2019年07月15日号
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artscapeレビュー

2011年11月01日号のレビュー/プレビュー

Palla/河原和彦 作品展「イコノグラフィー3 CLOUD/CROWD(クラウド)」

会期:2011/10/05~2011/10/31

Gallery Kai[大阪府]

建物や風景の画像を、向きを変えたり反転させるなどして何重にも重ね合わせ、未知の光景をつくり上げるPalla/河原和彦。新作では、大阪の地下街を行き交う群衆の足元を撮影した動画を用いて、映像と平面作品を発表した。彼が動画作品を発表したのは今回が初めて。動画特有の「時間」という新たな軸が加わったことで、新作にはこれまでにない独特の奥行き感が生じていた。3Dで撮影すれば一層不思議な世界が作れるかもしれない。新たなフロンティアを見つけ出した彼の、今後の展開に注目したい。

2011/10/08(土)(小吹隆文)

秋山ブク「コンポジション6番:梅香堂の備品による」

会期:2011/10/08~2011/11/13

梅香堂[大阪府]

身体ひとつで会場入りし、現場の備品のみを用いてオブジェやインスタレーションをつくり上げる秋山ブク。主に首都圏で活動する彼の作品を、本展で初めて見た。いかにも仮設的なものを予想していたのだが、2フロアぶち抜きの巨大オブジェをはじめ、まさかこれほど造形性の高い作品が見られるとは。そして会場の梅香堂に、これだけ大量の備品が収納されていたとは。いい意味で予想を裏切る痛快な展覧会だった。

2011/10/08(土)(小吹隆文)

佐川晃司 展 絵画意識

会期:2011/10/10~2011/10/22

2kw gallery、2kw58[大阪府]

アトリエから臨む風景をもとに、ミニマルな形態と味わい深いマチエールが同居した抽象絵画をつくり上げる佐川晃司。大阪では久々の機会となった本展でも、その世界は健在だった。そして本展をより味わい深くしたのが、2kw58での小粋な演出。小部屋のさらに奥まったスペースを茶室に見立て、畳敷きの空間に風炉先屏風に仕立てた作品や茶道具などを並べ、自ら点前も披露したのだ。畳に座り、茶をいただきながら眺める絵画は、格別の趣があった。

2011/10/10(月)(小吹隆文)

牛久保賢二 写真展

会期:2011/10/07~2011/10/17

gallery Main[京都府]

平安神宮で、鴨川で、甲子園球場で、お台場で、顔前に鏡をかざした女子高生たちの姿を撮影した写真作品がズラリ。どの作品も、鏡の反射で顔だけが見えない。とてもシンプルなのに、いや、シンプルだからこそ、最高に格好いい作品だ。この手の表現を前にあれこれ言うのは野暮というもの。ひたすら「カッコいい!」と連呼することで、作家へのリスペクトとしたい。

2011/10/11(火)(小吹隆文)

Chim↑Pom「SURVIVAL DANCE」

会期:2011/09/24~2011/10/15

無人島プロダクション[東京都]

Chim↑Pomが調子に乗っている。もとい、ノリに乗っているというべきか。かつての荒削りな魅力はどこへやら、今回の展示は個別の作品の完成度も、それらを構成する展示の仕方も、ともに優れていたから正直驚かされた。一発逆転ホームランをぶちかますわりに空振りも多かった打撃のスタイルから、確実に出塁できる打撃法へと進化したといってもいい。さまざまな映画の銃撃シーンを集めた映像を投影したスクリーンに向けてエリイがマシンガンをぶっ放す映像作品は、銃撃音の迫力もさることながら、会場に実弾を浴びて穴だらけになったスクリーンを掲げ、その上に映像をプロジェクションしていたため、暴力的なカタルシスと甘い狂気を効果的に倍増させていた。天井裏の空間でミラーボールの回転する照明とともに新旧の《スーパー☆ラット》を見せる映像インスタレーションにしても、来場者に梯子を登らせて天上の世界を垣間見させるやり方が、なんともうまい。作品の形式的な面でいえば、前者はクリスチャン・マークレーを、後者はオノ・ヨーコをそれぞれ彷彿させるが、いずれもChim↑Pomのほうが断然おもしろいことは明らかだ。映画的編集の妙を見せるのではなく、映画というフィクションそのものを撃ち抜く暴力的な想像力。それを映像によって表現しながらも、穴だらけの布切れ一枚によって現実と接続することで、映像という自律圏にも風穴を開けてみせたわけだ。ようするに、現代アートの文脈を確実に踏まえつつ、それを一歩前進させているのである。パズルのピース(一片)に見立てた会場の壁を一部崩落させ、ピース(平和)の瓦解を象徴的に表現したり、「原爆の火」で消費文化の記号を描くなど、他の作品もいちいち心憎い。現代アートの流儀をスマートに使いこなすようになったのかと思えば、その一方で稲岡求と水野俊紀の生身の肉体を使ったバカな作品もあり、自分たちの原点を決して忘れているわけではないこともしっかりアピールしている。このバカから出発して社会や政治、あるいは美術の文脈に到達する振幅こそ、Chim↑Pomの醍醐味であり、それがバカを隠したがる現代アートに満足できない私たちの心を鷲づかみにするのである。彼らに追いつき、拮抗し、やがて鮮やかに乗り越える新しいアーティストが待望される。

2011/10/12(水)(福住廉)

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