artscapeレビュー
デザインに関するレビュー/プレビュー
プレビュー:京都市美術館コレクション展 第2期 模様をめぐって
会期:2012/01/27~2012/03/25
京都市美術館[京都府]
京都市美術館のコレクションを特定のテーマのもとに紹介する展覧会。今回のテーマは近現代の工芸における模様の展開を辿るものだ。言うまでもなく模様は、美術と工芸・デザインの差異を象徴するものにほかならず、それゆえ20世紀初頭の建築家アドルフ・ロースを筆頭とする装飾否定論の普及とともに、近代デザインから真っ先に排除された要素でもある。しかし、近年の工芸・デザインでは模様の復権の動きが明らかであり、その波はアートの世界にも及んでいる。西洋由来のアートの概念が日本に渡来した時期以降の工芸まで遡って、工芸における模様の位置づけの変遷を振り返る本展は、その意味で21世紀の視点から模様の意味をあらためて問い直す格好の機会になるだろう。伊藤翠壷、富本憲吉等、多数の巨匠作家の工芸作品を通じて、主題の意匠化、配置の仕方、技法等の観点から模様の歴史が描き出される。[橋本啓子]
2012/01/31(火)(SYNK)
現代美術展 in とよはし
会期:2012/01/17~2012/02/19
豊橋駅南口駅前広場、名豊ギャラリー、名豊ビル5階イベントホール、ギャラリー48、豊橋市公会堂前広場、豊橋公園、豊橋市美術博物館、愛知大学大学記念館、豊橋丸栄9階イベントスペース、こども未来館[愛知県]
続いて豊橋に移動し、「現代美術展 in とよはし」を見る。駅前や百貨店から公園、美術館、大学まで、街なかの各地にアートを展開していた。正直、微妙な作品も混ざっており、ばらつきがないわけではない。もっとも、公園の石を一列に並べ変えた味岡新太郎、図鑑の絵を切り抜く渡辺英司、音の出る木の彫刻でワンフロアをうめつくした石川理、不思議な学習日記×アメコミヒーローの杉山健司&浅田泰子など、バリーションに富む作品は、豊橋の街歩きとともに楽しめた。
写真=味岡新太郎(中)、渡辺英司(下)
2012/01/30(月)(五十嵐太郎)
New Creators Competition2012 展覧会企画公募 EXHIBITIONS
会期:2012/01/16~2012/02/18
静岡クリエーター支援センター 2Fギャラリー・3F[静岡県]
企画公募の審査を担当した静岡CCCの展覧会を見る。高野友美は雨を素材に用いて作品をつくり、音と映像によるインスタレーションを行なう。建築家の谷川寛は、計ることをテーマに、教室にさまざまなタイプの装置をおく。とりわけ川の分岐点をフィールドワークしたプロジェクトは労作である。そしてオフ・ニブロールの高橋啓祐は、暗闇の中で緊張感のある音と映像が絡む、小さな家型/巣箱が並ぶ空間を出現させていた。多くを語らないが、震災を含めて、多くのことを想像させる。新人とは言えないので、充分に巧い作品になるとは思っていたが、それ以上に圧倒的なクオリティだった。
写真=高橋啓祐《ウラヤマの鳥》
2012/01/30(月)(五十嵐太郎)
approach200 1964-2012
会期:2012/12/03~2013/01/31
ギャラリーA4[東京都]
1964年、東京オリンピックの年に発刊された竹中工務店の企業PR誌『approach』(季刊)は、2012年12月に200号を迎えた。アートディレクションは田中一光、写真家には石元泰博、編集には瀬底恒。編集やデザインを通じた人と人とのネットワークの形成。そして充実した執筆陣。そしてなによりも約50年にわたって継続して刊行されてきた事実は、他の企業誌の追随するところではない。毎号のテーマは自社の仕事の紹介にとどまらず、建築を取りまく社会環境や歴史、人物など、多岐にわたっている。展覧会ではこれまでに取り上げられてきた内容を「Design & Art」「Nature & Environment」「Life & Education」「History & Heritage」「For the future」「People」の六つに分類し、紹介している。会場は、図書室のようなしつらえ。中央には閲覧用の大きな机があり、その周りに杉板製の本棚が配置されている。本棚には、六つのテーマで分けられた『approach』と、テーマに関連する建築、デザイン、文化、社会、民俗、文学等々の書籍が多数収められており、すべて手にとって読める。コーヒーも販売されていて、ゆっくり過ごせる。『appproach』のコンセプトを物理的な空間に展開するならかくあるべし、ともいうべきすばらしい会場構成であった。[新川徳彦]
2012/01/28(月)(SYNK)
北川貴好「フロアランドスケープ──開き、つないで、閉じていく」
会期:2012/01/14~2012/02/05
アサヒ・アートスクエア[東京都]
あいちトリエンナーレ2010や横浜トリエンナーレ2011に出品した北川も、武蔵野美術大学の建築出身のアーティストである。穴、水、植物を使った、これまでの集大成的な作品だった。ただし、屋外だとラディカルな手法が、室内だと少し違う意味をもつように思えた。個人的には、2フロアを展示に使ったことで、おそらくバックヤードで普段は見られない階段を体験することができたのがよかった。それにしても、しばらく訪れていなかったが、スタルクのスーパードライホールは強力な存在感を放つ。背後に見える東京スカイツリーのように一番高くなくても、純粋にかたちと色だけで、一度見たら忘れられないインパクトをもっている。ここまできたら、バブル期の遺産として長く残って欲しい。しばらく、日本はこういうデザインをつくらなそうだし。
2012/01/27(金)(五十嵐太郎)