artscapeレビュー

吉本新喜劇×ヤノベケンジ

2014年03月01日号

会期:2014/02/14~2014/02/16

よしもと祇園花月[京都府]

美術家のヤノベケンジが吉本新喜劇とがっぷり四つに組んだ、きわめてレアな、そして関西的な特別公演。物語の舞台は、大阪万博目前の1970年の大阪と、2度目の東京オリンピックを控えた2020年の東京。原子力エネルギーへの言及(架空の「ニュー・クリア・エナジー」に置き換えられた)や、アトムスーツを着用した池乃めだか(似合いすぎ!)が活躍するなど、ヤノベ色の強い世界観を背景にしながらも、全体的なテイストは吉本新喜劇そのものだった。ヤノベのメッセージが果たしてどこまで伝わったのか不明だが、分の悪い勝負を引き受けた彼の勇気は称賛に値する。あえて苦言を呈すると、中盤あたりで場面転換が相次ぎ、少々中だるみが感じられた。上演時間約2時間半(途中休憩含む)の長尺だったが、もう少しコンパクトにまとめられたのではなかろうか。また、アートファンとしては、もっと過激にヤノベ色を打ち出してほしかったという気持ちもある。ただ、水と油のようなアートとお笑いを融合させる試み自体は画期的であり、その目撃者になれたことを幸運に思う。

2014/02/15(土)(小吹隆文)

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