2021年12月01日号
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artscapeレビュー

7つの海と手しごと《第4の海》──ギニア湾とヨルバ族のアディレ

2014年03月01日号

会期:2014/01/25~2014/02/23

世田谷文化生活情報センター「生活工房」[東京都]

「7つの海と手しごと」と題したシリーズ。4回目の今回は、ナイジェリアのギニア湾沿岸に暮らすヨルバ族がつくる藍染めの布「アディレ(adire)」と、その制作を行なう人々の暮らしが紹介されている。この藍染めの技法には、布を糸で括って染める絞り染め「アディレ・オニコ」、ミシンのステッチで縫い絞る「アディレ・アラベレ」、防染糊をへらで布に置いて文様を描いて染める「アディレ・エレコ」がある。技術は母から娘へと受け継がれ、つくられた布は婚礼の持参品とされたり、女性のラップドレスや肩掛け布として売られる。
その技法の歴史的展開はとても興味深い。「アディレ」はもともと絞り染めを指す言葉であったが、19世紀にヨーロッパから安価で目の細かい布が大量に入ってきたことで、1900年頃から糊防染による「アディレ・エレコ」が行なわれるようになり、より細かく自由度の高い文様が染められるようになったという。ギニア湾沿岸はかつて奴隷貿易で栄えた地域であり、古くからヨーロッパとの経済的な交流が盛んであった。防染糊に用いられるキャッサバ芋も、ヨーロッパ人がアメリカ大陸からアフリカに食料としてもたらしたものである。「アディレ・アラベレ」に用いられるミシンも、欧米の製品だ。アフリカが海を通じてヨーロッパやアメリカとつながったことが「アディレ」の歴史をつくり、ヨルバ族の女性たちはその時々の新しい素材、新しい技術によって、伝統を守りつつ、ものづくりを発展させていったのだ。
とはいえ、手仕事を中心としたアディレの生産は衰退しつつあるという。教育水準や所得の向上、生活様式の変化が、賃金も生産性も低い伝統的な生産方法を衰退させ、製品は合成染料を用いたプリントによる安価な量産品へとシフトしているのだ。その一方で、伝統的な製法によるアディレを高く評価する動きもあるというが、十分な市場を見出すことができるかどうか、注目したい。[新川徳彦]

2014/02/18(火)(SYNK)

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