artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
アルスエレクトロニカ「Poetry of Motion」展
会期:2011/12/10~2011/12/18
ブリーゼブリーゼ 1Fメディアコート[大阪府]
オーストリア、リンツ市に本拠を置くアルスエレクトロニカは、1979年、メディア・アートのフェスティバルとして始まった。87年以来「アルス・エレクトロニカ賞」を表彰──今年度の日本からの受賞者には大阪大学の平田オリザ氏・石黒浩氏らがいる──、96年からは「最先端テクノロジーとアート、社会との融合から見える未来のための体験型アートセンター」であるアルスエレクトロニカ・センターと研究所「フューチャーラボ」を運営している。本展示イベントは、私たちがいま・ここにいる世界の、「動きの詩」を体感しようというコンセプトのもとに行なわれた。ウルスラ・ノイゲバウアーによる《Tour en l'air》は、左の写真にあるとおり、床まである長いドレスがそれぞれ時間をおいて高速回転する。そのほか、補聴器で拾われた自分の鼓動を体感できる《Heartbeat Picnic》や、カメラがとらえた場内の観客をスクリーン上の物語的世界に取り込む《Innocence》、来場者の「影」をシールにする《Shadowgram》など、最新技術・機器を用いたインタラクティブな参加型アート/デザイン作品ばかり。ただ、今回の展示会場は小規模すぎて、メディア・アートにおける社会的機能・発信力を重視する、アルスエレクトロニカの本領を十分に伝えきれなかったのが残念。ミュージアムという場での本格的な紹介の機会を待ちたい。[竹内有子]
2011/12/16(金)(SYNK)
南相馬市プロジェクト「塔と壁画のある仮設集会所」塔の完成
会期:2011/12/12~2011/12/13
南相馬市[福島県]
塔の建設を見届けるべく、南相馬市の仮設住宅地を訪れた。11月に建設資材は運び込み、基礎のコンクリートと中央の支柱はすでに完成していたので、この日はクレーンで三角形の木のフレームを持ち上げ、積んでいく作業が始まった。鮮やかに着彩されたユニット群が垂直に立ち上がっていく。彦坂尚嘉が和歌の形式にならって、5、7、5、7、7のパターンで色を塗り分けているが、高くなるにつれて、色の組み合わせ効果も見えてきた。機能をもたない純粋な塔は、幾何学的な抽象彫刻である。集会所の内部を見ると、さまざまな飾り付けが増えていた。天井から吊り下げられた折り紙群、カラオケ大会の記念写真、標語などである。三角形のユニットは、微妙にズレながら、回転しつつ空に向かう。近隣の仮設住宅地の人たちからも、ここに何ができるか、大きな関心をもたれているようだった。全部で90段を積み、8mの高さに到達する予定だったが、日が暮れるのが早く、初日は全体の1/3程度で切り上げ、翌日に完成した。そして後日、これを「復活の塔」と命名する。また12月23日には、NHK BSの番組「地球テレビ:エル・ムンド クリスマス・スペシャル」において現場から中継された。
2011/12/12(月)(五十嵐太郎)
「京の小袖──デザインにみる日本のエレガンス」展
会期:2011/10/29~2011/12/11
京都文化博物館[京都府]
「小袖」とは、現在の着物の原型。「小さい袖の衣服」を意味し、もうひとつには、袖口が小さいという「形状」を表わす。平安時代の上流階級の人々は、十二単の下に下着として、袖口が縫い詰められた小袖を着用したのだという。室町以降、小袖は「表着」として着られるようになる。本展は、桃山時代から江戸時代後期までの小袖を、松坂屋・丸紅・千總(ちそう)のコレクションを中心に展観したもの。前期・後期合わせて約180点の小袖が展示され、時代ごとのデザインの変遷を見ることができる。小袖の魅力のひとつは、文芸を題材に取るところにある。江戸時代の図案帳である「雛形本」を見れば、その流行ぶりがよくわかる。たとえば、一枚の着物のなかにある、春・御所車・鳥籠・飛ぶ一羽の雀という文様には、「源氏物語」のエピソードが表象されている。「物語」を身に纏い、愛でるとは、なんと優雅かつ粋なのであろうか。ジャポニスムが席巻した19世紀、そのような日本人の感性の発露としての染織品の意匠が、西洋の目利きから「ポエティック」と賞賛されたのも頷ける。日本の文様のうつくしさに圧倒され、さらに当時の人々にとってのファッションとしての小袖のありように感嘆した。[竹内有子]
2011/12/09(金)(SYNK)
南相馬市プロジェクト「塔と壁画のある仮設集会所」ワークショップ
会期:2011/11/27~2011/11/28
南相馬市[福島県]
南相馬市の仮設住宅地にて、ワークショップとゼミ合宿を行なった。彦坂尚嘉による巨大壁画のある集会所の基本設計を、東北大の五十嵐研が担当したが、引き続き、学生らが大工の協力を得て、ベンチを制作した。2つのタイプがあり、ひとつは「南相馬市民のうた」のサビの楽譜を取り込んだもの、もうひとつは6個で1ユニットとなり、台形のピースをつなぐと、六角形になるタイプである。また塔を建てるプロジェクトも動きだし、その部材の運び込みと塗装を行なった。12月中に塔も完成する予定である。
2011/11/28(月)(五十嵐太郎)
土木デザイン設計競技「景観開花。8」公開最終審査会
会期:2011/11/26
街路をテーマにした「景観開花。」の公開最終審査会が行なわれた。一次審査のときからこれが一位になるのかなと思っていた松本亜味らの「ほねまち─津波に強い平野のまち─」がやはり最優秀賞だった。魚の骨型に土を盛って、仙台の平野部に緊急時の避難路を設けるというもの。2位はすり鉢の細やかな地形を重視した早稲田チームである。敢闘賞には、林匡宏の神話的な渋谷川の方舟の提案が選ばれた。今回、最後は無理がない自然体のプロジェクトに投票した。
2011/11/26(土)(五十嵐太郎)