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artscapeレビュー

ねこ・猫・ネコ

2014年05月01日号

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会期:2014/04/05~2014/05/18

松濤美術館[東京都]

犬と並んで人間にとってもっとも身近な動物である猫。身近であるがゆえに絵画にもさまざまに描かれ、彫刻のモチーフにもされてきた。とはいえ、一口に猫が主題と言っても、画家や彫刻家たちの視点、モチーフに用いた文脈は多様である。猫を主題としたこの展覧会では、人間と猫との関わり方から美術と猫との関係を見る。そもそも猫は約1万年前のエジプトにおいて穀物を鼠の害から守るために家畜化されたもの。エジプト新王国末期にはオス猫は太陽神ラーの象徴として、メス猫は女神バステトの象徴として崇拝の対象とされた。序章「猫の誕生」に展示されているエジプト末期王朝時代のブロンズの猫のうち頭部のみのものは、ミイラにされた猫の頭部に被せられたものという。日本でも猫は養蚕の守り神とされる例があるようであるが、絵画では人との関係において描かれることが多いようだ。ただし、猫は人につかず家につくといわれるように、むしろ孤高の存在の象徴として描かれることもある(第一章)。美人とともに描かれた猫は気まぐれ、不可思議な存在の象徴であろうか(第六章)。「猫と鼠」は猫が家畜化されたときからの永遠のテーマである(第五章)。中国における猫の画題はまた異なる意味を持つ。猫は長寿を意味する「耄(もう)」と音を同じくすることから、富貴を象徴する牡丹や、やはり長寿を意味する「耋(てつ)」と音を同じくする「蝶」とともに吉祥の画題として描かれてきたという(第四章、第七章)。そうした画題の意味を読みながら作品を鑑賞するのも良いけれども、そのようなことを意識せずに見ても、さまざまな猫の絵が集った、猫好きにはうれしい展覧会である。「トムとジェリー」や「ドラえもん」「ゴルゴ13」「猫カフェ」まで登場する図録の解説も楽しい。ところで国芳ら浮世絵の猫がいないのは、同じ渋谷区の専門館に遠慮したのであろうか。[新川徳彦]


展示風景 *美術館の許可を得て撮影

2014/04/16(水)(SYNK)

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