artscapeレビュー

「指を置く」展 佐藤雅彦+齋藤達也

2014年05月01日号

会期:2014/03/12~2014/04/26

dddギャラリー[大阪府]

私たちが展覧会に行って、グラフィック作品に「触れる」ことはほとんどない。本展は、グラフィックに指先を置いてみることから出発し、紙に表わされた内容と来館者の「指を置く」行為を通じて起こるインタラクションのありようを探求している。展覧会に来た人は、まず入口に設置された掲示とともに付されたウェットティッシュによって、手を拭くことを求められる。数々の作品には任意の点が示されており、そこに指示された五本の指のうちのある指を置くと、なんらかの力が作用して、図像がそれまでと違う解釈で認知されることになる。例えば、指定された点に指を置くと、二次元的表現ではないはずの異なる空間が創成されるように見える。置く行為によって、圧力がかかってバランスが変化したり、図像がよりリアルな表現に変容するように感じられたりする。身体の所作によって、メディア作品のなかに隠されていた、新しい表現が立ち現われるのである。こうした私たちの盲点を突くグラフィックの新しい表現は、佐藤氏の『任意の点P』(2003)、『差分』(2009)等の著書で実践されてきたもの。はっとさせられ、ううむと唸ってしまう展覧会である。[竹内有子]

2014/04/16(水)(SYNK)

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