artscapeレビュー
森山大道「終わらない旅 北/南」
2014年02月15日号
会期:2014/01/23~2014/03/23
沖縄県那覇市の沖縄県立博物館・美術館で開催された森山大道展は、まず総出品点数922点という数に度肝を抜かれた。もっとも、そのうち400点あまりは2002年刊行の写真集『新宿』(月曜社)の印刷原稿のプリントで、それらは4期に分けて展示された。それでも600点以上の作品が常時展示されるというのは、これまで開催された森山の写真展では最大規模だ。2012~13年のテート・モダン(イギリス・ロンドン)でもウィリアム・クラインとの二人展に見るように、彼の写真の影響力は海外にも広く浸透しつつある。その自信が隅々にまでみなぎった展示と言えるだろう。
展示は「起点」「犬の記憶」「破壊と創造」「光を求めて」「終わらない旅」の5部構成。名作がずらりと並ぶ前半部分も圧巻だが、今回の見所は最終章の「終わりのない旅」である。このパートは、展覧会のタイトルが示すように「北/南」、すなわち北海道と沖縄の写真で構成されている。北海道は写真表現の極限まで突き進んだ『写真よさようなら』(写真評論社、1972)刊行後の虚脱感を埋め合わせようと道内を彷徨して撮影した写真群、沖縄は1974年に「ワークショップ写真学校」のイベントのため東松照明、荒木経惟らと初めて沖縄を訪れた時に撮影した路上スナップが展示されている。それに加えて、どちらも最近撮影されたデジタル・カラー作品も並置してあった。つまり、「北/南」「モのクローム/カラー」という対立軸を設定することで、森山の作品世界を立体的に浮かび上がらせようというもくろみで、それはとてもうまくいっているのではないだろうか。森山大道の現在を見通すには、必見の展覧会と言えそうだ。
2014/01/30(木)(飯沢耕太郎)