artscapeレビュー
菊畑茂久馬個展「春の唄」
2015年11月15日号
会期:2015/09/26~2015/10/23
カイカイキキギャラリー[東京都]
カイカイキキで菊畑茂久馬とは意外な気もするが、グルッと1周回って行きつくところに行きついたともいえる。作品は200号を3枚つないだ大作絵画が壁に1点ずつ計4点。描かれている内容は4点ともほぼ同じで、キャンバス上辺から下辺に行くに連れて幅が狭くなる逆台形に色を塗り、中央に縦の空白をつくってそこに水玉やストライプを入れている。逆台形の色彩はそれぞれ淡い赤、青、黄、緑のパステルカラー。このキャンバスの巨大さと逆台形はちょうど、木枠に張らない布に絵具を流して染めたモーリス・ルイスのヴェール絵画を想起させるが、つくり方は正反対といえるほど違っていて、菊畑のそれは偶然の入り込む余地がないほど周到に計画され、工芸的といえるくらい丹念に仕上げている。工芸的といえば、畳部屋の100号3点はいずれも線による表現で、より工芸的かつ日本的な印象を受ける。菊畑にとってこれまで「戦争と人間と芸術」が大きなウェイトを占めていたが、新作では「その呪縛から解き放たれて」美とはなにか、芸術とはなにかを問うものになったという。平たくいえば吹っ切れたというか。でもその境地がこれだといわれると、なんか肩すかしを食わされたような気がする。境地なんてそんなもんだといわれればそれまでだが。
2015/10/23(金)(村田真)