artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
プレビュー:「ただいま。カーネーションと現代美術」プレ展
会期:2014/07/08~2014/07/12
Calo Bookshop & Cafe/ Calo Gallery[大阪府]
今年9月3日~10日に岸和田市立自泉会館で行われるという、岸和田市やその周辺の出身/在住の現代美術アーティスト5人を紹介する展覧会のプレ展。
稲垣智子、大﨑のぶゆき、西武アキラの美術作家3名に加えて、芥川賞作家の吉村萬壱による出品も(9月の本編では永井英男も出品)。現代美術家+小説家という組み合わせも興味深いが、それぞれ海外での発表も多い作家ばかりで、それゆえに、客観的なテーマとして、ホーム(南大阪)がテーマとなるのだろう。最終日には出品作家によるトークショーが開催される。
2014/06/15(日)(松永大地)
プレビュー:バルテュス展
会期:2014/07/05~2014/09/07
京都市美術館[兵庫県]
6月22日まで、東京で開催されているバルテュスの没後初の回顧展が京都に巡回する。紹介されるのはメトロポリタン美術館、ポンピドゥー・センターをはじめ、世界各地から集められた初期から晩年までの油彩画40点以上と、素描、愛用品などの100点あまり。バルテュスといえば、チラシにも掲載されている《美しい日々》や、《夢見るテレーズ》など、少女を描いた作品がまず思い浮かぶが、今展では浮世絵の影響がうかがえる《 朱色の机と日本の女 》、歌舞伎に着想を得たという《 トランプ遊びをする人々 》など、日本との関わりを示す作品も展示される。初期から晩年までの作品をとおして創作の変遷とその背景をたどる今展、スイスのロシニエールにあるアトリエの再現展示なども含め、見どころが多く見逃せない。
2014/06/15(日)(酒井千穂)
プレビュー:林勇気 展「光の庭ともうひとつの家」
会期:2014/06/21~2014/07/13
神戸アートビレッジセンター 1F/KAVCギャラリー[兵庫県]
自分で撮影したり、インターネット検索で集めた膨大な写真をひとつずつ切り抜き合成する独自の手法でアニメーションを制作している林勇気。もうすぐ始まるその個展が面白そうだ。今展では一般から募集したアンケートをもとに、建築家のNO ARCHITECTSが回答者の理想の家を設計、そしてインターネットから見つけ出した写真データを素材に林が「光の庭」という架空の場所の映像を制作している。アンケートの回答者はその映像のなかに建てられた「もうひとつの家」を500円で購入し「光の庭」の住人となる。インターネット上にも“課金”して家を建てるゲームがあるが、現実の金銭で仮想世界のモノや場所を手に入れるという感覚やそのようなゲームの世界を可視化した今回の作品からは、ネットを介した他者とのつながり、コミュニケーションの有り様など連想も喚起されそう。
2014/06/15(日)(酒井千穂)
おかざき乾じろ個展
会期:2014/06/06~2014/06/15
ギャラリー nowaki[京都府]
「おかざき乾じろさんの個展が京都(近所)で開かれていますよ。」と京都在住の作家さんが知らせてくれて足を運んだ会場は、私は初めて訪ねるギャラリーだった。京都らしい古い町屋の佇まいの建物。普段は絵本作家の個展や陶芸の展示を行なっているのだそう。小説家の福永信さんが企画し、実現に至ったという今展、畳敷きの部屋の壁面に並んでいたのは箱で額装された「ポンチ絵」。ユルくかわいらしいらくがきのような絵が色鉛筆で描かれている。支持体は薄い方眼紙だが、無秩序に破かれた紙と描かれた対象が部分的に重なっているから全体は立体的でもあり、いろいろな角度から線や面を見ると意外な空間の広がりも感じられて面白い。いくつもの謎解きが潜んでいるのも感じるが、何かを探ろうと構えなくてもいい、気持ちのいい作品だった。
2014/06/14(土)(酒井千穂)
国際現代アート展なら2014:後期特別展 美の最前線・現代アートなら~素材と知の魔術(マジック)~
会期:2014/06/14~2014/07/21
奈良県立美術館[奈良県]
滅多に現代美術を扱わない奈良県立美術館が、今年はすでに2度も現代美術展を行なっている。その第1弾は、CCGA所蔵の版画の名品を紹介した「アメリカ現代美術の巨匠達」(4月~5月)であり、第2弾で、奈良とゆかりのある現代美術作家7名(ふじい忠一、竹股桂、森口ゆたか、絹谷幸太、三瀬夏之介、菊池孝、下谷千尋)を紹介するのが本展である。会場は一人あたりの展示面積が広く設定されており、どの作家も力の入った展示を見せてくれた。特に三瀬夏之介と下谷千尋の展示は迫力があった。ふじい忠一の巨木を捻じ曲げた立体も観客を驚かせたのではないか。また、菊池孝は過去の作風とは異なる展開を見せており、興味深く鑑賞した(私が久々に彼の作品を見たせいかもしれないが)。同館が現代美術に積極的になった背景には、全国各地で隆盛する地域型アートイベントが影響しているのかもしれない。1、2度の実績で性急に判断するのではなく、長期的な視点で現代美術展を継続してほしい。
2014/06/14(土)(小吹隆文)