artscapeレビュー

せんだいスクール・オブ・デザイン 2013年度秋学期学内講評会

2014年03月15日号

東北大学片平キャンパス都市建築学専攻仮設校舎プロジェクト室1・2、ギャラリートンチク[宮城県]

せんだいスクール・オブ・デザインの学内発表会を行う。筆者が担当するメディア軸は、『S-meme』7号を制作した。今回の前衛的な装幀は、全ページがリング状につながり、その表裏に印刷されたリバーシブルである。したがって、本が広がり、その中をくぐったり、数人で回転寿司のように読むことができる。本が空間を獲得し、オブジェのような形態にも変わる。7号のテーマは、「仙台文学・映画の想像力」だ。メイン講師の文芸批評家・編集者の仲俣暁生と、荒蝦夷の編集者・土方正志のレクチャーを収録しつつ、震災後文学の書評を数多く掲載し(黒川創、古川日出男、川上弘美、佐伯一麦2冊、高橋源一郎、三浦明博、伊坂幸太郎、いとうせいこう2冊、瀬名秀明、橋本治、玄侑宗久、熊谷達也、絲山秋子など)、受講生の議論によって、S-meme震災後文学賞を決定した。その結果、選ばれたのは、玄侑の『光の山』である。また全員で仙台文学館を訪れ、こう改良したらいいという提案20を練って、担当の学芸室長とトークを行った内容や、ここの資料を活用した宮城の文芸誌の装幀史も含む。ほかに文学系では、西村京太郎と伊坂幸太郎の仙台を描いた小説の比較、文学に描かれた仙台のX橋論など。映像サイドでは、せんだいメディアテークの小川直人のレクチャー、仙台を描いたアニメ『Wake Up, Girls!』論。またオーストラリアのクイーンズランド大学とのワークショップで、映画化された伊坂の『ゴールデンスランバー』をブリスベンでロケハンする作業を通じて、二都市の比較を行った。

2014/02/14(金)(五十嵐太郎)

2014年03月15日号の
artscapeレビュー