artscapeレビュー
その他のジャンルに関するレビュー/プレビュー
「毒毒毒毒毒毒毒毒毒」展(もうどく展)in みなとみらい
会期:2015/03/21~2015/05/17
マークイズみなとみらい 5F特設会場[神奈川県]
マークイズにて、「毒毒毒毒毒毒毒毒毒」展(もうどく展)を見る。毒性のある生物、昆虫、植物を紹介する企画だ。派手な色彩で華やかな造形と、強烈な毒という組み合わせが凄まじい。驚くべき生物が存在することを思い知らされる。例えば、岩に擬態し、じっと動かず、補食の機会をうかがう魚は、水槽を凝視しても、やはり岩に見える。また実は毒をもっていないのに、毒性のある別の魚に擬態することによって、身を守る魚もいた。
2015/05/02(土)(五十嵐太郎)
國府理の仕事と仲間たち
会期:2015/05/01~2015/05/30
ARTCOURT Gallery[大阪府]
昨年4月に急逝した國府理を偲んで、彼の作品15点と、彼と交流のあった仲間たちの出品物65点(作品37組、文章28名)から成る展覧会が開催された。筆者と國府の出会いは、彼が1994年に発表した《電動三輪自動車》にさかのぼる。その後も機会があるごとに作品を見てきたが、このように改めて彼の仕事を振り返る機会を得ると、やはり感慨を禁じ得ない。國府の作品は、前述した《電動三輪自動車》の他、《ROBO Whale》、《Sailing Bike》、《Parabolic Garden》などが展示された。それに花を添えたのが、仲間たちの65点である。國府理というアーティストが、どれだけ多くの人に愛され、影響を与えたかがよく分かる。今後は同輩や後輩のアーティストが、彼のスピリットを継承してくれるであろう。
2015/05/01(金)(小吹隆文)
ボイジャー・オブ・ザ・シーズ
ボイジャー・オブ・ザ・シーズに乗船し、博多、済州島、名古屋をまわった。一週間なので、これまででもっとも長い船旅である。全長310m、全幅48m、全高63mのヴォリュームなので、高層ビルよりもデカい。巨大な客船=動く建築を体験したが、ホテル+街並みを模したショッピングモール+シアター+飲食店+テーマパークなどが合体したような複合施設である。数千人が暮らし、随時あちこちでさまざまなイベントが開催されており、もはや海に浮かぶ小さな街という方が正しいかもしれない。
2015/04/26(日)(五十嵐太郎)
大ニセモノ博覧会 贋造と模倣の文化史
会期:2015/03/10~2015/05/06
国立歴史民俗博物館[千葉県]
人魚と言えば、古今東西の神話や童話に登場する、伝説上の生き物。上半身は人間だが、下半身は魚というイメージが定着しているが、幕末から明治にかけて、見世物小屋では人魚のミイラが興行されており、大いに人気を集めていた。現在、それは猿の上半身と鮭の下半身を切り合わせたものであることが、ほぼ実証されている。つまり人魚のミイラは明らかに偽物である。
本展は、偽物や贋作、模造品を集めた展覧会。雪舟や酒井抱一、池大雅らの贋作をはじめ、徳川家康の偽文書、偽金、鬼のミイラなど、およそ300点の資料が展示された。いずれも一見しただけでは本物との区別ができないほど精巧で、本物と比較するかたちで展示されていれば別だったが、素人目にはその真偽の判断は極めて難しい。筆の運びや賛、印章などを手がかりにしながら偽物の根拠を説く専門家による解説文があってはじめて納得できるというわけだ。
興味深いのは、その解説文が、偽物を解説するという目的だからだろうか、徹底的に辛口であること。「技法をまねるのに精一杯で、技量が追いついていない」、「琳派らしさを出そうとしていますが、新聞広告の通販で買えそうな程度のニセモノです」、「まったく絵心を感じません。とてもプロの絵とは思えません。これを池大雅の絵と言い張ることに、別の意味で敬服できる作品です」などと、まるで容赦がない。一般的に研究者は価値判断を下さず、客観的な立場を固守すると考えられがちだが、こと真偽の問題に限っては、批評的な視線と言語を動員せざるをえないことを、これらの解説文は如実に物語っていた。
とはいえ、おびただしい数の偽物を見ていくと、真偽の境界線が明確になっていく一方で、ますます曖昧になっていくように実感するのもまた事実である。なぜなら仮に偽物であることが科学的に実証されたとしても、偽物ならではの価値が失われない場合もあることに気づかされるからだ。かつて地域の名家は自宅で接待のための宴会を催す際、たとえ偽物であることが明らかだったとしても、名の通った美術品を床の間に飾り、見栄を張ることを余儀なくされていたという。また、江戸時代の庶民は人魚の骨を解毒剤として服用し、人魚を描いた刷り物を無病息災を願うお守りとして軒先に貼っていたという。つまり、これらは科学的には偽物かもしれないが、民俗的には本物として庶民の生活で必要とされていたのである。
本展で浮き彫りにされたのは、真偽をめぐる問題について、私たちの社会には科学的な基準とは異なる、もうひとつの基準が存在しているという事実である。それは、民俗的な基準なのかもしれないし、芸術的なそれなのかもしれない。いずれにせよ、その重層的なレイヤーこそが、社会的な現実を構成していることはまちがいない。芸術が真理を体現するものだとしたら、それは偽物のなかにこそあるのかもしれない。
2015/03/10(火)(福住廉)
創生劇場 Ophelia Glass 暗黒ハムレット
会期:2015/03/07
先斗町歌舞練場[京都府]
シェイクスピアの『ハムレット』を原作に、山本萌(金沢舞踏館主宰)が演出し、小林昌廣(IAMAS教授)が脚色を担当した舞台公演。日本舞踊、能、浪曲、新内、華道、コンテンポラリーダンスが共演し、現代と古典がクロスオーバーする摩訶不思議な舞台が実現した。会場の先斗町歌舞練場も演目にマッチしていたと思う。作品の内容は、原作を相当読み込んでいないと追いつけないほどアレンジされていたが、西洋の物語を通して日本の伝統芸能に触れる経験は非常に新鮮だった。特に浪曲の春野恵子と新内の新内枝幸太夫は素晴らしく、今後も機会があればぜひ拝聴したい。
2015/03/07(土)(小吹隆文)