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美術に関するレビュー/プレビュー

アール・ブリュット☆アート☆日本

会期:2014/03/01~2014/03/23

ボーダレス・アートミュージアムNO-MA+近江八幡市内[滋賀県]

滋賀県近江八幡の伝統的建造物保存地区にあるアール・ブリュット(アウトサイダー・アート)の専門館、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAが開館10周年を迎え、市内6カ所の会場に日本と台湾の500点を超すアール・ブリュット作品を展示している。あいにくの小雨だが、駅前で自転車を借りてまずはNO-MAへ。伝統的な和室に絵や陶芸が置かれているが、アール・ブリュット特有の濃密さや荒唐無稽ぶりに欠ける作品があるなあと思ったら、日比野克彦の作品だった。日比野ではかなわないか。ほかにヴェネツィア・ビエンナーレにも参加した澤田真一、台湾の林 萱の出品。以下、元呉服屋だったという奥村邸では、女性器や乳房をオブセッショナルに描いた 万里絵、糸を切って結んでつなげていく作業を繰り返す似里力ら、旧造り酒屋のまちや倶楽部では、紙を継ぎ足して約10メートルにもなった画面に建物や戦車や観覧車などを描き続けている古久保憲満、飛行中の飛行機の絵だけに執着する西澤彰ら、築100年の旧吉田邸では、カラーボールペンで広告チラシみたいなクセのあるイラストを描いてる中田勝信、さまざまなバリエーションのサトちゃん人形を集めた横山篤志ら、元材木商のカネ吉別邸では、雑誌やチラシを何百枚もコラージュしてるうちに立体になってしまったという金崎将司、何十年も前の記憶を元に歪んだ遠近法で子供時代の室内風景を描く秦野良夫ら、そして瓦の博物館かわらミュージアムでは6人の台湾の作品が展示されている。凡人の予想をはるかに超える作品もさることながら、100年を超える展示空間のアウラも身に染みて日常では得がたい体験だった。

2014/03/01(土)(村田真)

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玉本奈々 向き合う時間

会期:2014/02/28~2014/03/12

枚方市立サンプラザ生涯学習市民センター 市民ギャラリー[大阪府]

画面に布やガーゼ、衣服などを貼り込み、鮮烈な色彩とともに表現することで、生命感あふれる空間をつくり出す玉本奈々。彼女の大規模な個展が、現在の居住地である大阪府枚方市の公立ギャラリーで行なわれた。枚方市では、昭和14年3月1日に旧陸軍火薬庫の爆発事故が起きたことから、同日を「枚方市平和の日」に定めており、毎年さまざまな記念事業が行なわれている。本展もその一環として企画されたが、展覧会自体にイデオロギー色は薄く、彼女の作品に備わる生命礼賛的な要素をクローズアップしたものとなった。出品作品数は36点。新作、近作が中心だったが2000年代初頭の初期作品も含まれており、モチーフや色使いなど彼女の画業の変遷が伝わる構成となった。玉本作品を見慣れない者にとって、格好の入門編となったであろう。また、本展のために地元の小中学校、養護学校と行なったワークショップの記録映像と作品も展示されていた。玉本自身、この経験には感じるところがあったようで、今後の制作になんらかの影響を与えるかもしれない。

2014/02/28(金)(小吹隆文)

大阪成蹊大学芸術学部卒業制作展(環境デザイン学科 美術学科)

会期:2014/02/19~2014/02/23

大阪成蹊大学[大阪府]

大学構内で開催された大阪成蹊大学芸術学部の卒業制作展。第一期の情報デザイン学科の発表は見逃してしまったが、第二期の環境デザイン学科、美術学科の学生の作品展示へ足を運んだ。数は少ないのだが、それだけに心なしか各々の個性が目立ちやすくこちらが一点ずつを見る時間も長くなる。日本画、洋画、環境デザイン学科、どちらにもこの制作展に向けた学生たちの気概が感じられ、今後の活躍を期待したいものが多くあった。じつは美術学科は、さきに卒業制作展のプレ展示となる「四回生展」も大阪府立江之子島文化芸術創造センターで開催している。この1カ月のあいだにずいぶんと磨きがかかったと感じたのは布生紗己の風景画。印象的で、私のほうも嬉しく思った。さらに見て良かったのは会場から徒歩数分の場所にある「アトリエ棟」で同時開催されていた1~3年生の制作展。学生たちの日頃の学びの成果や授業の様子がうかがえる同様の展示はほかの大学でも行なわれているが、こちらは学生たちがそれぞれの展示スペースで自分の学年の作品について案内をしてくれたのが嬉しい。ただ展示するだけではなく「見てもらうこと」をここで実感できるのが楽しいと話していた一人の一年生の言葉が記憶に残る。また来年も開催されたらぜひ行きたい。


美術学科


デザイン科


美術学科1年生授業内制作の展示会場

2014/02/28(金)(酒井千穂)

「驚異の部屋 京都大学ヴァージョン」東京展

会期:2013/11/01~2014/05/25

インターメディアテク[東京都]

JPタワー学術文化総合ミュージアムのインターメディアテクへ。今回の特別展示は、「驚異の部屋 京都大学ヴァージョン」である。やはり、ここは東京大学のコレクションによるモノ自体も面白いが、巨大なスペースといい、カッコいい展示の手法といい、日本離れしたミュージアムの雰囲気だ。吉田鉄郎の設計した東京中央郵便局のスケール感を生かしつつ、写真や旧建物の窓枠などを活用しながら、その建物の記憶も展示している。

2014/02/27(木)(五十嵐太郎)

プライベート・ユートピア ここだけの場所──ブリティッシュ・カウンシル・コレクションにみる英国美術の現在

会期:2014/01/18~2014/03/09

東京ステーションギャラリー[東京都]

東京ステーションギャラリーの「プライベート・ユートピア」展へ。あいちトリエンナーレ2013に出品したコーネリア・パーカーも、地図を加工する作品で参加している。サブタイトル通り、小さな作品が多いが、コンパクトにブリティッシュ・カウンシルのコレクションを通じて、イギリスの現代美術を概観できる内容だった。ポップやアイロニカル、あるいはアイデンティティや風景の表現によって、日本とは違う、お国柄を感じられる。ブリュッセルで見た、サブカルチャーと接続するジェレミー・デラーの個展を思い出す。

2014/02/27(木)(五十嵐太郎)

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