artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

松山賢「ミニミニスキャット」

会期:2014/09/03~2014/09/26

NAKAMEGURO SPACE M[東京都]

久々にエロ満開の松山作品を見た。といっても旧作だが。ギャラリー内はいくつかに仕切られて壁紙が貼られ、なかに貧乳と巨乳のマネキンが鎮座している。80年代を風靡した「のぞき部屋」だろうか。そのマネキンをポスター化した作品や壁紙のパターンを描いた絵も飾ってある。あとはオッパイの絵と女性ヌードのトルソ。現在の絵画意識の高い知的な作品もいいが、こういうドエロ満開の旧作も捨てがたい。不思議なのは新旧の作品が違和感なくつながってることだ。

2014/09/16(火)(村田真)

橋本満智子 展「孕む青」

会期:2014/09/12~2014/09/20

艸居[京都府]

白い素地と青のコントラストが印象的な陶芸作品。花をモチーフにしたオブジェと、花入などの器を出品していた。前者は蕾から開花までの花の状態を手びねりで表現しており、大胆さ、豪快さ、力強さを感じる造形と、胴体の窪んだ部分に見られる青の釉薬が鮮烈であった。一方器は、粘土の小さな塊を積み上げて成形しており、表面には石垣のような模様が残っている。その模様部分に青の釉薬が広がっているのだが、オブジェとは対照的にきわめて繊細な表情を見せており、筆者自身はオブジェ以上に魅力を感じた。

2014/09/16(火)(小吹隆文)

カタログ&ブックス│2014年9月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

磯崎新Interviews 磯崎新1954-2014 建築-芸術 - 批評をめぐる闘争と展開 -

著者:磯崎新、日埜直彦
発行:LIXIL出版
発行日:2014年08月29日
サイズ:21.6 x 15.4 x 2.9 cm 、372頁

建築家として第一線にありながら、また傑出した建築理論家として、戦後建築に圧倒的な足跡を残す磯崎新。磯崎が建築家として出発した1954年から現在までの活動を、気鋭の建築家、日埜直彦が詳細に追跡したインタヴュー集。このインタヴューは磯崎の時々の作品と言説をテーマ、トピックス別、クロノロジカルに整理しつつ、また時に逸脱もしながら2003年からほぼ10年をかけて行なわれた。戦後建築史のみならず、現代建築と隣接するアート領域でのムーヴメントを語る上でも貴重な証言となっている。[LIXIL出版サイトより]


必然的にばらばらなものが生まれてくる

著者:田中功起
発行:武蔵野美術大学出版局
発行日:2014年09月09日
サイズ:A5判変型、288頁

ヴェネチア・ビエンナーレのコラボレーション(協働作業)とコレクティヴ・アクト(集団行為)から1998 年の初期の映像作品まで、現在から過去へ年代順に遡り、27 のテーマに分けて「作品」と「制作行為」を具体的に論じた書き下ろしテキストを収録。 また展覧会カタログや美術雑誌への寄稿のほか、2000 年に野比千々美名義で発表した評論を再録。東京国立近代美術館キュレーターの蔵屋美香、美術家の藤井光、評論家の林卓行との対話も収録し、アーティスト田中功起の真髄に迫る。[武蔵野美術大学出版局サイトより]


Under 35 Architects exhibition

著者:伊藤友紀、岩田知洋、山上弘、植村遥、魚谷剛紀、高栄智史、長谷川欣則、細海拓也
発行:特定非営利活動法人アートアンドアーキテクトフェスタ
発行日:2014年09月04日
サイズ:A5判、98頁

9月4日から10月4日まで、 大阪・南港 ATC ODPギャラリーで開催されている同展(「35歳以下の新人建築家7組による建築の展覧会」)の展覧会カタログ。ゲスト建築家の伊東豊雄へのインタヴュー、五十嵐淳、五十嵐太郎、石上純也、平沼孝啓、藤本壮介、吉村靖孝による寄稿、倉方俊輔による出展者へのインタビューなどを展覧会記録とともに掲載。

NATURAL ARCHITECTURE NOW ナチュラル アーキテクチャーの現在 

著者:FRANCESCA TATARELLA
発行:ビー・エヌ・エヌ新社
発行日:2014年07月30日
サイズ:12.8 x 18.8 x 1.9cm 、224頁

2006年(日本語版は2008年)に出版された『ナチュラル アーキテクチュア』の第二巻。24組のアーティストによる現地調達できる低コストの自然素材と簡単な技術で構築したパビリオン、展望台、シェルター等を豊富な写真やスケッチで紹介。環境、景観、コミュニティの課題をテーマにした、建築やインスタレーションの実験的な取り組みの実録。


Switch別冊 札幌国際芸術祭 2014 OFFICIAL GUIDEBOOK

発行:スイッチ・パブリッシング
発行日:2014年07月01日
サイズ:A4判変型、144頁

7月19日から9月28日まで、札幌市内各所で開催されている「札幌国際芸術祭 2014 都市と自然」の公式ガイドブック。ゲストディレクター坂本龍一によるイントロダクションと出品作家へのインタビュー、作品紹介、D&DEPARTMENT HOKKAIDO by 3KGの編集による観光グルメ案内「札幌の観光をデザインの視点で考える」の頁等によって構成。


2014/09/16(火)(artscape編集部)

現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展

会期:2014/09/06~2014/10/26

名古屋市美術館[愛知県]

巡回展なので、東京国立近代美との見せ方の違いが興味深い。例えば、中国近代美術のセクションは二階の後半に移動し、逆にリヒター、杉本博司、シュトゥルートらの作品が早めに登場する。また東京が明快に空間として各部屋を分節していたのに対し、名古屋では既存の可動間仕切りを使いながら、各セクションはゆるやかに連続していく雰囲気だった。

2014/09/14(日)(五十嵐太郎)

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「これからの写真」展、APMoAプロジェクト・アーチ

会期:2014/08/01~2014/09/28

愛知県美術館[愛知県]

メディアで騒がれただけに、鷹野隆大の裸体表現とその対処が話題になりがちだったが、他の作品も充分に興味深い。被災を題材とする新井卓や田代一倫。また鈴木崇、木村友紀、田村友一郎らは、空間や場をつくり、写真の枠組を超える試みだった。とくにモノそれ自体の高解像度の写真を1/1のスケールでモノに張りつけて、表面に対する認識の揺らぎをもたらす、加納俊輔が印象的だった。また常設のエリアでは、美術館があいちトリエンナーレ2010と2013で展示された志賀理江子の写真25点を新規購入したが、黒いフレームに入れ、これまでのインスタレーション的な見せ方とは装いを変えて展示している。APMoAプロジェクトでは、末永史尚が県美の作品をもとに、額縁までを含めた絵画(しかし、絵の中身は表現せず)を制作する。大塚国際美術館の額縁効果を思いだし、ニヤリとさせられる。


鈴木崇《BAU group》展示風景

2014/09/14(日)(五十嵐太郎)

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