artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

平子雄一「BARK FEEDER」

会期:2015/10/01~2015/10/30

第一生命ギャラリー[東京都]

絵の内容より形式に興味を持った作品。木枠に張ってない3×2メートルほどの大きなキャンバス布を7枚並べて、カーテンみたいに天井から吊るしている。カーテンみたいというのは比喩ではなく、表面がフラットにならず波打ってしまうからだ。これは作者も意図しなかったことだろうが、この波打つ画面を屏風のジグザグ面のように絵画内容に採り込めば、新たな「カーテン絵画」の可能性が開けるかもしれない。

2015/10/23(金)(村田真)

武器をアートに──モザンビークにおける平和構築

会期:2015/10/17~2015/11/23

東京藝術大学大学美術館[東京都]

サブタイトルに「モザンビークにおける平和構築」とあるように、1975年の独立以来内戦が続いたアフリカ南東部のモザンビークで、大量に供給された武器を農具や自転車と交換するプロジェクトが進んでいるが、その武器の一部が解体されたうえ、アートの素材として使われている。ネガティブなものをポジティブに価値転換するにはアートがいちばんだからね(ポジティブなものをネガティブに変えるアートもあるが)。これらの作品は以前、大阪の民博で見たことがあるので新鮮味はないが、楽しげに楽器を弾く人物像の頭部が銃の一部でつくられていたりすると、ちょっと複雑な気分になる。だが逆に、今回の目玉でもある《いのちの輪だち》のような大作になると、武器が使われてることがわかりづらくなり、ただのヘタな鉄の彫刻にしか見えなくなる。やはりどこかに武器であった痕跡をはっきり残しておかないと、アートとしての緊張感が低下してしまうのだ。ちなみに、使われてる武器は圧倒的にAKB48、じゃなくてAK-47(いわゆるカラシニコフ)が多いようだ。

2015/10/23(金)(村田真)

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菊畑茂久馬個展「春の唄」

会期:2015/09/26~2015/10/23

カイカイキキギャラリー[東京都]

カイカイキキで菊畑茂久馬とは意外な気もするが、グルッと1周回って行きつくところに行きついたともいえる。作品は200号を3枚つないだ大作絵画が壁に1点ずつ計4点。描かれている内容は4点ともほぼ同じで、キャンバス上辺から下辺に行くに連れて幅が狭くなる逆台形に色を塗り、中央に縦の空白をつくってそこに水玉やストライプを入れている。逆台形の色彩はそれぞれ淡い赤、青、黄、緑のパステルカラー。このキャンバスの巨大さと逆台形はちょうど、木枠に張らない布に絵具を流して染めたモーリス・ルイスのヴェール絵画を想起させるが、つくり方は正反対といえるほど違っていて、菊畑のそれは偶然の入り込む余地がないほど周到に計画され、工芸的といえるくらい丹念に仕上げている。工芸的といえば、畳部屋の100号3点はいずれも線による表現で、より工芸的かつ日本的な印象を受ける。菊畑にとってこれまで「戦争と人間と芸術」が大きなウェイトを占めていたが、新作では「その呪縛から解き放たれて」美とはなにか、芸術とはなにかを問うものになったという。平たくいえば吹っ切れたというか。でもその境地がこれだといわれると、なんか肩すかしを食わされたような気がする。境地なんてそんなもんだといわれればそれまでだが。

2015/10/23(金)(村田真)

琳派からの道 神坂雪佳と山本太郎の仕事

会期:2015/10/23~2015/11/29

美術館「えき」KYOTO[京都府]

明治・大正・昭和初期の京都で活躍した画家・図案家の神坂雪佳(1866~1942)と、古典絵画と現代風俗をミックスした「ニッポン画」を標榜する山本太郎(1974~)による、時空を超えた2人展。神坂は、絵画、版画、木工、漆芸、陶芸、図案など約50点、山本は、絵画、版画、陶器約40点という構成であった。両者をつなぐキーワードは、山本が神坂を「敬愛」していることと、今年で誕生から400年を迎えた「琳派」である。琳派は私淑により時代を超えて受け継がれてきた芸術様式なので、本展における2人の関係性は、まさに琳派的と言えるだろう。作風は、神坂が琳派直系の雅(みやび)さを有するのに対し、山本は諧謔(かいぎゃく)精神が持ち味。尾形光琳の《紅白梅図屏風》をモチーフにした《紅白紅白梅図屏風》や、俵屋宗達の《風神雷神図屏風》に今年30周年を迎えたゲーム「スーパーマリオブラザーズ」を掛け合わせた《マリオ&ルイージ図屏風》はその好例である。しかし、敢えて1点を挙げるとすれば、山本の《信号住の江図》(版画)を推したい。神坂の《住の江図》の版木と自分の版木を重ね摺りした本作こそ、この展覧会の意義を体現しているからだ。

公式サイト http://www.rimpa400.jp/

2015/10/22(木)(小吹隆文)

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Reflection:返礼-榎倉康二へ

会期:2015/10/01~2015/10/25

秋山画廊[東京都]

榎倉さんが亡くなって20年。10年目にも教え子が展覧会を開いたが、今回は東京藝大で榎倉の薫陶を受けた数少ない女性作家だけの企画展が計3カ所で開かれてる。秋山画廊では白井美穂、豊嶋康子、日比野ルミ、福田尚代の4人の出品で、いずれも60年代生まれ。木の箱を重ねた上に黄色い絵具をレモンのように固めて連ねた環を載せた白井、手の届かない壁の上のほうに役立たずの本棚をとりつけた豊嶋など、難解な作品が多いのは榎倉ゼミならではのことか。

2015/10/21(水)(村田真)