artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

吉本新喜劇×ヤノベケンジ

会期:2014/02/14~2014/02/16

よしもと祇園花月[京都府]

美術家のヤノベケンジが吉本新喜劇とがっぷり四つに組んだ、きわめてレアな、そして関西的な特別公演。物語の舞台は、大阪万博目前の1970年の大阪と、2度目の東京オリンピックを控えた2020年の東京。原子力エネルギーへの言及(架空の「ニュー・クリア・エナジー」に置き換えられた)や、アトムスーツを着用した池乃めだか(似合いすぎ!)が活躍するなど、ヤノベ色の強い世界観を背景にしながらも、全体的なテイストは吉本新喜劇そのものだった。ヤノベのメッセージが果たしてどこまで伝わったのか不明だが、分の悪い勝負を引き受けた彼の勇気は称賛に値する。あえて苦言を呈すると、中盤あたりで場面転換が相次ぎ、少々中だるみが感じられた。上演時間約2時間半(途中休憩含む)の長尺だったが、もう少しコンパクトにまとめられたのではなかろうか。また、アートファンとしては、もっと過激にヤノベ色を打ち出してほしかったという気持ちもある。ただ、水と油のようなアートとお笑いを融合させる試み自体は画期的であり、その目撃者になれたことを幸運に思う。

2014/02/15(土)(小吹隆文)

プレビュー:梅田哲也「0才」(大阪市現代芸術創造事業 Breaker Project「ex・pots 2011-2013」)

会期:2014/02/22、23、28、03/01、02、07、08、09

山王郵便局横 空き地[大阪府]

新世界や西成区にてアートプロジェクトを行なうブレーカーブロジェクトが2011年から継続しているプログラム。梅田哲也、呉夏枝、山田亘、大友良英が取り組んできた活動の集大成。梅田哲也は西成区を舞台に、日常の風景に作品を展開し、それを遊覧しながら体験する展覧会となるようだ。鑑賞者は2時間で会場を巡る途中、非日常な仕掛けやゲストのパフォーマンスに遭遇する。ゲストは會田洋平、アキビンオオケストラ、捩子ぴじん、ハイネ・アヴダル&篠崎由紀子、松井美耶子、渡邉寿岳、ほか秘密(!)。鑑賞は要予約。

2014/02/15(土)(松永大地)

プレビュー:ミヒャエル・ボレマンス展

会期:2014/02/20~2014/02/25

臨済宗 建仁寺塔頭 両足院 水月亭[京都府]

原美術館などでの展示も話題のベルギーの画家、ミヒャエル・ボレマンスが京都でも展覧会を開催する。「もしも圧倒的な技術、表現力を有し、異なる文化を背景にもつ現代アーティストが、寺社の襖絵や調度品を現地で制作すると、どのように心に伝わるのか?」。墨絵による作品を展開するという、またとない機会となりそうだ。

2014/02/15(土)(松永大地)

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プレビュー:CITY IN MEMORY──記憶の街

会期:2014/03/01~2014/03/22

堀川団地[京都府]

戦後、全国初の店舗付集合住宅であり、京町屋をモデルに設計された個性的な空間がかつては多くの人達の憧れだったという堀川団地。BEPPU PROJECTの山出淳也氏の指導のもと、12名のアーティストが企画運営に携わり、築60年以上というこの歴史ある団地を舞台に「場所の記憶」をテーマにした“体験の場”をつくりあげる。作家達は昨秋より団地に実際に滞在したり住民と交流をはかりながら、この団地の“記憶”を、それぞれに見つめてきた。開催期間中、団地のなかには彼らが触れてきた団地の“記憶”を集めた「記憶の部屋」と「記憶の倉庫」が出現する。1日1名のみ滞在できる「記憶の部屋」は完全予約制ですでに空きはないのだが、「記憶の倉庫」のほうは当日受付で(定員7名/各回約30分)体験できる。本プロジェクトの参加作家はAT PAPER(金成基、國政聡志、中望、三重野龍)、井上大輔、菊川亜騎、谷澤紗和子、谷本真理、野原万里絵、朴星桓、前川紘士、矢津吉隆。

2014/02/15(土)(酒井千穂)

九鬼みずほ個展「ただの置物、絵画まで」

会期:2014/02/11~2014/02/16

KUNST ARZT[京都府]

小さなギャラリーの壁にしつらえた棚に、人形や植物など約600体の小さな置物が並べてある。置物はどれも高さ10センチ前後で、人か草花か判別できる程度にざっくり造型され、彩色されている。脇のサブギャラリーにはその置物を描いたドローイングが飾られ、ちょっと尋常ならざるものを感じるなあ。作品ファイルを見ると、以前からモコモコした地蔵みたいなものをつくり、それを描いていたらしい。絵を描くために造型してるのか、造型したついでに絵を描いてるのかよくわからないが、そんなことどうでもいいような気がしてくるほど「作品力」を感じる。

2014/02/14(金)(村田真)