artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

フランス印象派の陶磁器1866-1886──ジャポニスムの成熟

会期:2014/04/05~2014/06/22

パナソニック汐留ミュージアム[東京都]

北斎漫画から絵柄をパクったブラックモンの絵付け皿をはじめとするジャポニスムな陶磁器の展示。いまそんなことやったら著作権侵害で日仏の外交問題に発展しかねないけど、もう150年近くも前の話だから、逆にフランス美術に影響を与えたと優越感に浸る日本人のほうが多いに違いない。ジャポニスムではないが、まるで油絵のような鮮やかな色彩と筆触が再現されるバルボティーヌと呼ばれる技法の壷も出ている。これは油絵を描くように絵付けするため、描きやすいように壷も四角く扁平なかたちをしているのが興味深い。壷がタブロー化してるのだ。ところで、陶磁器そのものは印象派と直接関係ないのに、「フランス印象派の陶磁器」と銘打っているのは客寄せのためか。たしかにブラックモンは第1回印象派展に参加してるけど、そのとき出したのは銅版画だったし。その帳尻合わせか、モネ、ルノワール、ピサロ、シスレーら印象派の絵画も申しわけ程度に展示されていた。

2014/04/17(木)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00020721.json s 10099154

椿会展2014──初心

会期:2014/04/10~2014/05/25

資生堂ギャラリー[東京都]

赤瀬川原平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子の5人展。幅広い世代の絵画、写真、インスタレーションなどの発表だが、見てよかったと思えるのは赤瀬川と畠山の作品。赤瀬川はクラシックカメラを克明に写生した鉛筆画90点を並べている。カメラ雑誌の連載エッセイのために描いたイラストで、これだけ並ぶと壮観だ。フリーハンドながら細部までナメるように丹念に描かれ、機種名や部品名なども記されていて、カメラへのフェティッシュな愛情を感じさせる。オタク老人の面目躍如。畠山は人けのない山間部で撮った送電鉄塔の写真を出品。とくにスイスの山奥に打ち捨てられた鉄塔の残骸写真は、自然のなかで組み立てた鉄骨によるインスタレーションの記録写真のようで、幻想的ともいえる奇妙な空気感が漂う。若いアーティストとは経験値の差を感じてしまう。

2014/04/15(火)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00025418.json s 10099153

光風会100回展記念「洋画家たちの青春──白馬会から光風会へ」

会期:2014/03/21~2014/05/06

東京ステーションギャラリー[東京都]

日本初の洋画家の団体である明治美術会から、外光派の新風を吹き込んだ黒田清輝らが独立して白馬会を設立し、その白馬会の解散後に立ち上げたのが光風会だ。いわば美術団体の老舗であり、その公募展の100回を記念する展覧会。ひととおり見た印象は「堅実」のひとこと。といえば聞こえはいいが、マジメだけどおもしろみがないということでもある。個人で芸術を追求するより、団体として高めていこうという姿勢が勝ってる。裏返せば、個人の突出を嫌う。こうした体質こそが日本の美術団体のいちばんの問題点ではないか。でもほかの団体に比べれば光風会はまだいいほうかもしれない。

2014/04/15(火)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00025121.json s 10099152

「Over the IAMAS──イアマスを超えて」#1 原寿行 -Eye-展

会期:2014/04/15~2014/04/20

galerie 16[京都府]

2013年に第16回岡本太郎現代芸術賞特別賞を受賞した作品で、各地で発表されて気になっていた作品を偶然見ることができた。美しい映像、美しい装置で、淡々と画面で行なわれる実験。ブタの目玉から水晶体を取り出し、レンズに当てはめて、そこから見える風景(失われていく風景)を観察するもの。透明だった水晶体は時間を追うごとに乾燥し、最終的には白い粒となり、映像も失われてしまう。死の先にある世界が映すものといったような科学のロマンチックな部分が、美術というフィールドで検証されることでまた新しい意味を持ってくるんだなあ。

2014/04/15(火)(松永大地)

フィンランド現代美術 はるかな大地の色とかたち

会期:2014/04/15~2014/04/26

楓ギャラリー[大阪府]

北欧のフィンランドから7名のアーティストが来阪、同国の現代美術を紹介した。作品は、版画、彫刻、ガラス、レリーフなど多彩で、どの作品にも大らかさと洗練が同居しており、日本の現代美術とは明らかに雰囲気が異なる。筆者のお気に入りは、トゥッカ・ペルトネンのフィンランドの情景から着想した木版画、アルマ・ヤントゥネンの盆栽を思わせるガラス作品、オッリ・ラトゥの素朴な風合いの木彫レリーフ。ほかにも国際的に活躍している作家が数名含まれており、彼らと街中の画廊で身近に接することができた。なお、本展の開催に当たっては、画家の森井宏青と山縣寛子の長年にわたる北欧との交流が背景にあり、本展出品作家のひとりでもあるオッリ・ラトゥがフィンランド側のキュレーターを務めた。

2014/04/15(火)(小吹隆文)