artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
あなたの都市の上に草は生える
会期:2014/09/06
都内某所[東京都]
札幌国際芸術祭で見逃したアンゼルム・キーファーのドキュメンタリー映画を、内々で上映するというので見に行く。林のなかに小屋が点在する風景が映し出される。アトリエなのかギャラリーなのかわからないが、作品らしきものが置いてある。重機を使って穴を掘り、地下神殿のようなグロッタをこしらえている現場も映し出される。途中キーファーへのインタビューが差し挟まれ、最後はコンクリートを積み上げて不安定な塔を建てておしまい。なんだこれ? 後にこれらが南仏アルデシュ県バルジャック村に構えた35ヘクタールに及ぶアトリエの一部であることがわかって、おったまげる。35ヘクタール? 想像がつかんが、うちより広い。ところでバルジャックといえば、20年ほど前に先史時代の壁画(ショーヴェ洞窟壁画)が発見されたヴァロン・ポン・ダルクの渓谷のすぐ近く。キーファーが移り住んだのも同じころ。とすれば、敷地内に洞窟を掘ってるのは偶然ではないだろう。
2014/09/06(土)(村田真)
第4回産廃サミット─廃棄物を言い訳にしないデザイン展─
会期:2014/09/06~2014/09/14
プラス・ショールーム「+PLUS」[東京都]
日頃我々がゴミとして排出している“廃棄物”の素材性を活かしたアート、プロダクトなど、公募により選出された80名の作品を展示した展覧会イベント。廃棄物処理業者の株式会社ナカダイが主催する今展は、”素材=廃棄物”という見地からモノの価値や捨て方、現在の我々の生活のあり方、創造の可能性を見つめ直そうというものであった。捨てられたプラスチックの道具やおもちゃの部品など、様々な廃品から制作した派手な装飾のリヤカー《移動祭壇》を引き、街中を走るという活動を行っている石田真也が出品するというので見に行った。手芸から彫刻まで、廃品を用いたさまざまな作品とともに主催会社が扱う商品も陳列された会場は、全体には「何でもあり」の雑多な印象。興味を持つものは他にもあったが、石田の新作はだんとつに目を目を引いた。《石田延命所》という車輪付きのその作品は、これまで石田が発表してきた《移動祭壇》と同様のコンセプトで制作されたもの。しかし、主にその造形センスに注意が傾きがちだったこれまでとも異なり、今回は細部のマテリアルにもその使い方にも石田ならではのユニークな発想と工夫がうかがえて、作家の遊び心にもワクワクする興奮を覚えた。石田のアートワークは、素材集めにしろ制作物にしろ、実際に外に出ることで新たな出会いや交流を生み出すという魅力をもっている。作品自体がただ廃材を使った奇抜な「祭壇」というインパクトを超えて昇華した印象だったのが嬉しい。今後の発表活動がますます楽しみになった。
2014/09/06(土)(酒井千穂)
MOVING Live 0 in Kyoto
会期:2014/09/06
五條會舘[京都府]
2011年に2度のプレイベントを行ない、2012年に第1回を開催した、映像芸術祭「MOVING」。2015年2月に予定されている第2回に先立ち、映像×音楽をコンセプトとしたライブパフォーマンスが開催された。出演者は、浦崎力×てあしくちびる、山城大督×swimm、宮永亮×志人、柴田剛×池永正二の4組(いずれも映像、音楽の順)。両者の関係性を大別すると、それぞれが独立した作品、映像による音楽の演出、以前制作したミュージックビデオをもとに映像と音楽を発展させる、といったところ。当日は悪天候で、会場の空調設備が貧弱だったため蒸し風呂のような状態になったが、4組とも良質なコラボレーションを展開してくれたおかげで濃密な一時を過ごすことができた。10月19日には千葉県柏市のキネマ旬報シアターでも公演が行なわれる。首都圏の方におすすめしたい。
2014/09/06(土)(小吹隆文)
高畑早苗「Metamorphosis」
会期:2014/08/26~2014/09/06
Galerie Paris[東京都]
一昨年亡くなった友人に捧げるオマージュ展。出品は、ボッシュかブリューゲルを思わせる楕円形の風景画に、ビザンチン風ともいうべき華麗な人物画、キャンバス地をドレス型に仕立てて絵を描いた「ウェア・ミー」シリーズ、それに小さな人物像をビーズやガラスで飾り立てたイコン風の装飾品など、形式もスタイルも多彩というほかない。ただ共通しているのは、どれも東洋的でも西洋的でもなく無国籍的であること、どれもアナクロニズム志向であること、どれもアンチフォーマルながら絵画を基本にしていること。そしてもうひとつ付け加えるなら、どれもこの世とあの世をつないでることだ。
2014/09/05(金)(村田真)
印象派のふるさと ノルマンディー展
会期:2014/09/06~2014/11/09
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館[東京都]
また館名が変わった。当初の安田火災東郷青児美術館は見る影もない。「ノルマンディー展」は、北仏ノルマンディー地方を描いた風景画に焦点を絞った、ありそうでなさそうな、でもありそうな展覧会。廃墟、荒天、夕日といったいかにもな舞台設定を好む19世紀前半のロマン主義から、コローやブーダンら無愛想で素っ気ない曇天模様のレアリスムを経て、一気に明るいモネの風景画へ移り変わっていく。その間に海辺が日光浴や海水浴などレジャーの場と化し、娯楽や産業が栄えていくさまが絵からも読みとれる。20世紀になると点描や表現主義が襲い、風景より画家の個性が前面に出てきて絵画が大きく方向転換していく。ノルマンディーという定点を観測するだけで、この一世紀のあいだに絵画にも人々の生活にもモダニズムの大波が押し寄せたことがよくわかる展観だ。しかし最後のデュフィはどこがいいんだかさっぱりわからん。
2014/09/05(金)(村田真)