミニマル・アートであり、コンセプチュアル・アートでもあるだろう。
2016/03/15(火)(村田真)
見附正康 個展
会期:2016/02/27~2016/04/09
オオタファインアーツ[東京都]
絵つけ大皿5点に蓋つき器1点。大皿は絵柄が見やすいように壁に掛けてある。どれも極細の赤い線で幾何学的パターンを描いているが、よく見ると和洋やアラベスクなど伝統的な文様だったりする。5点のうち3点は図柄が皿の中心から放射状に広がっているが、1点は図柄の中心と皿の中心がズレ、もう1点は中心のない四角いパターンになっている。いずれにせよ、よくこんな細かいの描けたなと感心する以上の感興はそそられない。
2016/03/15(火)(村田真)