artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
丹野志摩 写真展「やさしい風」
会期:2013/09/04~2013/09/29
Window Gallery Oct[京都府]
昨年、島根県隠岐郡西ノ島町で開催された「隠岐しおさい芸術祭」の際に出会った西ノ島在住のフォトグラファー丹野志摩さんの写真展が京都で開催されていて足を運んだ。約20年前、撮影旅行で訪れた西ノ島の雄大な景色に魅了され、その半年後には移住したという丹野さんの作品を実際に見るのは今回初めて。展示されていたのは空の色を反映して移り変わる海の表情を撮影した作品群。タイトルにも写真にも西ノ島という土地の生活や自然を慈しむ眼差しがそのまま表われていた。それにしても、人生を変えてしまう体験をした丹野さん自身に興味がある。いつか話を聞いてみたいものだ。
2013/09/19(木)(酒井千穂)
村上愛 展
会期:2013/09/17~2013/09/22
GALLERY はねうさぎ[京都府]
ぐにょぐにょとした有機的な形態が結合・連鎖し、ひとつの物体を形づくっている。村上愛の陶オブジェだ。彼女は事前にプランを練ることなく、土をひねるうちに見えてきた形をひたすら追い求めている。ディテールを観察すると、そこには植物、鳥、菌類、四足の獣、正体不明の生物らしきものが見える。多様な生命が息づく個にして全の世界。それはまるで森や珊瑚礁のようではないか。そしてもうひとつ忘れてはならないのが、連続する曲線と不安定な形態を支える構造の確かさと焼成技術、そして全体を破綻なく(いや、破たんの連続と言うべきか)まとめ上げる構成力の高さだ。本展では3点が出品されたが、もっと多くの作品で床と壁面が埋め尽くされる様子を見てみたい。それこそ森の中や珊瑚礁の海に包まれるような感覚が得られるのではなかろうか。
2013/09/17(火)(小吹隆文)
「T」大崎のぶゆき
会期:2013/09/17~2013/09/28
galerie 16[京都府]
水溶性の紙にペイントし、水の中に浸してイメージが溶解・崩落する様を撮影した映像作品や、壁紙の模様が溶け落ちる映像作品で知られる大崎のぶゆき。昨年に大阪で開催した個展では自分自身を題材にして「記憶」という要素を加味したが、本展ではその発展形とも言うべき新作が展示された。それは、友人Tに子ども時代の記憶を取材し、大崎自身がTの記憶をトレースするというものだ。具体的には、取材で聞き出した場所に実際に出かける、インターネットで情報を収集するなどの行為を行なったが、その過程で浮き彫りになったのは、Tの記憶が極めて曖昧なことだった。つまり人間の記憶はリアルとフィクションがミックスされているのである。作品は、Tから提供された記憶にまつわる写真、関連する物体、大崎の映像とスチール写真で構成されていた。リアルとも、フィクションとも、その両方とも言い難い作品世界を見ていると、はなはだ不安定な浮遊感に襲われる。しかし、その感覚は不快ではなく、むしろ甘美さを伴っているのだ。この両義的な感覚こそが本展の核心であろう。
2013/09/17(火)(小吹隆文)
カタログ&ブックス│2013年9月
展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。
ヴィクトリア時代の室内装飾 -女性たちのユートピア-
本書では、人々が室内で表現した「くつろぎ」のかたちを図版豊富に展開します。その実例として、現存するヴィクトリアン・ハウス、雑誌『パンチ』の風刺画家L.サンボーン邸の紹介をはじめ、女性たちが趣味と心地よさの表現舞台とした「ドローイングルーム(英国固有の女性主体の部屋)」を中心に、当時続々と出版された雑誌等の指南書からキーアイテムを掲載します。その他、装飾材の主要アイテムだったタイル、同時代に活躍したウイリアム・モリスの壁紙からも当時の装飾デザインの動きを追います。また、使用人など別の立場からみた室内を分析する論考も必読です。
一気にものが溢れた時代を反映した「ヴィクトリアン・コンフォート」の空間へと読者を誘います。当時の絵本からの抜粋版ミニ絵本付き。
[LIXIL出版サイトより]
かじこ──旅する場所の108日間の記録
岡山県岡山市にて古民家を活用した108日間(2010年7月16日〜10月31日)実施されたアートスペース「かじこ」の記録集。かじこの機能や活動が、「システム」「メディア」「エッセイ」の章に分けて収録されている。巻末には、かじこに訪れた参加者たちが、3年前を振り返って綴った日記を収録。
現代建築家コンセプト・シリーズ16 中村竜治 コントロールされた線とされない線
日常の些細なものから建築に至るまでに生じている、コントロールされたものとされないものせめぎあい。中村竜治は、ものや空間を根源的に成立させているこの2つの作用に向き合い、デザインするとはどういうことかを考える。そうした視点からつくられた30あまりの作品──小作品、インスタレーション、展覧会会場構成、商業空間、住宅──は、線を面に、面を立体に、弱さを強さに変え、構造と仕上げの境界を自由に横断する。それはときに可視と不可視の領域も行き来しながら、見る者の常識を揺さぶり、私たちの日常への繊細な感覚と喜びを呼び覚ます。バイリンガル。
[LIXIL出版サイトより]
2013/09/17(火)(artscape編集部)
プレビュー:ニュイ・ブランシュ KYOTO 2013「パリ白夜祭への架け橋──現代アートと過ごす夜」
会期:2013/10/05
京都国際マンガミュージアム[京都府]
パリ市が毎年10月に行なう一夜限りの現代アートの祭典「ニュイ・ブランシュ」(白夜祭)。パリの姉妹都市・京都でも市内各地の会場で無料アートイベントが開催される。3回目となる今年は、フランスとドイツの友好関係の基礎を築いたエリゼ条約締結50周年を記念してドイツのアーティストも多数参加。会場によっては深夜1時まで行なわれるプログラムもある。秋の夜長を多彩なアートで楽しむ夜、今年も期待。
おもな会場
2013/09/17(火)(酒井千穂)