artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

カタログ&ブックス│2014年4月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展 カタログ

執筆:高松次郎(再録)、赤瀬川原平(再録)、中西夏之(再録)、和泉達、刀根康尚、小杉武久、飯村隆彦、久保田成子、山田諭、光田由里、椎名節
発行:「ハイレッド・センター」展実行委員会
サイズ:28.5×21.8cm、239頁

2013年11月9日から12月23日まで名古屋市美術館で、2014年2月11日から3月23日まで渋谷区立松濤美術館で開催された、「ハイレッド・センター:『直接行動』の軌跡」展のカタログ。
戦後美術の坩堝であった読売アンデパンダン展が崩壊した1963年、三人の若き前衛芸術家(高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之)によって、ハイレッド・センターは結成されました。...記念すべき結成50周年に開催する本展では、HRCが発行した印刷物やイベントの記録写真をはじめとして、主要メンバーの同時期の作品も含めて、ハイレッド・センターの「直接行動」の軌跡を紹介します。[名古屋市美術館サイトより]


Magazine for Document & Critic: AC2 No.15

編集・発行:青森公立大学 国際芸術センター青森(ACAC)
発行日:2014年3月25日
サイズ:256×167mm、126頁

国際芸術センター青森が、2001年の開館以来、およそ毎年1冊刊行している報告書を兼ねた「ドキュメント&クリティック・マガジン エー・シー・ドゥー」の第15号(通巻16号)。2013年度の事業報告とレビューのほか、関連する対談や論考などを掲載。







S-meme Vol.7 仙台文学・映画の想像力

発行:せんだいスクール・オブ・デザイン
発行日:2014年2月23日
サイズ:四六判

仙台から発信する文化批評誌『S-meme』の第七号が完成しました。今回はテーマを「仙台文学・映画の想像力」とし、...仙台の文学と映画をテーマに様々なコンテンツを収録しています。
また、今回の装幀では「ひっくり返して二面読める本」に取り組みました。本としての挙動がスムースであることはもちろん、蛇腹を活かしてページを広げて読むこともできますし、机に置いて読む時のページが立ち上がるようなちょっとした挙動は普通の本と違っていて、新鮮に受け取って戴けるのではないかと思います。ミシン目は型抜きで施しており、意味の無いように見える場所にあるミシン目は型代を減らすために背表紙の部分の型を使い回してできたいわば「盲腸」です。蛇腹の張り合わせは受講生が自ら手で行ない一冊一冊仕上げています。[せんだいスクール・オブ・デザインサイトより]


ようこそ建築学科へ! 建築的・学生生活のススメ

監修:五十嵐太郎
編著:松田達・南泰裕・倉方俊輔・北川啓介
価格:本体1,800円+税
発行所:学芸出版社
発行日:2014年4月1日
サイズ:四六判、216頁

建築学科と言っても大学、高専、専門学校、住居系、芸術系、工学部系はどう違う?そんな学科紹介に始まり、授業と課題に取組むツボや“建築的”日常生活、学外での建築体験、そして将来設計まで、知れば知る程のめり込む、ハードだけどハッピーな建築学生ライフのススメ。学生生活のあらゆる場面でためになるアドバイス満載。[学芸出版社サイトより]


嶋田厚著作集(全3巻)

著者:嶋田厚
解説:水越伸(第1巻)、柏木博(第2巻)、嶋田厚(第3巻)
価格:本体6,300円+税(分売不可)
発行所:新宿書房
発行日:2014年3月30日
サイズ:四六判、全3巻(箱入り)、総頁1,056頁

コミュニケーション論、文学、社会学、また芸術やデザインをめぐる思想史の領域で、独特の学際的、越境的な仕事を残してきた嶋田厚(1929〜)の自選著作集。第1巻:『生態としてのコミュニケーション』、第2巻:『小さなデザイン 大きなデザイン』、第3巻:『明治以降の文学経験の諸相』自筆略年譜、著作一覧付き。[新宿書房サイトより]

2014/04/15(火)(artscape編集部)

プレビュー:KYOTOGRAPHIE 国際写真フェスティバル 2014

会期:2014/04/19~2014/05/11

京都文化博物館 別館/京都駅ビル7階東広場/龍谷大学大宮学舎本館/ASPHODEL/誉田屋源兵衛 黒蔵/虎屋 京都ギャラリー/無名舎/下鴨神社細殿/嶋臺(しまだい)ギャラリー/有斐斎 弘道館/アンスティチュ・フランセ関西/京都芸術センター/無鄰菴/村上重ビル/鍵善寮(全15カ所)[京都府]

“伝統文化と現代アートの融合”を図る国際写真フェスティバルとして、昨年よりはじまったKYOTOGRAPHIE。国内外より選抜された写真家の作品が京都らしい佇まいの京町屋や世界遺産の寺院にて展示される。今年のテーマは「Our Environments──私たちを取り巻く環境」。身近な題材から宇宙規模のテーマまでさまざまな環境を意識させる写真が発表される。出品作家は、高谷史郎、瀧澤明子、西野壮平、広川泰士、ワーナー・ビショフ、ティム・フラック、スタンリー・グリーン、ダイアナ・ヴリーランド、アンヌ・ドゥ・ヴァンディエール。ワークショップやアーティストトークなどの関連イベントも盛りだくさんなのでカレンダーをチェックして出かけるのが良さそう。

2014/04/14(月)(酒井千穂)

プレビュー:てんとうむしプロジェクト05「NEW HOME」

会期:2014/04/11~2014/05/11

京都芸術センター[京都府]

日頃より京都芸術センターの業務に携わるボランティアスタッフが主体となってアーティストと共同で企画から運営までを行なうアートプロジェクト。5回目を迎える今回、招聘されたアーティストは、鑑賞者が直に体験しながら楽しむことのできる作品を多く手がけている東明と、「コジマラジオ」「町中アート大学」などの活動でも知られる毛原大樹。さまざまな立場の人との新たな出会い、新たなつながりを生み出そうという試みのなかでも、同センターに関わるボランティアスタッフのまなざしがいつも感じられるプロジェクト。今回も面白そうだ。

2014/04/14(月)(酒井千穂)

松本清志のWONDER LIFE SCORE──音とオブジェ/表現の王国

会期:2014/04/09~2014/04/13

大倉山記念館ギャラリー[神奈川県]

2年前に亡くなったマツキヨこと松本清志をしのぶ追悼展。マツキヨは本来チェリストだが、1980年前後から電子音やオブジェを用いたパフォーマンスを発表。ぼくは、パフォーマンスアーティストで後に国際芸術センター青森の館長を務めた浜田剛爾さんを通じて知り合い、浜田さんのパフォーマンスやピアニスト島田璃里さんのコンサートで共演する彼の演奏に接してきた。そのムーミンのような体型と温厚な性格は、とげとげしいヤツが多かった当時のアヴァンギャルドの世界では希少で、多くの人たちに慕われていたものだ。追悼展では80年代のチラシやリーフレット、記録写真、ビデオなどをとおしてマツキヨの仕事を振り返ってる。もう長いこと音信不通だったため彼の死はつい最近まで知らなかったが、今回ぼくも写ってる写真を公開するため奥さんの里美さんがぼくを探し当て、知らせてくれた次第。30年前のぼくが若いマツキヨと一緒に写っている。

2014/04/12(土)(村田真)

菱田雄介『2011』

発行所:VNC

発行日:2014/03/08

菱田雄介は2011年3月22日、東日本大震災発生から12日目に被災地に入った。気仙沼の中学校の10日遅れの卒業式や、被害が大きかった石巻門脇地区の状況などを撮影し、その10日後に手づくり写真集『hope / TOHOKU』を完成させる。たまたま渋谷の書店でそのうちの一冊を手にした筆者は、彼が「撮らなければならない」という衝動に突き動かされつつ、あくまで冷静に自問自答を重ねて、これほど早い時期にしっかりとした写真集をまとめ上げていることに衝撃を受けた。それらの写真群は、僕自身が書き綴っていた文章と併せて、のちに共著『アフターマス 震災後の写真』(NTT出版、2011)として刊行されることになる。
だが菱田はこの時期、震災の写真だけを撮影していたわけではない。すでに数年前から、テレビディレクターとしての忙しい仕事の合間を縫って海外取材を積み重ねていたのだが、その頻度と集中力がこの年には異様なほど高まってくるのだ。本書はその彼の『2011年』の行動の軌跡を、文章と写真とでもう一度振り返った600ページを超える大著である。1月のチェルノブイリ取材から始まって、北朝鮮と韓国で同じような状況の人物たちを対比して撮影する「border/korea」のシリーズのために何度か両国に入り、大洪水を撮影するためタイを、「アラブの春」の取材のためにチュニジアを訪れるなど、なんとも凄まじいスケジュールをこなしている。
そうやって見えてきたのは、2011年こそ「振り返ってみれば、あれが転換点だったと思える年」だったのではないかということだ。この認識が正しいのか間違っているのかは、もう少し時が経たないとわからないだろう。だが、菱田のまさに体を張った思考と実践の集積を目にすると、そのことが強い説得力を持って伝わってくる気がする。
歯切れのいい文章で一気に読ませるが、巻末に32ページにわたって掲載された写真に、菱田の写真家としての能力の高さがよく表われていると思う。決して押しつけることなく、だが何かを強く語りかけてくる写真群だ。

2014/04/11(金)(飯沢耕太郎)