artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

生誕130年 竹久夢二展──ベル・エポックを生きた夢二とロートレック

会期:2014/08/27~2014/09/08

京都高島屋グランドホール[京都府]

竹久夢二の生誕130年を記念する展覧会。絵画をはじめ、挿絵、口絵、装丁、ポスターおよびそれらの原画や、千代紙や装身具など「港屋」の品々で夢二の人生をたどる。さらに、日仏のベル・エポック開拓者という視点からロートレックと夢二を対比させるという趣向もあり、京友禅の老舗、千總による夢二の画中の衣装の復元もありと、盛りだくさんの充実した展示内容になっている。
それにしても、竹久夢二の衰えぬ人気ぶりには驚かされる。生誕の地、岡山には夢二郷土美術館、滞在したホテルがあった東京・本郷には竹久夢二美術館、たびたび訪れたという伊香保には竹久夢二伊香保記念館、鬼怒川温泉には日光竹久夢二美術館、酒田には竹久夢二美術館と、質や規模、公設私設を問わず夢二の名を冠した美術館が日本中に点在している。たびたび開催される展覧会もつねに観覧者でにぎわっている。わけても今年は記念すべき年、全国四カ所を巡回する本展以外にも、「生誕130年記念 再発見!竹久夢二の世界(竹久夢二美術館)」展や「竹久夢二生誕130年記念 大正ロマンの恋と文(三鷹市美術ギャラリー)」展が同時期に開催されており、小さな夢二ブーム到来といっても過言ではない様相を呈している。
大きな瞳とほっそりしなやかな姿態が印象的な美人画、夢二と絵のモデルとなった実在の女性たちとの艶っぽい関係、「港屋」絵草子店やデザイン事務所・工房「どんたく図案社」(こちらは構想で終わったが)といった多彩な活動、50年間の短い生涯にもかかわらず人々の興味をかき立てるものには困らない。本展でのロートレックとの比較という視点はどうだろうか。ロートレックもまた独特の女性像で知られる画家である。浮世絵に影響を受けたとされる作風にも夢二のそれと相通じるものがある。なによりも、作家自身の存在全体から醸し出される悲しげな哀愁が共通している。つまり、これがベル・エポックの時代感というものであろうか。やはり興味はつきないのである。[平光睦子]

2014/09/08(月)(SYNK)

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ただいま。カーネーションと現代美術。

会期:2014/09/03~2014/09/10

岸和田市立自泉会館 展示室[大阪府]

岸和田城に隣接する瀟洒な近代建築を舞台に、岸和田市とその周辺の出身または在住作家である、稲垣智子、大﨑のぶゆき、永井英男、西武アキラ、吉村萬壱、ワウドキュメントがグループ展を開催した。稲垣と大崎は映像インスタレーション、永井は彫刻、西武は絵画、吉村は小説家である自分の仕事場を再現したかのようなオブジェ、ワウドキュメントは一軒家を移動させるプロジェクトの記録映像を出品。規模こそ大きくないが、それぞれの持ち味がよく出た気持ちのよい展覧会に仕上がっていた。なお、筆者が訪れた日は、有名なだんじり祭りを前にだんじりの試験引きが行なわれており、街中が早くもヒートアップしていた。美術展と祝祭を一度に味わえ、2倍得した気持ちであった。岸和田といえばだんじり祭りが有名だが、同時に岸和田は歴史のある城下町であり、市内の至る所に古い和洋の建築物が残る文化的な土地柄でもある。そうした岸和田のもうひとつの顔を対外的に認知してもらうためにも、本展のようなイベントは有効だ。地元民と行政がそのことに気付いてくれれば、本展は大成功と言えるのだが……。

2014/09/07(日)(小吹隆文)

プレビュー:セイアンアーツアテンションVOL.6「私の神さま|あなたの神さま」

会期:2014/10/03~2014/11/23

成安造形大学【キャンパスが美術館】、三井寺、ホテルアンテルーム京都[滋賀県、京都府]


成安造形大学【キャンパスが美術館】による、学内での企画展シリーズの新たな展開。森美術館の椿玲子をキュレーターに迎え、学内外の複数の会場を使った大規模な展覧会だ。参加作家は、飯川雄大、金氏徹平、久門剛史、前田征紀、森千裕、アレクサンドル・モベール、ステファン・ドゥ・メデロスとさまざまに第一線で活躍する気鋭の作家が中心。それに加えて、学生15人の名前も併記されている。テーマは現代における信仰のかたち。近江の地を背景に、神さまのかたち、ひいては美術というもののかたちを考えるものとして行われる。

2014/09/07(日)(松永大地)

プレビュー:トンネルビジョン

会期:2014/09/26~2014/10/05

KUNST ARZT[京都府]

作品自体の見える角度や状況、作品が置かれた空間、風景がテーマとなった、美術作家の桝本佳子による企画展。今村遼佑、角田広輔、清田泰寛、桝本佳子という、手法もさまざまな気鋭の関西の若手作家があつまっているのも興味深い。

2014/09/07(日)(松永大地)

プレビュー:窓の外、恋の旅。

会期:2014/09/27~2014/11/30

芦屋市立美術博物館[兵庫県]

窓とは枠組みであり、日常を象徴している。ありふれてはいるが、風景をテーマとしたときに採用する言葉としては、シンプルであるが、そこに「恋」という言葉の若々しさ、瑞々しさが加わることで、テーマにいっそう深みと想像力を提供している。谷川俊太郎の詩を軸に、下道基行、林勇気、ヤマガミユキヒロの若手3名を紹介、同美術館のコレクションより、小出楢重、ハナヤ勘兵衛、村上三郎、吉原治良などの作品も交えて構成されるよう。

2014/09/07(日)(松永大地)