2018年10月15日号
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artscapeレビュー

ビアズリーと日本

2016年04月01日号

会期:2016/02/06~2016/03/27

滋賀県立近代美術館[滋賀県]

19世紀英国のイラストレーター、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)にまつわる展覧会。ビアズリーの名を広く世に知らしめたオスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』英訳版が出版されたのは1894年、彼が亡くなるほんの数年前のことであった。夭折の天才、その短い活動が残した影響は驚くほど大きい。本展はビアズリーを軸に日英の美術の影響関係を、およそ270点のイラスト、版画、装丁本で紹介する。国内四カ所を巡回する。
切り落とされた預言者ヨカナーンの首に、サロメが口づけする場面を描いた《お前の口に口づけしたよ、ヨカナーン》はあまりにも印象的な作品だ。1893年に英国の美術雑誌『ステューディオ』に掲載されたこのイラストが出版社の目に留まり、ビアズリーは英国版の挿画に採用されたという。『サロメ』の挿画は、後の1910年に日本でも創刊間もない雑誌『白樺』に柳宗悦の紹介とともに掲載されて注目を集める。本展でみる、『サロメ』の挿画のためのドローイングは、大胆に空いた白い面の紙とくっきりと塗り分けられた黒い面のインクの質感のコントラストが美しい。そして、流れるような線、震えるような点描、細部の執拗な描き込みが、彼の幻想的でエロティックな作風を決定づけたように思う。もともとビアズリーはバーン=ジョーンズに私淑したというが、ビアズリーの作風とウィリアム・モリスらラファエル前派の作風のもっとも大きな違いもこのエロティックさにあるといってもいいだろう。ビアズリーはこの絶対的な個性によって賞賛を浴び、同時に、季刊誌『イエロー・ブック』や季刊誌『サヴォイ』など物議を醸した雑誌を次々と手がけることになったように思う。オスカー・ワイルドはビアズリーの描く『サロメ』のイラストに否定的だったというが、世紀末の英国に現われたこの二人の奇才の出会いこそが、あのイラストを生み出したのではないだろうか。[平光睦子]

2016/03/17(火)(SYNK)

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