artscapeレビュー
映像に関するレビュー/プレビュー
Palla/河原和彦 作品展「イコノグラフィー3 CLOUD/CROWD(クラウド)」
会期:2011/10/05~2011/10/31
Gallery Kai[大阪府]
建物や風景の画像を、向きを変えたり反転させるなどして何重にも重ね合わせ、未知の光景をつくり上げるPalla/河原和彦。新作では、大阪の地下街を行き交う群衆の足元を撮影した動画を用いて、映像と平面作品を発表した。彼が動画作品を発表したのは今回が初めて。動画特有の「時間」という新たな軸が加わったことで、新作にはこれまでにない独特の奥行き感が生じていた。3Dで撮影すれば一層不思議な世界が作れるかもしれない。新たなフロンティアを見つけ出した彼の、今後の展開に注目したい。
2011/10/08(土)(小吹隆文)
高嶺格/ジャパン・シンドローム~step.1 球の裏側
会期:2011/09/23~2011/10/16
京都芸術センター[京都府]
「KYOTO EXPERIMENT 2011 京都国際舞台芸術祭」のプログラムとして開催された展覧会。本展は、今後約3年にわたり継続されるプロジェクトの第1回にあたる。南ギャラリーでは、ブラジルで取材した映像とスラム発祥の音楽が流れ、観客が手をかざすと変化するインタラクティブなインスタレーションが展示された。北ギャラリーでは、南ギャラリーでの観客の振る舞いを覗き見する、少々意地悪な視点の作品が。これは、日本人のブラジルに対する関心や南北問題を皮肉った表現なのだろうか? また、南ギャラリー近くの階段横では、食品の放射能汚染について語る商店主と客の会話を再現したビデオ作品《ジャパン・シンドローム~関西編》も。本作は当初の予定にはなかった作品かもしれないが、時宜を得たテーマだったので、むしろ南北ギャラリーの作品以上に印象的だった。
2011/09/23(金)(小吹隆文)
NARA映像コテンパンダン展2011 in ならまち
会期:2011/09/17~2011/09/19
OKビル2Fコミュニティルーム、正木邸(奈良女子大セミナーハウス)、ならまち格子の家、奈良町振興館、カイナラタクシー綿町ビル、sample、藝育カフェSankaku、Gallery OUT of PLACE、他[奈良県]
伝統的な街並みが残る奈良市の奈良町界隈。同地の文化施設、画廊、空きテナント、飲食店などを会場に、映像作品ばかりを集めたアートイベントが催された。主催者は、昨年「奈良アートプロム(NAP)」を企画した面々。このイベントも、昨年とは内容が異なるものの、NAPの2011年バージョンと理解すべきであろう。昨年のNAPでは、エリアが広過ぎたのと、作品の品質にばらつきが見られるという弱点があったが、今回は各会場が比較的密集していたので移動しやすく、作品も秀作が多かった。よい意味でこちらの期待を裏切る充実したアートイベントだった(ちなみに私が気になった作家は、土屋貴史、林勇気、稲垣智子、大歳芽里、竹内邦昌である)。前回の課題を克服した主催者たちが、次回のNAPでどれほどのものを見せてくれるのか、早くも期待を抱いてしまった。
2011/09/18(日)(小吹隆文)
MAMプロジェクト015「ツァン・キンワー」
会期:2011/09/17~2012/01/15
森美術館[東京都]
暗い壁の下のほうから生と死をめぐるセンテンスが少しずつ上昇し、ピンボケになって消えていく。徐々にセンテンスが増えて壁が明るくなり、やがて文字がバラけて花びらのように(言の葉のように、というべきか)舞う。ここらへんは感動的。最後は文字が大きくなってフェイドアウトしていくという映像インスタレーション。日本語と英語の2ヴァージョンあるが、いずれも言葉の意味より視覚効果が勝っている。
2011/09/16(金)(村田真)
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2011
会期:2011/09/17~2011/11/23
六甲ガーデンテラス、六甲山カンツリーハウス、六甲高山植物園、オルゴールミュージアム ホール・オブ・ホールズ六甲、六甲ケーブル、六甲ヒルトップギャラリー、六甲山ホテル、オテル・ド・摩耶(サテライト会場)[兵庫県]
阪神間の身近なレジャースポットであり、都市に隣接する貴重な自然空間でもある六甲山。その山上に点在するレジャー施設などを会場に、昨年に引き続きアートイベントが開催された。山上を散歩しながらアートを体験し、同時に六甲山の豊かな自然に気付いてもらうというコンセプトは秀逸で、今年も植物園内を移動している最中に、「やっぱり、ここはいい所だなー」とつぶやいてしまった。ただ、昨年に比べると作家・作品数が絞られており、六甲ガーデンテラスと六甲カンツリーハウスの展示がやや寂しかったのも事実。そこを観客がどう判断するかが、今回の評価の分かれ目となるだろう。
2011/09/16(金)(小吹隆文)