artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度秋学期成果発表会

東北大学百周年記念館 川内萩ホール会議室[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインの外部講評会にて、Nadegata instant partyの中崎透のレクチャーを行う。解体予定の阿佐ヶ谷住宅での天井に吊られたバナナをとるための床上げ作業、あいちトリエンナーレ2013の長者町で設定された架空の撮影所「STUDIO TUBE」、プロジェクト・フクシマにおける大風呂敷のプロジェクトなど、口実をつくりながら、地域の住民を巻き込む、これまでの活動が紹介された。もともとは虚構だった口実が、本当に人々が関わり出すことで、現実の出来事にすり替わっていく瞬間が興味深い。

2014/02/23(日)(五十嵐太郎)

東宝スタジオ展 映画=創造の現場

会期:2015/02/21~2015/04/19

世田谷美術館[東京都]

世田谷美術館がある砧公園と小田急線成城学園前駅のあいだ、仙川沿いに立地する東宝砧撮影所、現・東宝スタジオの80年余にわたる歴史を、膨大な資料で読み解く展覧会。
 映画というテーマを、それも映画そのものではなく、撮影所という場とその歴史を、美術館でどのように見せるのか。展覧会の縦糸となっているのはもちろん時間。展示は1954年に公開された東宝映画を代表する二つの作品『ゴジラ』と『七人の侍』で始まり、東宝映画の前身のひとつである写真化学研究所(Photo Chemical Laboratory 、略称P.C.L.)によるスタジオの設立(1932)に時間を戻し、そこから戦中戦後を経て、日本映画の最盛期である1950年代60年代にフォーカスする。そして1971年に東宝スタジオと名前を改め、東宝映画専門の撮影所から貸スタジオになり、映像のデジタル化が進んだ現在の仕事までが紹介されている。
 緯糸は撮影所に関わった人とその仕事。とはいえ、その視線は監督や出演者ではなく、美術監督や衣装デザイナー、すなわち映画の裏舞台にいるクリエーターたちに向けられているところが本展の特徴であろう。映画監督も一部紹介されているが、資料は本人によるスケッチや絵コンテなどが中心。それらに加えて、日誌など撮影所の資料、映画ポスターや台本、パンフレット類が並ぶ。展示のあいだには関連する映画の予告編映像などがモニタで流されているほか、美術館の壁面をホリゾントに見立てて雲が浮かぶ青空が描かれている。これはゴジラシリーズにも関わってきた特撮映画の背景師、島倉二千六氏に描いてもらったものだという。東宝撮影所を語るうえで避けて通ることができない東宝争議についてもきちんと触れられている。山下菊二(東宝映画に務めていた)や、高山良策(その後のウルトラシリーズの怪獣造形で知られる)による封鎖中のスタジオのスケッチ、内田巌《歌声よ起これ(文化を守る人々)》など、絵画に描かれた争議の記録も興味深い。
 このほか撮影所が立地した場にも光が当てられている。東宝スタジオに関わった世田谷在住作家の作品は2階のコレクション展(「世田谷に住んだ東宝スタジオゆかりの作家たち」、2015/1/4~4/12)と併せて見たい。高峰秀子が寄贈した梅原龍三郎らによる自身の肖像画、東宝で映画美術監督を務め画家でもあった久保一雄の油彩、宮本三郎が描いた女優たち、一時期東宝映画に務めていた村山知義、難波田龍起らの作品が出品されている。
 資料が多く鑑賞にはかなりの時間を要する。ただし展覧会図録には美術監督や衣装デザイナー、映画監督ら18人の一部の作品が収録されているのみなのが残念である。また「企業と美術」というテーマで世田谷美術館で開催されてきたこれまでの企画展のひとつとして本展を見るならば、もう少し撮影所の経営面についても触れて欲しかったと思う。映画はクリエーターたちが生み出す芸術作品であると同時に、映画会社にとっては商品である。制作の現場である撮影所が主題であっても、生み出される作品、映画作りのシステムの変遷を理解するうえでそれぞれの時代における経営面での課題を知ることは欠かせないと思うのだ★1。[新川徳彦]

★1──この側面について、東宝争議を経営と芸術という二つの側面から分析した井上雅雄の『文化と闘争──東宝争議1946-1948』(新曜社、2007)は、本展と併せて読むべき文献であろう。


美術館のエントランスではゴジラが出迎えてくれる ©TOHO CO., LTD.


展示風景

2014/02/20(金)(SYNK)

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熱情と冷静のアヴァンギャルド

会期:2014/01/17~2014/03/05

dddギャラリー[大阪府]

ロシア・アヴァンギャルド、デ・ステイル、バウハウスといった1920~30年代のアヴァンギャルディストから、50~60年代に影響力をもったスイス派やオランダのグラフィック作品まで約50点が揃う、小規模ながらたいへん充実した展覧会。ポスターのみならず機関誌・カタログ等が展示され、20世紀モダンデザインの潮流・展開、芸術家同士の相互交流について理解できるように配慮されている。前述のビック・ネームから、珍しいところではチェコ・アヴァンギャルドの諸作品も見ることができる。社会的ユートピアを追求する戦前のモダニストたちの熱い息吹を感じさせるものから、戦後における理知的・論理的に構成されたグラフィック作品群、そしてユーモア溢れる表現まで、十分にその世界を堪能できる。大阪新美術館建設準備室のデザイン・コレクションの質の高さにも目を瞠らされる。と同時に、同ギャラリーの外装や展示のデザイン、素敵に工夫されたデザインの変形リーフレットにも注目。[竹内有子]

2014/02/20(木)(SYNK)

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7つの海と手しごと《第4の海》──ギニア湾とヨルバ族のアディレ

会期:2014/01/25~2014/02/23

世田谷文化生活情報センター「生活工房」[東京都]

「7つの海と手しごと」と題したシリーズ。4回目の今回は、ナイジェリアのギニア湾沿岸に暮らすヨルバ族がつくる藍染めの布「アディレ(adire)」と、その制作を行なう人々の暮らしが紹介されている。この藍染めの技法には、布を糸で括って染める絞り染め「アディレ・オニコ」、ミシンのステッチで縫い絞る「アディレ・アラベレ」、防染糊をへらで布に置いて文様を描いて染める「アディレ・エレコ」がある。技術は母から娘へと受け継がれ、つくられた布は婚礼の持参品とされたり、女性のラップドレスや肩掛け布として売られる。
その技法の歴史的展開はとても興味深い。「アディレ」はもともと絞り染めを指す言葉であったが、19世紀にヨーロッパから安価で目の細かい布が大量に入ってきたことで、1900年頃から糊防染による「アディレ・エレコ」が行なわれるようになり、より細かく自由度の高い文様が染められるようになったという。ギニア湾沿岸はかつて奴隷貿易で栄えた地域であり、古くからヨーロッパとの経済的な交流が盛んであった。防染糊に用いられるキャッサバ芋も、ヨーロッパ人がアメリカ大陸からアフリカに食料としてもたらしたものである。「アディレ・アラベレ」に用いられるミシンも、欧米の製品だ。アフリカが海を通じてヨーロッパやアメリカとつながったことが「アディレ」の歴史をつくり、ヨルバ族の女性たちはその時々の新しい素材、新しい技術によって、伝統を守りつつ、ものづくりを発展させていったのだ。
とはいえ、手仕事を中心としたアディレの生産は衰退しつつあるという。教育水準や所得の向上、生活様式の変化が、賃金も生産性も低い伝統的な生産方法を衰退させ、製品は合成染料を用いたプリントによる安価な量産品へとシフトしているのだ。その一方で、伝統的な製法によるアディレを高く評価する動きもあるというが、十分な市場を見出すことができるかどうか、注目したい。[新川徳彦]

2014/02/18(火)(SYNK)

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せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度秋学期学内講評会

東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎プロジェクト室1・2、ギャラリートンチク[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインの学内発表会を行う。筆者が担当するメディア軸は、『S-meme』7号を制作した。今回の前衛的な装幀は、全ページがリング状につながり、その表裏に印刷されたリバーシブルである。したがって、本が広がり、その中をくぐったり、数人で回転寿司のように読むことができる。本が空間を獲得し、オブジェのような形態にも変わる。7号のテーマは、「仙台文学・映画の想像力」だ。メイン講師の文芸批評家・編集者の仲俣暁生と、荒蝦夷の編集者・土方正志のレクチャーを収録しつつ、震災後文学の書評を数多く掲載し(黒川創、古川日出男、川上弘美、佐伯一麦2冊、高橋源一郎、三浦明博、伊坂幸太郎、いとうせいこう2冊、瀬名秀明、橋本治、玄侑宗久、熊谷達也、絲山秋子など)、受講生の議論によって、S-meme震災後文学賞を決定した。その結果、選ばれたのは、玄侑の『光の山』である。また全員で仙台文学館を訪れ、こう改良したらいいという提案20を練って、担当の学芸室長とトークを行った内容や、ここの資料を活用した宮城の文芸誌の装幀史も含む。ほかに文学系では、西村京太郎と伊坂幸太郎の仙台を描いた小説の比較、文学に描かれた仙台のX橋論など。映像サイドでは、せんだいメディアテークの小川直人のレクチャー、仙台を描いたアニメ『Wake Up, Girls!』論。またオーストラリアのクイーンズランド大学とのワークショップで、映画化された伊坂の『ゴールデンスランバー』をブリスベンでロケハンする作業を通じて、二都市の比較を行った。

2014/02/14(金)(五十嵐太郎)